ニューヨーク本社を中心に、世界約176都市から金融・経済情報の発信を行うブルームバーグ。拠点のひとつであるブルームバーグ・エル・ピー東京オフィスにも、様々な国籍を持つ多様なスタッフが集まっています。今回お話を伺ったのも、海外出身のJackさんとMandyさん。お二人はなぜ、日本で、そしてブルームバーグで働くことを選んだのでしょうか。
Jackさん
ブルームバーグ・エル・ピー東京オフィス
データ部門
台湾出身。小学校時代に日本での生活を経験。カナダの大学を卒業後、再び日本に移住する。2020年、転職によりブルームバーグ・エル・ピー東京オフィスに入社。「Bloomberg LGBTQ+ & Ally Community」の共同リーダーであり、自身もLGBTQ+の当事者。

Mandyさん
ブルームバーグ・エル・ピー東京オフィス
エンタープライズ・テクノロジー部門
中国出身、カナダ育ち。トロント大学卒業後、JETプログラムの国際交流員として山梨県庁に勤務。その後一度カナダで就職するも、日本での生活が忘れられずブルームバーグ・エル・ピー東京オフィスに入社。「Bloomberg Women’s Community」の共同リーダーを務める。

自分らしく、不安なく働ける職場
最初に話を伺ったのは2020年にブルームバーグに入社した、台湾出身のJackさん。Jackさんはどのような経緯で、日本で働くようになったのでしょうか。
Jackさん「家庭の都合で、小学校の5年間を日本で過ごしました。その後一度台湾に戻り、高校3年から大学時代、就職していた時期を含め8年間カナダで生活していました。家庭のことやパーソナルな事情により、日本で再び暮らし始めたのは5年前のことになります」
日本に戻ってきてすぐに、ブルームバーグに就職をしたのでしょうか。
Jackさん「いえ、ブルームバーグには第二新卒で転職しました。前職ではカミングアウトに対する不安やストレスが溜まっていて、転職をしたいと思うようになりました」
Jackさんは、自身がゲイであることを前の職場ではカミングアウトできなかったと言います。
Jackさん「例えば親睦を深めるはずの飲み会に参加しても、『彼女はいるの?』『どんな子がタイプ?』といった質問を受けるたびに、逆に距離ができてしまうのが悩みでした。私自身が直接言われたわけではありませんが、『ゲイの○○、キモいね』といった言葉を耳にしたことも、心の中で引っかかっていました。もしカミングアウトをしたら、今までと異なる扱いを受けるかもしれない。キャリアがうまくいかなくなるかもしれない。職場環境にそんな不安を感じていました」
これまでの環境では、ゲイであることをカミングアウトしていたのですか。
Jackさん「カナダでは、もっと自分らしく生きてみようと、勇気を出してカミングアウトしていたんです。カミングアウト直後は自分の中で戸惑うこともありましたが、カミングアウトをしたことで友人やクラスメート、同僚とより深い関係を持てるようになりました。カミングアウトをする前に比べ、体重は10キロほども軽くなりました。それから日本に来て就職をしましたが、またカミングアウトできていない状況に戻ってしまったことは、やはりストレスでしたね」
こうして前の職場環境に不安を感じ、転職を決意したJackさん。ではJackさんは、ブルームバーグのどんなところに惹かれて転職先に選んだのでしょうか。
Jackさん「次の職場は、誰もが自分らしく働ける環境、LGBTQ+の当事者がセクシャリティに悩まずに働ける環境にしたいと思っていました。転職活動をしている際に、ブルームバーグはキャリアパスが豊富で風通しの良い職場、自分の適性を見つけるために挑戦を応援してくれる会社だと知り、応募を決めました。ブルームバーグには、新入社員向けのトレーニングを含め、社員が成長できる環境が整っています。周囲からのサポートが手厚く、安心して仕事に集中でき、キャリアアップができる会社だと感じました。今、ブルームバーグに入社して5年が経ちます。あっという間でしたが、これまで不安を持つことなく、自分らしく働けているなと思っています」
ブルームバーグに入社してからのJackさんの業務内容を教えてください。
Jackさん「入社当初は、データ部のGlobal Data Analytics(GDA)チームに所属していました。ブルームバーグではデータがメインのプロダクトであり、私はそのデータに関する確認・検証を担当していました。GDAチームでは、お客さま対応をはじめ、データ部のオペレーション全般に携わることができ、私のキャリアに大きな影響があったと感じています」
現在はどんなお仕事をされているのでしょうか。
