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Update on :2022.04.18

「ウィズ/ポストコロナ時代のダイバーシティ&インクルージョン」(前編)

齋藤保成さん/森慎吾さん/樋口淳さん
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社/ソニーグループ株式会社/武田薬品工業株式会社

コロナ禍、働き方にもさまざまな変化が。
これからの新しい働き方のなかで、
なぜダイバーシティ推進が重要か、人事部のみなさまに伺いました。
(2021年10月16日配信。動画はこちら

(藥師)これからもコロナの影響が続く中で、働き方もどんどん変わっていくと思います。その中でなぜDEI推進が大事なのかということを、社内で人事やDEI推進をリードされている皆さんにお話を伺っていきたいと思います。

(中島)このDEIという言葉、ダイバーシティ、多様性、インクルージョン、包摂に加えて、イクイティ、公平という観点も欠かせないということでダイバーシティ&インクルージョンだけではなくてイクイティも加えたDEIという言葉が使われる機会が増えてきました。
 本日は、ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)という表現もDEIという表現も、どちらも出てくるかと思いますが、同じ意味合いだと考えていただければと思います。そして、ウィズ/ポストコロナ時代のD&Iを共に考えていただく素敵な3名のゲストの方をお迎えしております。
 

森慎吾さん

ソニーピープルソリューションズ株式会社
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進部 統括課長


人事、ダイバーシティ、採用等を担当。一人ひとりが会社とともに成長し活躍できる環境づくりに取り組み、ソニーの価値観に共感し、新しい価値をソニー取り入れてくれる人を増やしていきたい。
 

齋藤保成さん

コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
人事・総務本部 人事統括部 組織開発部 労務課 課長


三国コカ・コーラ ボトリングに新卒入社し、営業職を経験。2018年のコカ・コーラ ボトラーズジャパンへの会社統合を経て、同社法務本部にて倫理・コンプライアンスの業務に従事。現在は人事・総務本部 労務課長として、全社の働き方改革をリードしている。
 

樋口淳さん

武田薬品工業株式会社
ジャパンファーマビジネスユニット人事部人材組織グループ 課長代理


新卒で武田薬品に入社後、MR(営業職)、労働組合専従者の経験を経て、現在の人事部にて7年勤務している。DE&I、採用、人材/組織開発、評価報酬、HRBPなど幅広い人事業務を経験し、現在、Work-style Diversity推進にも注力している。
 
(中島)はじめに、3名のゲストの方から自己紹介とともにそれぞれの会社でどのようなお取り組みをされているのか、DEIとの関連性も含めてお話をしていただこうと思います。それでは、森さんからお願いしてもよろしいでしょうか。
 

1人1人の個を大切にするソニー

 
(森)ソニーは、クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たすということを存在意義としています。ソニーという会社、皆さんいろいろおなじみがあると思います。電子機器であったりとか、ゲームであったりとか、音楽、映画、それから金融という様々な分野で仕事をしている中で、そのすべてにおいて、感動というキーワードが大事になっています。その感動を生むのは人ですし、感動するのも人ということで、ソニーが持っているクリエイティビティとテクノロジー、これを掛け合わせて感動を生み続けていきたいと考えています。
 
 
 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンということで、ソニーには創業当時から、設立趣意書という、創業者である井深大が会社の方向性や、人材に関する考え方を書いてあるものがありますが、その中に、「一切の実情を実力本位、人格主義の上に置き、個人の技量を最大限に発揮せしむ」と書かれています。

 つまり一人一人の環境を整えて、それぞれ最大限に自分の持っている力を発揮できるようにしていきたい、そんな会社でありたいというところですね。様々な人たちが集まっているからこそ、これがかみ合って新しいクリエイティブなこと、そして新しい感動が生み出されていくと思っています。もう1人の創業者である盛田昭夫も、ソニーに入ったことを後悔するんだったら、すぐにやめた方がいいですと言っていますが、それは個人のことを考えて言っているということなんです。とにかく1人1人の個が強い力を持って、それを集結していくということが大事だということです。

