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Update on :2022.02.09

「先輩に聞く、自分らしく働くってどういうこと?」(前編)

Sabrina Wangさん/田口周平さん/合田貴将さん
EY JAPAN株式会社/ジョンソン・エンド・ジョンソン 日本法人グループ/野村ホールディングス株式会社

ゲイ、トランスジェンダー、海外ルーツなど、
多様なバックグラウンドをもつ先輩たちに、「自分らしく働く」ことについて伺いました。
(2021年10月16日配信。動画はこちら

(藥師)このトークセッションは、いろいろな社会人に「自分らしく働くってどういうこと」」を聞いていくセッションになっています。

私自身トランスジェンダーで、発達障害でADHDがあります。いろんなマイノリティ性があると、自分って働けないんじゃないのかなって、学生の頃や就活生の頃すごく心配だったんです。そういった中でいろんなロールモデルと出会って、「こんなふうに働けるんだ」って、前向きにキャリアについて考えるきっかけになりました。ぜひみなさんに今日お話を伺えたらと思い、このセッションを実施します。

御登壇の皆様から、自己紹介やどんなお仕事をされているか、お話いただければと思います。まずは田口さんからお願いできますでしょうか。

 

田口周平さん
ジョンソン・エンド・ジョンソン 日本法人グループ
Open&Outアジア・パシフィック地域リード


ニューヨーク留学後2011年にジョンソン・エンド・ジョンソン㈱へ中途で入社。2018年在職中に経営学修士課程(MBA)を修了。ゲイ当事者として社内のLGBTQ+アライ従業員団体「Open&Out」を設立、現在同団体アジア・パシフィック地域代表。

 

自分たちの会社を、楽しみながら、自分たちでよくしていく

 
(田口)ありがとうございます。みなさんこんにちは。私は、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループでLGBTとアライの従業員による団体のアジアパシフィック地域の代表をしています。

1980年の2月28日生まれで、魚座のA型です。皆さんとだいぶ年齢に開きがあるかなと思いますが、いわゆる就職氷河期の時代に就職活動をしました。
生まれはですね、東京生まれ東京育ちということで江戸っ子だそうです。現在は、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループの人事部で、福利厚生や人事の企画などに携わったり、LGBTとアライの従業員による団体のアジアパシフィック地域の代表をしています。
働きながら2018年にMBA(経営学修士)を取得しました。今年で交際21年になるパートナーと、あと15歳の犬の、2人1匹暮らしをしています。

この数字、皆さん何の数字か、もし当てていただけたらと思うんですけど。藥師さんこれなんの数字かわかりますか。
 
 

(藥師)うーん、LGBTとアライのチームメンバーの数ですか?

(田口)正解は、僕の経歴なんです。在勤年数と、会社を書いています。一社目がサービス業。二社目がアメリカのゲーム会社の日本支社でゲームのデザインをや、ゲームのストーリーを書いたり、翻訳をしていました。次が、ノキアジャパンという携帯電話会社で、人事部長の秘書をやったりということで、結構経歴がバラバラなんです。

今はジョンソン・エンド・ジョンソンで働いていて、職歴が今までで一番長いです。なぜかというと、「Open&Out」という団体があるからなんです。2015年に日本で立ち上げました。アジア・パシフィック地域で初ですし、本社のある北米以外でも初の国際チャプター(支部)ということで、非常に注目をいただきました。自分で生みの苦しみを味わったというところもありますが、本当にここ何年かで会社が大きく変わったと思っています。

そういう良い文化が根付いた会社は僕自身にとって働きやすく、今年の9月1日で10年を迎えました。アジア・パシフィック地域のOpen&Outは、今は、八つの国と地域で活動しています。これに、中国が加わったり、ベトナムでもチャプターが開く予定になっています。メンバーはアジア・パシフィック地域で約320〜330人ぐらいで、かなり精力的に活動しています。皆さん、楽しみながら、自分たちの会社を自分たちでよくするんだという想いで取り組んでいただいていると思います。

インビジブル・マイノリティという言葉がありまして、LGBT、性的指向みたいなところは見えない違いに入ります。
上に出ている部分がいわゆる見える違い。人種とか性別とか体の特徴や外的な疾患などです。
 
