伊藤祥子さん
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 人事統括部 エグゼクティブリワード部 ダイバーシティ&インクルージョン課 リーダー
2002年に新卒で東京コカ・コーラボトリング株式会社に入社し、飲食店をお客さまとする営業を担当。法人営業職を経て、人事部門へ異動。ビジネスパートナー、労務部を経て昨年9月よりダイバーシティ&インクルージョン課リーダーに着任。テレワーク、フレックスタイム制を活用し、昨年2月に3人目の育児休業よりフルタイムで復職
多様性の尊重が企業の力に
左から:代表取締役社長 カリン・ドラガン、執行役員 経営改革本部長 荷堂 真紀
「すべての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造すること」をミッションとし、ビジョンのひとつである「コカ・コーラに誇りを持ち誰もが働きやすい職場の実現」に向けてダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)を推進しているコカ・コーラボトラーズジャパン。多様な価値観や背景を持つ、約2万人一人ひとりの違いこそが同社の強みだといいます。
「幅広いお客さまに親しまれる飲料ブランドであり続けるためには、様々なお客さまの想いを想像し、理解することが大切です。そのためには、社員一人ひとりの多様性を尊重することで性別、年齢、障がいの有無、国籍、性的指向、性自認や表現等の属性、また就労における様々な制約要因に関わらず、すべての社員が能力を最大限に発揮できる機会を提供することが会社の持続的な発展に不可欠だと考えています。」
同社は、特に「女性の活躍」、障がいの有無に関わらず誰もが活躍できる環境づくりを目指す「障がい者の活躍」、「柔軟な働き方の整備」を重点テーマとして取り組んでいます。
このような取り組みについて、伊藤さん自身が実感していることが多いそうです。
「第1子の産休・育休から復職後、9:00-16:00の時短勤務で働いていました。昨年2月に3人目の育児休業から復職する際も当然時短勤務での復職を考えていました。産休・育休を取得している1年半の間に在宅勤務やサテライトオフィス勤務といった働き方が整備され、全社的に活用が推進されるなど、職場環境は大きく進化していて、上司からフルタイムでの復職を勧められました。3人の子育てをしながらフルタイムで働けるとは考えてもみなかったので、驚きと同時にとても嬉しかったのを覚えています。また、昨年、取締役会の役員に女性が新たに加わりました。女性の管理職登用も進みつつあり、以前よりも意思決定の場に女性が参加する場面が増え、様々な取り組みが浸透していることを肌で感じました。」
フルタイムで働けることで、伊藤さん自身の意識も大きく変わったそうです。
「フルタイムで働けることで、これからの自分のキャリアについて一層前向きになれました。時間的な制約はもちろんですが、それ以上に気持ちの面での制約がなくなったことが大きいかもしれません。様々なことにチャレンジしてみたい!という気持ちが以前より強くなりました。」
子どもたちの笑顔が印象的。2019年ファミリーフェスティバルでの一コマ
新入社員の大卒女性比率は50%を突破
オンライン面接による採用活動
同社は、経済産業省による令和元年度 「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選出された他にも、経済産業省が東京証券取引所と共同で女性活躍推進に優れた上場企業から選定している「なでしこ銘柄」において「準なでしこ銘柄」に2年連続で選出、日本経済新聞社による「Smart Work経営調査」2019年総合ランキングにおいて「4つ星」の評価を獲得しました。これまでの取り組みが評価された結果といえるでしょう。
「社外評価を受けたことで、お客さまや当社に興味を持っていただいている学生の皆さんに私たちの取り組みが伝わるきかっけになったと感じています。」
こうした社外評価は、採用面でも効果が表れているそうです。
「面接の際に、社外評価について触れる学生が増えています。優秀かつ多様な人財の応募につながり、2018年から新入社員の大卒女性比率は50%を超え、また外国籍の方の採用も増えています。」
同社は、2021年度新規卒業者および中途採用時に、オンライン選考を行っています。
「従来は全国主要4都市で対面での面接をしていましたが、今回はコロナ禍ということもあり早い段階でオンライン面接に切り替えました。それによりこれまで応募がなかった地域の皆さんから応募をいただき、沢山の方にお会いすることができました。また、昨年は国内だけでなく、海外のキャリアフォーラムに参加したり、インターシップ提携校を拡大するなど、幅広い人材の採用に力を入れています。」
多様性を受け入れる環境の実現に向けて
2020年入社 デフアスリート 高居 千紘さん(写真提供:日本デフ陸上競技協会)
同社は子会社であるコカ・コーラ ボトラーズジャパンベネフィット株式会社(昨年8月に特例子会社に認定)内にビジネスサポート事業部を立ち上げました。専門知識のある8名の専任スタッフが、障がいのある社員それぞれの特性を見極め、業務内容と目標を明確化し、毎日やりがいを持って働ける環境を個人ごとに用意することで、配属先での戦力化につなげています。
一方で、同社はパラ・デフアスリートの支援にも力を入れており、現在は5名のアスリート社員が在籍しています。業務を行いながらアスリート活動に従事しているのが特徴です。
「アスリートとしての活動が終わった後も、社員として働いていただく機会を提供することを前提としています。現在、パラリンピック・デフリンピック出場に向けて、日々の業務と練習に励んでいる彼らの姿は、周囲へ活力を与え、社員の一体感の醸成につながっています。」
同社はLGBTの取り組みにも力をいれており、今年1月に各種規程及び共済会会則における配偶者の定義の変更をしています。これによってパートナーが異性であっても同性あっても、同じ条件で会社の福利厚生を利用できるようになりました。
「それにあわせて全社員を対象にe-ラーニングでの研修を実施し、それとは別に全管理職を対象とした研修を行いました。様々な違いを持つ人が、誤解や差別を受けることなく安心して働ける職場環境を作るために、全社を挙げて意識改革に取り組んでいます。今後は見えにくい違いだからこそ、違いを認識していることを証明するために差別禁止事項の対象を明確にすることを目的とした各種ポリシーの変更や職場でアライを可視化する取り組み等を計画しています。」
With コロナ時代の働き方
ボストンキャリアフォーラムにも出展
現在は人事統括部でダイバーシティに関する戦略策定及び実行を担当している伊藤さんですが、今年の2月からは必要最低限の出社のみで、ほぼ在宅勤務だと聞いています。
「コロナ禍以前も全社的にフレックスタイム制やテレワークの利用が浸透していたので、スムーズに対応することができました。この数か月の間にも、スーパーフレックスの導入、サテライトオフィスの拠点拡大、営業現場での直行直帰、自転車通勤の推進等、“With コロナ”の働き方を実現するための施策を導入しています。」
同社は、コロナ禍という困難な時期においても、すべての人にハッピーでさわやかなひとときを届けるため、安心・安全な製品の供給を継続すべく事業活動を行っています。
「社長のカリン・ドラガンは私たちに『これまでのやり方は選択肢にない』というメッセージを様々な場面において発信しています。私は、今までのやり方を一新するような打開策は、お互いの違いを認め合う幅広い視点や異なる立場からの屈託のない意見から生まれると信じています。以前社長がD&Iの専任組織をなくすことを目指したいと仰っていたのが印象に残っています。一人ひとりの社員がD&Iを自分事として考え、会社の風土として根付いていること。長く険しい道のりですが、歩みを止めずに一歩でも前進させることが私の役目だと考えています。」
企業情報:コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社