 それを最近、人材のピープルフィロソフィーという形で、ソニーではSpecial You, Diverse Sonyという、1人1人の個人が、様々な事業の場で自分らしく働いていくことができる環境をつくっていくということ、ダイバーシティの推進、エクイティの推進、そして包括するインクルージョンの推進ということを会社の基本理念としています。     

 こういった中で、私自身はDEIを推進する仕事と、それに関わる採用の仕事もやらせていただいておりますけれども、とにかく1人1人の個をしっかりと見て、公平に皆さんに対応していくということが、ソニーの創業当時からの考え方であり、私も共感しております。それができる会社であるというところで、様々な人たちが活躍できる環境がソニーにはあると思っています。

(中島)ありがとうございます。創業当初からの基本理念の中で、個の大切さというのが位置づけられていて、一人一人が十分な力を発揮できるようにしていこうというのが企業の文化の中に浸透していらっしゃるんだなということを感じました。それでは続きまして、齋藤さんからもお願いいたします。
 

コカ・コーラ ボトラーズジャパンらしい働き方

 
(齋藤)コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社の齋藤保成です。現在、人事・総務本部人事統括部 組織開発部 労務課という、人事の仕事に携わっています。新卒で入社し、営業現場を幅広く経験した後、直近では本部での倫理コンプライアンスの業務にも携わっていました。

 コカ・コーラ ボトラーズジャパンの事業エリアは東京、大阪をはじめとする1都2府35県で、売上高でアジア最大級、世界でも有数の規模を誇るコカ・コーラボトラーです。「すべての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造する」というミッションの達成を目指し、約1万5千人の社員が働いています。

 当社では、多様な働き方を推進することで、社員一人ひとりの能力向上を図り、生産性と業務品質を高めることでワークライフバランスを充実させるとともに、社員が健康でいきいきと働くことができる職場を実現するために、2018年度から働き方改革を進めています。在宅勤務やサテライトオフィス、スーパーフレックスなどを導入し、働く場所や時間にとらわれずに勤務できる環境を整えています。
当社は12のボトラー社の統合を経て、2017年にコカ・コーラ ボトラーズジャパンが誕生しました。その後、実態に応じて統一したルールや制度の見直しを行い、コカ・コーラ ボトラーズジャパンらしい働き方を進めています。
 
 
 働き方改革を推進するために、ICTツールの積極的な導入で業務の電子化を進め、テレワーク環境の整備に取り組んできました。その結果、新型コロナウイルス感染拡大で在宅勤務が推奨された際に、スムーズにテレワークへと移行することができました。
また、2020年にはwithコロナに対応、また社員一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方を実現するために、スーパーフレックスの導入や、自転車通勤の推進、サテライトオフィスの拡大、休校に伴うベビーシッターの補助などを実施しました。
今後も、アフターコロナに向けて、働き方改革をより積極的に行っていきたいと考えています。
 

多様性を尊重する経営戦略

 
 当社は、D&I社員一人ひとりの個性を尊重し、多様な価値観やアイディアを積極的に取り入れ、革新を生み出し続けるために、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進を必要不可欠な経営戦略のひとつとして位置づけております。
 また、個性や前向きな考え方を歓迎・尊重することで、互いに気持ちよく仕事ができる環境づくりを進めるため、Sawayaka Styleと称したドレスコードを取り入れました。当社で取り組んでいる活動はD&Iを推進するための手段の1つとして考えている、ということをこの後ご説明させていただければと思っております。

(中島)ありがとうございました。コロナ禍の前から多方面で柔軟な働き方の実現のためにお取り組みを進めていらっしゃったんだなということと、コカ・コーラ ボトラーズジャパンらしい働き方や、目指す職場の姿はどんなものだろうという考えが、それぞれの取り組みに発揮されているんだろうなと感じました。続いて、樋口さんからもお願いいたします。
 

