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Update on :2022.11.09

ダイバーシティ推進活動を通し、 意識改革と多様な特性を持った人をバックアップ

臺 希巳枝さん
株式会社東急コミュニティー
経営管理統括部 グループ人材戦略部

1970年の設立以来、不動産管理のリーディングカンパニーとして、業界を牽引している東急コミュニティー。社員に対してはワーク・ライフ・バランスの実現を掲げています。働き方改革に取り組み、社員がより活き活きと成長し続けることが、お客様へのサービス向上にもつながると考えているからです。今回は、同社のダイバーシティを担当するグループ人材戦略部人材戦略課の臺希巳枝さんにダイバーシティ&クルージョン(以下D&I)についてお話をうかがいしました。
 

臺 希巳枝(だい きみえ)さん
株式会社東急コミュニティー経営管理統括部 グループ人材戦略部

2008年4月、中途入社。人事に配属。入社当初は人事制度、社員研修などを担当。2015年からダイバーシティを担当。
 

2020年に「ダイバーシティマネジメント宣言」を策定

 
「TOKYU COMMUNITY WAY」を企業ビジョンに掲げ、お客様への「安心」「安全・快適」「上質」なサービスの提供により、未来価値を創造する東急コミュニティー。東急コミュニティーでは2020年に「ダイバーシティマネジメント宣言」を策定し、ダイバーシティ推進を経営戦略としてとらえ、「多様性の受容」「個々の活躍と成長」「未来価値の創造」の3つを柱として、継続的な企業価値の向上を目指しています。

総合不動産管理業は、サービスを提供する中、女性、シニアなどさまざまな方の活躍が欠かせません。
「サービスや商品などに女性やシニアなど多角的な視線や考え方、価値観を反映することは大変重要です。そのため女性活躍推進は、それ以前から大きな課題でした。女性が十分に力を発揮できる職場環境を整え、ロールモデルの策定や女性リーダーの育成に力を入れ、女性管理職比率の向上を目指しています」(臺さん)
具体的には、
(1)女性管理職登用拡大
2023年4月時点で女性管理職比率は10.4%、2028年3月31日までに15%以上にする。次期管理職研修の実施等、各種取組を推進。また、2021年度からは女性社員が自身のステップアップのイメージをつかむきっかけとなるよう「女性社員ステップアップ研修」を実施。
(2) 育児制度
事由を問わず2歳まで取得が可能。配偶者が出産するときには3日間の配偶者出産休暇を取得可能。産休・育休復帰後は短時間勤務や繰り上げ・繰り下げ勤務、在宅勤務制度等を利用して仕事と家庭の両立を図る。また、仕事と育児の両立には男性の育児参画も重要と考え男性の育児休業取得も推進。
「その他、育児や介護、福利厚生制度についてまとめた『ワーク・ライフ・バランス推進ガイドブック』を作成し、制度周知を継続的に行っています。こうした取り組みが成果として、2021年度には女性だけでなく、男性の育児休暇取得率も100%(2022年度は92.7%)を達成しています」※育児休業には配偶者出産休暇取得率を含む(臺さん)

女性活躍推進とともに、働き方改革にも取り組んでいます。
「多様な人材が活躍できるよう様々な勤務の選択肢を提供するためであり、これもダイバーシティーの一環です」(臺さん)
具体的には
(1)スライド勤務制度
始終業時刻を30分単位で繰上げ繰り下げできる制度。
(2)時間単位年休
年に5日分(40時間)を限度として1時間単位で年次休暇を取得が可能。
(3)テレワークの推進
2015年からモバイル勤務制度、2016年から在宅勤務制度を導入し、2018年からはグループ企業のシェアオフィスの利用も開始。
などがあり、より柔軟な働き方ができるようになっています。


 