 
それに比べて、見えない違いというのが、例えば国籍とかって実はわからなかったりします。それに、自分が誰を好きなのかっていうのは自分から言わないとわからない。見えない違いとして、僕のコアになっている違いであるところのゲイ、セクシャリティも見えない違いです。ジョンソン・エンド・ジョンソンのOpen&Outを2015年立ち上げるまで基本的に職場でカミングアウトしたことはなかったんです。でも、自分がゲイとして見える存在になって、自分も働きやすいですし、楽しく変えて楽しく生きられるようになっています。

(藥師)田口さんどうもありがとうございました。続きましてサブリナさん、ぜひよろしくお願いいたします。

 

Sabrina Wangさん
EY JAPAN株式会社
Senior Associate


中国出身。18歳でシンガポールに留学し、新卒で現地の日系アパレル企業に入社。日本での語学留学を経て2018年にEY Japanに入社。EY税理士法人タレント部で中途採用・新卒採用を担当。2021年2月からEY Japan全体のD&I推進業務を担当。
 

やる気があれば誰でも活躍できるような、インクルーシブな職場を創りたい

 
(サブリナ)EY Japanタレント部、いわゆる人事部で、D&I推進を担当しておりますサブリナです。
EYのLGBTとアライのネットワーク、Unity(ユニティ)にも参加しています。
私の属性を言うと、まず性自認は女性です。性的指向でいうとLGBTQのうちのL、いわゆる性自認は女性で、恋愛対象も女性のレズビアンです。そして、日本においては外国人でもあります。

私は中国が発展し始めた80年代後半に、中国の小さな町に生まれました。
中学生くらいになったときに、日本がアニメとか漫画、ドラマや映画がすごくたくさん入ってきて、私もたくさん見ました。その時、漫画とかドラマを見て、こんなにおしゃれな生活をしている人がいるんだ、と思っていました。そのときからずっと外の世界を見てみたいという気持ちが強かったです。
そして、言語とか、経済的事情を考え、奨学金をもらってシンガポールの大学に入りました。

大学卒業後、シンガポールで就職をして、シンガポールでも展開している、ある大手日系アパレル企業に入社して、そこで店舗運営の仕事をしていました。店舗運営の仕事はとても楽しかったですが、そのとき一番やりがいを感じたのが、副店長として自分が採用した新人が育つこと。そこで多分初めて人事領域の仕事に興味を持ったのかなあと後から思いました。
大学の時に、シンガポール政府から奨学金をもらっていましたので、卒業後も6年間、シンガポールで働かなければならないという決まりがありました。その6年間が終わった30歳手前のときに、仕事を辞めて、ずっと私が憧れていた日本に語学留学に行きました。
そして、語学留学が終わった後に日本で就職活動をして、3年ほど前にEYに入社しました。最初はEYの税理士法人の方で中途採用と新卒採用の業務を担当していましたが、今年の2月からは自ら手を挙げて、このD&I推進を担当しているチームに異動しました。

今取り組んでいることを言うと、先ほど今年の2月にこのD&Iチームに移ったという話をさせていただきましたが、実はその異動したきっかけは、去年、D&I主催の研修に参加したことです。
私自身は、女性であり、外国人であり、LGBT当事者という点で、結構マイノリティに属しているとは思いますけど、困ってるとかはなかったし、むしろ自分が他に困っている人を助ける立場にあると思っていました。ただD&I チームが主催している研修を受けると、D&Iは実は弱者保護ではなくて、やる気のある人を応援して、もっと活躍できるようにするための取り組みだと気づきました。
そこで自分もそういう当事者の観点を持っているので、これからもそのD&Iの仕事に取り組んでいきたいなと思って異動しました。

EYでは、数年前からD&Iを経営戦略の一環として取り組んできましたので、その結果、ダイバーシティは結構進んでいる状況とも言えます。これからはもうアイデンティティにとらわれず、やる気があれば誰でも活躍できるような、インクルーシブな職場を作りたいと思います。また外部の、ReBitさんのような外部の団体ともたくさん連携しているので、本当に毎日良い刺激を受けています。

(藥師)続きまして合田さん、よろしくお願いいたします。

 

合田貴将さん
野村ホールディングス株式会社
アソシエイト


2017年に野村證券に入社、27歳。トランスジェンダー男性として、4年間都内の支店に勤務。現在は不動産関連グループ会社へ出向し、宅建士として不動産取引の実務を行いながら、社会人学生として大学の建築学科に通う。
 