Jackさん「現在は上場先物・オプションデータの担当をしています。取引所から送信されるデータでスムーズにブルームバーグのターミナルに入ってくるよう、準備作業を行うこと、またデータが入った後の修正や管理も行っています。データの正確性を向上させること、時間の短縮、そしてカバレッジを広げることを目指して日々取り組んでいます」
普段どのように業務を行っていますか。
Jackさん「私のチームはアジアに6人おり、多くのメンバーが東京以外にいるため、Zoomでのやりとりが多いですね。チームメイトは皆、積極的で、新たな課題に対してポジティブに解決策を見出そうとしています。メンバーそれぞれの得意分野と、興味と、目指したいキャリアに合わせて業務を分担しています。こうして自分のキャリアパスをデザインできるのが、ブルームバーグで働ける良さだと思っています。私は、自分で分析した情報や意見がプロダクトの向上につながること、お客さまのために何かできたと感じることに、やりがいを感じています」
Jackさんは業務の他に、LGBTQ+コミュニティの活動もされていると伺いしました。こちらではどんなことをされているのでしょうか。
Jackさん「『Bloomberg LGBTQ+ & Ally Community(通称BPROUD) 」という社員コミュニティがあり、私はそこで共同リーダーを務めています。BPROUDでは、当事者の社員によるパネルディスカッションや、管理職のためのアライトレーニング、理解を深めるためのLGBTQ+を題材にした映画の上映会など、さまざまなイベントやセミナーを企画運営しています。私は元々、LGBTQ+に関する理解を深め、このコミュニティを支えるアライを増やすために活動に参加するようになりました。ですが活動をしていく中で、コミュニティー内でお互いに支え合うアライ、LGBTQ+に関係なく支え合えるアライの存在も、とても大切だと強く思うようになりました。人は誰でも、状況によって自分が少数派になることがあります。LGBTQ+の当事者だからといってアライのサポートを求めるだけでなく、全ての社員に対してお互いがアライとして支え合う環境が整ったときこそ、インクルージョン活動が成功したと言えると、私は考えています」

近年実施された具体的な企画などがあれば教えてください。
Jackさん「近年では、より多くの社員にメッセージが届くように、他のコミュニティと協力してイベントを行っています。2年前は障がいに関する社内コミュニティ『Bloomberg Abilities Community』と共同で、インターセクショナリティ(交差性)に関するパネルセッションを行いました。昨年は『Bloomberg Working Family Community 』との共同企画で「多様な家族を考える」をテーマに、LGBTQ+の当事者として、子育ての課題や家族の多様性について議論しました」
そのような活動が実を結び、ブルームバーグは5年連続でWork With Prideゴールド認定を受賞し、3年連続でレインボー認定を受賞しています。
Jackさん「ブルームバーグでは、LGBTQ+当事者を含むすべての社員にとって働きやすい環境づくりに力を入れています。この環境づくりを支えてきた歴代のBPROUDの共同リーダーの先輩たち、インクルージョンチームの皆さんには心がから感謝しています」
では最後に、この記事の読者の皆様にJackさんからのメッセージをお願いいたします。
Jackさん「目標を持つことは非常に重要ですが、人生には様々な出来事があり、目標は変わっていくものです。今の自分にとってこの道で良いのか、このキャリアで良いのか、この会社・業界で良いのかと悩むことも多いでしょうが、やってみないとわからないこともたくさんあります。どんなことに対しても好奇心を持って、挑戦してみましょう!」

毎日会社に行くことが楽しみ
続いてお話を聞かせてくれたのは、今年で入社10年になるというMandyさん。Mandyさんはかつて、国際交流員として県庁で働いていたと言います。
Mandyさん「私は中国で生まれ、カナダで育ちました。母校のトロント大学の提携先で関西学院大学があり、1年間交換留学をしました。大学卒業後はJETプログラムに参加し、国際交流員として山梨県庁国際交流課にて約2年半勤務しました。山梨県の友好都市との連携や、知事の表敬訪問の通訳、国際交流講座、学校訪問、インバウンド観光に関する仕事などに従事し、日本とカナダの架け橋になるよう日々努力していました」
そんな折に発生したのが、あの東日本大震災でした。Mandyさんは当時をこう振り返ります。
Mandyさん「大好きな日本の深刻な状況に、私自身強いショックを受けました。日本にいる残された時間の中で少しでも恩返しができればと、業務では県内の外国人向けに計画停電の情報などを率先して発信しました。個人でも宮城県気仙沼市でのガレキ撤去に参加し、チャリティー募金も実施しました」