幅広い啓発活動とともに制度の充実を図る

 
「仕事との両立を考えるうえで、育児とともに大きな課題になりつつある介護についても、管理職を対象に、具体事例から支援策を学ぶ介護セミナーを実施し、介護離職の防止に努めるとともに介護をしながら働く社員を支援するため、介護休業・介護休暇(有給)のほか、介護繰上げ繰下げ勤務制度、介護短時間制度を定めています」(臺さん)
このほか、同社では障がい者や高齢者の雇用率と活躍推進を図る一方で、性的指向や性自認に関わらず、社員一人ひとりが明るく活き活きと活躍できるよう、e-ラーニングによるLGBT研修、LGBT相談窓口の開設など、幅広い啓発活動とともに制度の充実を図っています。とはいえ制度は活用して初めて効果が表れるものです。一人でも多くの社員に制度を活用してもらうために、どんな取り組みをしているのでしょうか。
「管理職層に対して啓発活動を繰り返し、『制度を利用するのが当たり前』という雰囲気が醸成するよう努めています。とくに男性の育休制度については、活動を始めた頃は、制度の必要性は理解しつつも、管理職自ら制度を利用したり、部下に制度の利用を促したりするまでには、なかなか至りませんでした。いわゆるアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)がその根底にあったからだと思います」(臺さん)
アンコンシャス・バイアスは、ダイバーシティの推進はもちろん、社員の育成や業務を決定する際にはひとつの障壁になっているといわれています。例えば、無意識のうちに「女性=育児」「男性=仕事」と思っていたり、「小さな子どもがいる社員」や「年長者」への業務を限定するなどネガティブなイメージを持ったりするのもそのアンコンシャス・バイアスの例です。
「当社では定期的に従業員満足度調査を実施し、従業員のニーズを把握するようにしています。その中で『若い世代は休暇を取りたいと考えている』『若い人は、男性も家事や子育てをする』といった意識が強いことがわかり、まずは意識改革から行いました。全社員に浸透したかと問われると、やや疑問は残りますが、管理職や上長が自ら制度を利用して休みを取ったり、部下に休みをとるよう促したりするようになっているのは、良い傾向だと思います」(臺さん)


 

社員の間から生まれるボトムアップ活動に期待

 
「ダイバーシティ推進活動のおかげで、制度の整備はかなり進んだと思います。私自身も小さい子どもがいるので、育児短時間勤務制度なども使っており、利便性も感じていますし、以前に比較しても周囲の理解度も深まっていると思います」と語る臺さんですが、課題がないわけでないそうです。
「現在のところ、ダイバーシティに関するものはグループ人事部が主導しているものばかりです。しかし、今後は各事業部の社員の間から自然発生的に「こんなことをしてみたい」「こんな制度を作ってほしい」「こんな勉強会をしたい」といった声が出て、何らかの行動するいわゆるボトムアップ活動が生まれることを期待しています」(臺さん)
D&I活動が進んでいるといわれる企業では、トップダウンとボトムアップ両方の活動が融合しているケースが多数見受けられます。トップダウン式はどうしても会社全体への浸透率や熟成度に時間がかかります。また、一方、ボトムアップ活動が盛んでも会社のコミットメント力が低いと、活動に対しての意欲が薄れてしまいがちです。
「次世代の育成支援(子育てサポート)に積極的に取り組んでいる企業に贈られる『くるみん』やLGBTへの取組に関する評価指標である『PRIDE指標』などダイバーシティ推進活動に対して外部から評価されたことで、社員意識が高くなりつつあるので、この機会をうまく活かしたいと思っています」と、臺さんは抱負を語ってくれました。
そんな臺さんから、読者の皆さんにメッセージをいただきました。「当社はマンションやビル、商業施設や公共施設など、様々な建物の管理をしている会社です。多様な能力が必要なので、一人ひとりが自分の力を生かせるようにサポートしています。ダイバーシティ推進というところでさまざまな特性を持った人をバックアップする体制を整えています。興味をお持ちの方は、ぜひ当社のドアを叩いてください」