LGBTQの理解促進が、サステナブルな企業につながる

 
(合田)私は、野村證券株式会社入社5年目の合田貴将と申します。セクシャリティはFTM、トランスジェンダー男性ですね。現在27歳です。よろしくお願いします。

新卒で野村證券入社後、初めての配属は虎ノ門支店でした。虎ノ門支店で取引管理業務、證券会社の取引管理業務を3年間やりまして、その後自分の配属先であった虎ノ門支店が他の支店と統合して本店営業2部という部になりました。そこで本店営業2部で取引管理業務をさらに1年やった後、今年の4月からは、不動産関連の会社に出向になりまして、現在もそちらで不動産関連の仕事をしております。LGBTの取り組みに関しましては、このような機会だったり、インタビューの機会があればそちらは受けさせていただいております。

会社の紹介をさせていただければと思います。
野村グループは1925年に設立され、グローバル金融サービスグループとして世界30ヶ国、地域を超えるグローバルネットワークを有し、国内外のお客さまに付加価値の高い商品を提供しております。野村がLGBTQを含むダイバーシティの取り組みを始めたきっかけとしましては、2008年にリーマンブラザーズの欧州とアジア拠点の部門を、承継したときです。その際、ダイバーシティの考え方と社員が、社員がボランティアベースで運営する社員ネットワークが引き継がれまして、2010年よりLGBTQに関する取り組みが始まりました。

野村では、LGBTQは、社員のダイバーシティの一つとして、ダイバーシティ&インクルージョンの施策の一環として取り組んでおります。
 
 
その考え方で、LGBTQの社員が安心してやりがいを持って働くためには、人権意識をベースにした理解の促進が重要という考えです。これがひいてはサステナブルな企業に繋がると、いう考えのもと取り組みを行っております。こちら真ん中はそれに応じた施策になっております。規定ではLGBTQの差別の禁止を明記し、研修やLGBTQの勉強会を設けております。また同性・異性問わず利用できるパートナーシップの制度や、私のようなトランスジェンダーの課題に応じた対応をまとめた、トランスジェンダー対応ガイドラインというのを設けております。風土醸成の取り組みとしては2013年より社員ネットワークのLGBTアライになろうという取り組みがあります。こうした様々なアプローチで、当事者が働きやすい職場環境作りに取り組んでいて、当事者である私としてもとても嬉しいと思っております。
 

キャリアを選ぶときに大事にしたのは、やりたいことと、働きやすい環境

 
(藥師)合田さんありがとうございました。この4名で今日トークセッションできることをすごく楽しみだなと思っています。

まず最初に、キャリアを選ぶときの大事にしているものをお伺いしたいと思います。例えば新卒就活と、社会人になってからでは大事にする軸も変わることもありますが、お一人お一人聞いてみたいなと思います。合田さんはどんな軸を大事にして就活されていましたか。

(合田)そうですね。私は大学生の頃に野村證券ではなかったですけど、別のネット證券で自分が株取引をしていたので、その頃は株を扱う会社に入りたいな、證券会社に入りたいなと漠然と思っていました。證券会社って言ってもいろいろあるなかで、野村證券に惹かれた理由は、他の金融関連企業と合同でLGBTQ向けに採用説明会をやるっていうのを知ったことですね。それに自分が参加して、その時はまだ自分は女性の姿だったんですけど、入社したら男性として働きたいなと思っていたので、そういう説明会をやってるってことは理解があるのかなと思って、安心しました。なので、證券会社に入りたいっていう気持ちと、自分が働きやすい環境の二つの軸で就活を行っていました。

(藥師)なるほど。今年のダイバーシティキャリアフォーラムに、当時合田さんが参加された採用説明会を開催していたLGBTファイナンスのみなさまもご出展されていますね。そういうふうに、働きやすい環境があるんだよと伝えることが、改めて大事なんだなとお話聞きながら思いました。
 

自分の目標の実現を後押ししてくれる会社を選ぶ

 
(藥師)サブリナさん、先ほどのお話の中で、最初に就活したのはシンガポールとおっしゃっていましたね。キャリアが変わる中で、キャリアの軸ってどんどん変わっていっていますか。