国際交流員としての任務が終わってからは、一度カナダに帰ったとMandyさん。
Mandyさん「国際交流員としての期間満了後は、カナダに帰国し就職をしました。ですが日本を離れてみて、改めて日本文化の素晴らしさや日本の方々の暖かさを実感したんです。『日本でさらに自分の可能性を広げたい』と思うようになりました」
「また日本で働きたい」。Mandyさんはその思いから、日本での転職活動を始めます。
Mandyさん「転職時の仕事選びにおいて、私が大切にしてきたのは『自分の長所でもある他文化への理解や多言語スキルを活用できること』と『グローバルな視点を持ち、多様なバックグラウンドの人々と刺激しあえる環境で働くこと』でした。就職活動では主に外資系企業を中心に検討しました」
その中でなぜブルームバーグに惹かれたのでしょうか。
Mandyさん「理由は大きく分けて3つあります。まず私はもともとパーソナルファイナンスに興味があり、ブルームバーグが金融分野に特化したサービスを提供している点が非常に魅力的でした。ここで働くことで金融の知識をより深められると感じました。次に、東京にいながら多国籍のメンバーと共に仕事ができる環境が、自分の言語スキルや国際的な視点を活かせる場として理想的だと思いました。さらに、面接を通じて出会った社員の皆さんの雰囲気や、会社の透明性の高さ、そして企業利益の大部分がブルームバーグ・フィランソロピーズの社会貢献活動を通して社会に還元されていることを知り、会社の理念にも共感しました。正直なところ、美味しそうなパントリーのお菓子も魅力のひとつでしたね(笑)。入社してもう9年半になりますが、常に新しい発見があり、毎日会社に行くのを楽しみにしています」

ではブルームバーグでのMandyさんのお仕事内容について教えてください。
Mandyさん「最初に配属されたのは技術サポート部です。弊社の主要製品であるブルームバーグ端末に関する技術的な問題を解決する仕事を担当しました。電話、チャット、メールを通じてお客様とリアルタイムでやり取りを行い、問題を迅速に解決し、できるだけ早く端末を再び使えるようにサポートすることを心がけました。 次に経験したのはカスタマーサポート部門でした。ここでは、お客様が最初に連絡する窓口として対応し、必要に応じて社内の適切な部署へつなぐ役割を担いました。この部署で、お客様対応のスキルを磨くとともに、社内のさまざまなチームと連携する機会を得られたことで、社内ネットワークを広げることができました」
現在はどんなお仕事をされているのですか。
Mandyさん「現在の部署であるエンタープライズ・テクノロジーには5年前に異動し、お客様の金融業務の自動化を支援するシステムの接続・統合を実装する仕事を担当しています。そして3年前からはチームリーダーとして、アジア地域にいる8名のチームの成長をサポートしながら日々の業務に取り組んでいます」
異なる部署を経験する中で、共通点を見つけたとMandyさんは言います。
Mandyさん「共通しているのは『チームメンバーが惜しみなく助け合う文化』です。例えば、技術サポート部に配属された当初、私は技術の知識が十分にあるとはいえる状況ではありませんでした。しかし、チームメンバーが基本から丁寧に教えてくれたおかげで、スムーズに業務を習得できました。最初にお客様対応を行う際には、裏でチームメンバーがサポートしてくれたため、非常に心強かったのを覚えています。当時の同僚たちは現在それぞれ異なる部署で活躍していますが、今でも交流があり、新しい部署の情報を共有し合える貴重なネットワークとなっています。また、これまで複数の上司のもとで働いてきましたが、特に印象に残っているのは『成長するには、目的意識を持ち、自分の強みを磨き、専門分野のSME(Subject Matter Expert)を目指すことが重要』だと教えられたことです。ただ上司からの指示をこなすのではなく、自分のスキルを高め、周囲をサポートすることで、社内での信頼やブランドを築くことができると学びました。実際、私がキャリアアップできたのは、この考え方を実践したからだと思います。現在、私自身がチームリーダーとして、チームメンバーの成長をサポートする立場になりました。彼らが自分の『ブランド』を築けるよう、成長の機会を提供することを意識して取り組んでいます」
Jackさん同様、Mandyさんも社内コミュニティ「Bloomberg Women’s Community(通称BWC) 」の共同リーダーを務めています。こちらはどういったコミュニティなのでしょうか。