グローバルなバイオ医薬品企業

 
(樋口)武田薬品の樋口と申します。私は、都内の薬学部を卒業した後、薬剤師として医薬品の知識を活かしていきたいと思って入社しました。医薬情報担当者として、いわゆる営業部門で活動をしていましたが、働く中で人の可能性について考えるようになり、労働組合を経て、人事に異動してきました。人事では、評価や報酬、採用・教育・研修・組織開発、HRビジネスパートナー、様々な人事業務に携わっておりましたが、今はDEIにかなり力を入れて取り組んでいます。

 弊社は約80の国と地域に事業活動を行っているグローバルなバイオ医薬品企業です。売り上げが約3.2兆円、そして従業員数が4万7000人います。弊社の日本国籍の従業員は実は11%ぐらいで、今、非常に多くの国籍の方が東京の本社で一緒に働いています。
 弊社の企業理念は、「世界中の人々の健康と輝かしい未来に貢献する」こと。そして、「私達が目指す未来は、『すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために』。私たちはこの約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続けます」と掲げています。今も、病に苦しむ患者さん、そしてそれを支えるご家族は新しい治療を1日も早くと待っていらっしゃるので、その期待に早く応えていきたい、そういったことを胸に活動を行っています。実は、創業してから240年と、かなり歴史のある会社なんですが、創業の頃から大事にしているこの考えというのが武田イズムです。
 
 

タケダイズムとDE&I

 
 タケダイズムとは、誠実であること。それは公正、正直、不屈の精神で支えられた大切にしている価値観ということになります。弊社のどの国にいる従業員も、このタケダイズムを全員が語れます。Patient, Trust, Reputarion, Businessと記載していますが、この順番に注目いただくと、Businessが最後に来ています。何よりも私達は患者さんのために、患者さん中心に考えることを第一としています。その結果、人々との信頼関係を築いて、社会からの評価も向上して、最終的に事業というものが後からついてくる、と捉えています。ですので、何かしら判断に迷うときには必ず、目の前に患者さんがいらっしゃったときに、その患者さんはどのように考えますかとか、会議の最中にも、患者さんがここに座ってると想定してくださいとして、椅子を一つ空けることもあったりします。これが我々の行動指針となっています。

 そしてDE&Iです。様々なバックグラウンドを持った方の多様性を受け入れて、個人として組織として成長していくことを掲げています。個性や才能の違いを生かし、一人一人が自信を持って最大限に能力を発揮できる組織を実現したいと考えています。なぜなら、製薬企業にとって大事なものは、それはDE&Iにも関係しているのですが、イノベーションです。今、世の中にない新しいものを発想しないといけない、イノベーションが必要だと言ったときに、そのイノベーションを阻害するものがあってはいけないんですね。例えば、素晴らしいアイディアを持っているのに、この場で発言するのが嫌だなと思った人が1人いたら、新しい医薬品を生み出すチャンスを一つ潰すことになるかもしれない。そういった危機意識を持ちながら、一人一人を生かして、いい形で持っていこうということを大事にしています。
 
 今日のテーマというのは働き方、ワークスタイルということですが、もちろん一人一人のライフイベント、趣向、ライフスタイルは一人一人違います。そういったことをわがままでもいいので表現してみんなで働きがいのある職場を作っていきたいと掲げております。ある育児休暇から復帰したワーキングマザーの方と話したときに、その方が皆さんに迷惑かけて、ということをおっしゃっていましたが、迷惑なんてことは当然ないですし、誰しもがそういうサポートが必要なときはあるので、そんなことも、発言をためらわずに言ってもらうために、どんな職場作りが大事なのか、ということをテーマに、今頑張っています。

(中島)ありがとうございました。イノベーションの必要性というところからも、DEIが推進されていく職場の重要性は高いということを実感しました。目指す未来の中に患者さんのためにいうだけではなくて、共に働く仲間のためにというフレーズが入っていることもとても印象的でした。
(後編へ続く)