(サブリナ)そうですね。私がずっと大事にしているのは、一つは自分の強みを生かせるかどうか、もう一つは多分その会社では自分の目標達成する道があるかどうか。要はリソースを使えるかどうかというところなので、多分年齢とキャリアを積んできて、その目標もどんどん変わっています。シンガポールで働いていたときは、当時はシンガポールであまり日本語を話せる人がいなかったので、自分の強みは日本語だなと分析して、かつ、そのときの目標はもう日本に来ることだったので、そういう道がある会社を中心に就職活動をしました。

ご縁があって、ある日系アパレル企業に入って、日本語もたくさん使えたし、日本での研修を受けるチャンスもありましたので、ある意味、目標を達成したのかなと思っています。今ですと、目標もどんどん変わってきていて、今の目標は、人事のプロになりたいということですね。

EYを選択したのは、面接を受けかときに、この会社では一つの仕事だけじゃなくて、たくさんのことを自分から手を上げると挑戦できるときいて、私の目標の実現の後押しになってくれるのかなと思って入社しました。

(藥師)自分の目標の実現を後押ししてくれる会社というのはすごく素敵なことだなあと思ました。
 

自分の働く軸を考えたとき、人事という仕事に出会えた

 
(藥師)田口さんはいかがですか。先ほどキャリアの移り変わりについてお話いただいてたんですけれども、その時々で大事にされてるものってどんなものだったのでしょうか。

(田口)実は3社目ぐらいまでは特に選んでなかったんです。なぜかって言うと、僕本当にお伝えした通り就職氷河期だったので。当時で言うと履歴書200通送って1、2通お返事が帰ってくればラッキーみたいな。結構みんな大変でしたね。もうとにかく入れたところに入るみたいな学生時代ですね。そこから転職をするにあたっても、軸みたいなものは実際あまりなかったですね。

なので自分がやりたいことというよりは、自分が楽しそうだなと思う仕事をやってきたというところがありました。ゲームや、デザイナーみたいなのも、すごく楽しかったし。ただ、3社目で人事部長の秘書になる前に、当時27、8ぐらいだと思いますけど、そろそろちゃんとキャリアについて考えなきゃいけないなと思ったときがあって。自分は、その前の2社、サービス業とゲーム、全然違う業界ですし、やってることも全然違ったので、ここからいいストーリー思いつかなければ僕は就職できないに違いない、と思ったんです。面接とかで、なぜ違う業界で働いていたんですか、と絶対聞かれると思っていろいろ考えに考えたら、ひらめきがあったんです。

僕は、誰かに何かをしたときに、ありがとうって言われたりとか、喜んでもらったりとか、楽しんでもらえるっていうのが好きだなと思ったんです。ノキアで、人事というお話をいただいたときもおもしろいなと思えて。自分の軸を考える前だったら、面倒くさそうって思ってたかもしれないですけど、人に関する仕事っていうのはすごく面白いなっていうのを、そのとき初めて思って、それで決めたっていうのがあります。だからどっちかって言うと僕は自分の動機とか後付けになったんですけど、やっぱりどこか共通するものは見出せるんだっていうのはありますね。
 

就活のときに自分の軸がみつけられなくてもいい。変わってもいい。

 
(藥師)ありがとうございます。僕、みなさんのキャリアの中でどんなことを大事にしてるんですかって質問するのが大好きで。その理由として、僕はキャリアコンサルタントとして3,000名を超える学生や若者たちとキャリアについて話すなかで、よくいただく質問って、「これがしたいというものが全然見えないんですけど、どうしたらいいんでしょう?」っていう質問なんですね。そりゃ、就活の時に全部見えることなんてないよなと思っていて。

例えば僕は就活生の頃、トランスジェンダーということもあって、「男性スーツで働ければなんでもいいです!」みたいな感じで、そこの一点だけで就活していたんです。そして、働き始めてから、いやいや仕事内容とかとかどういった人間関係のなかでしたいかってすごい大事だなというふうに思って。そして30代に入ったら、ワークライフバランスって大事だなっていうふうに思ったりとか、福利厚生や働きやすさって大事だなっていうふうに思ってきて。

働き方を選ぶ軸ってどんどん変わっていったりとか、増えてったりするじゃないですか。それっていいことで、キャリアや経験が積み重なっていくからこそなんだなあと思っているんです。だからこそ、その時々でとか、今皆さんがどんなキャリア大事にしてるのかというのを聞けたことはすごく大きな意味があると思います。
 
(後編へ続く)