Mandyさん「このコミュニテイでは『Speak Out』『Level Up』『Become More』をテーマに、社員のキャリアやライフステージに合わせたサポートを提供しています。例えば、健康面では、卵子凍結や不妊治療、乳がんの早期発見に関するワークショップを開催し、社員が情報を得て行動を起こすきっかけを作っています。また、キャリア応援としては、ランチ勉強会を定期的に開催し、経験豊富な社員が自身のキャリア形成についてアドバイスを共有する場を設けています。こうした取り組みにより、性別にかかわらずコミュニティへの参加も増え、職場全体の働きやすさ向上につながっています」
Mandyさんはなぜ、そのコミュニティのリーダーを務めようと思ったのですか。
Mandyさん「私自身、この社内リソースを活用したことでネットワークを広げ、キャリアアップに役立つアドバイスを実践することができました。入社当初にこのようなリソースを知っていれば、もっと早くスムーズに仕事に慣れることができたかもしれない。そう思い、より多くの新入社員にこのリソースを届けるために、BWCの共同リーダーとして積極的に関わることを決めました」
BWC以外のコミュニティにも参加しているとMandyさんは言います。
Mandyさん「BWC以外にも社内には有志で構成する様々なコミュニティがあり、『Bloomberg Women in Technology(通称BWIT)』という技術分野で活躍する社員をサポートするコミュニティーにも参加しています。今後も、チームリーダーとしてメンバーの成長を支援し、社内コミュニティの活動を通じて、より多くの社員がキャリアアップできる環境を作ることに貢献していきたいです」

続いて、ブルームバーグの社風や姿勢についてお聞かせください。Mandyさんは、どんな点において共感されていますか。
Mandyさん「私が特に共感しているブルームバーグのインクルージョンの価値観は『Inclusion of all, Exclusion of None』 という考え方です。これは、誰も排除せず、すべての人を受け入れるというシンプルでありながら非常に重要な理念であり、私の経験とも深く結びついています。 弊社では、多様なバックグラウンドを持つ社員が集まり、それぞれの個性や強みを活かして働くことができる環境が整っています。私自身、中国生まれ、カナダ育ちという背景を持ち、さらに日本での留学・就業経験を経て、異なる文化や価値観の中でキャリアを築いてきました。こうした多文化的な視点を活かせるのは、まさに弊社のインクルージョンの姿勢が根付いているからだと感じています。たとえば、私のチームにはアジア各国からメンバーが集まっており、それぞれの文化的な違いを尊重しながら協力しています。リーダーとして、異なる言語や働き方のスタイルを理解し、全員が意見を出しやすい環境を作ることを意識しています。これも、弊社の『Inclusion of all』という価値観が社内にしっかり根付いているからこそ実現できていると感じています」
「Exclusion of None」=誰も排除しない。その価値観が根付いていると感じることはありますか。
Mandyさん「『Exclusion of None』という考え方は、社内制度や働き方にも反映されています。私は社内コミュニティ、BWCの共同リーダーとして、キャリア支援やライフイベントに関するサポート活動を行っていますが、この活動には性別を問わず多くの社員が関わってくれています。BWCでは、アライも巻き込みながら、全員が働きやすい環境を作ることが大切だと考えています。たとえば、育児や介護に関する社内サポートは、決して女性だけのものではなく、すべての社員が利用できるべきです。このような視点が会社全体に浸透していることに、私は大きな共感を覚えます。 弊社のインクルージョンの姿勢は、キャリアの成長機会にもつながっています。社内には多様なロールモデルが存在し、異なるバックグラウンドを持つ社員がそれぞれの強みを活かして活躍しています。このような環境だからこそ『自分の可能性を制限せず、もっと成長できるはず』と思えるのです」
では最後に、さまざまな経験をしてきたMandyさんから、読者の皆さんへお伝えしたいことがあれば、お願いいたします。
Mandyさん「もし『どんな仕事を選ぶべきか』で迷っているなら、まずは『自分はどんな人生を歩みたいか』を考えてみてください。その答えが見えてくると、どんな環境で、どんな仕事をすれば自分らしくいられるのか分かり、納得できるキャリアを築くことができます。そして、一度選んだ道がすべてではありません。私自身、いろんな職種を経験してきました。『最初の選択が正解だったか』ではなく、『どんな経験も自分の成長につながるものにできるか』が大切です。自分の軸を持ちながら、柔軟にチャンスを生かし、変更を恐れずに進んでいってほしいと思います」