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Update on :2021.09.29

受け入れ合う文化が根付いているから、自分らしく自信を持って働ける

岡本百合さん/ト・カイさん
ブルームバーグL.P.
アナリティクス部門/エンジニアリングチーム

アメリカに本社を置き、世界の金融経済に関するニュースやマーケットデータなどの金融情報を発信する、大手総合情報サービス会社、ブルームバーグL.P.。同社ではダイバーシティとインクルージョン(以下、D&I)を、全社員が自分らしく働くための行動規範に定めています。多様な人材を包括する“インクルージョン”のメッセージを広めるために大きく貢献しているのが、社員たちが自発的に参加し、作りあげている「ブルームバーグコミュニティ」という文化。今回は東京オフィスで働きながらコミュニティ活動にも尽力する、岡本百合さんとト・カイさんのお二人に同社やD&Iに対する想いの原点と、昨今の活動について話を伺いました。

 

岡本百合さん

東京都出身。高校進学時にカナダへ留学し、大学卒業後の2013年にブルームバーグへ入社。
アナリティクス、セールス部門を経験し、現在はアナリティクス部門のチームリーダーを担当。入社当初から「ブルームバーグ ウーマンズ コミュニティ」(BWC)の活動に参加し、2020年より東京オフィスの共同リーダーとして、社内の女性活躍推進を中心としたD&I活動に関わる。
 

誰にでも分け隔てなく接する
社員の姿勢に強く惹かれた

 
新卒で入社し、今年で8年目。岡本さんがブルームバーグを志望した理由のひとつは、グローバルな環境で多様な文化を持つ同僚と一緒に働きたいと思ったこと。そう考えるようになったのは、高校・大学時代をカナダで過ごし、文化の多様性に触れたことが大きいそうです。就活時に何よりも重視したのは、D&Iを大切にしている環境であること。その背景には、シングルマザーで自分を育ててくれたお母さんの影響があるそうです。

岡本さん「昔は今よりもシングルマザーが珍しかったこともあり、子供のころから母が職場と家庭の両立で苦労しながら働く背中を見てきました。当時から感じていた、「性別や立場などのバックグラウンドにとらわれず、自分らしく働けたらいいのに」という想いは、現在取り組んでいる社内コミュニティ活動にも繋がっています」

そんな岡本さんがブルームバーグへの就職を志したのは、大学時代にとある企業でインターンをしていた時。同社の社員と交わした何気ないやり取りからD&Iを大切にする企業文化に触れ、感銘を受けたことにあるといいます。

岡本さん「その企業にはブルームバーグの営業の方が頻繁に来社していたのですが、みなさん何の権限もない、ただのインターンである私にもよく話しかけてくれていたんです。「インターンのお仕事は大丈夫ですか?」、「ブルームバーグの商品はちゃんと使えていますか?」と、分け隔てなく気にかけてくれることがすごく嬉しくて。こんな人たちがいる会社なら私も働きたいと強く思うようになりました」

しかし当時は、「正直なところ、誰もが働きやすい会社なんて存在しないだろうなと思っていたんです(笑)」という岡本さん。半信半疑な部分もあっただけに、実際にブルームバーグに入社してからは、いい意味で驚きの連続だったといいます。

岡本さん「一番は、本当にバックグラウンドで人を判断しないんだ!ということですね。当社では「あなたは一年目だから」、「LGBTQだから」、「女性だから」などに関係なく、いいアイデアがあれば誰もが考えを発信できるんです。しかも上司や先輩をはじめとする周りの人たちにフィードバックもしてもらえる。こんな環境はなかなかないじゃないですか。私自身も入社当初から自分らしく働くことができて、すごく嬉しかったですね」

“恵まれている環境で働ける”という喜びをもっと多くの人に伝えたい。このこともD&Iの活動に積極的にかかわっていこうという、想いの原動力になっているといいます。

岡本さん「BWCやBPROUDなどの社内コミュニティでの活動を通して、社内風土にD&Iをより深く浸透させ、D&Iの思いを後輩たちにどんどんつなげていきたいです」


 

「キャリアを応援=出世がすべて」ではない

 
現在はアナリティクス(カスタマーサポート)の部署でチームリーダーを務める一方で、2020年からはブルームバーグウーマンズコミュニティ(BWC)の共同代表としても活動。業務外の空き時間を利用し、東京のオフィスをもっと働きやすくするためのアイデアを話し合ったり、リモートでセッションを行ったりするなど、女性活躍推進についての取り組みを進めています。

岡本さん「有志のボランティアベースで活動しているコミュニティなので、具体的なゴールはないのですが、メンバー内での目標は定めています。そのひとつがキャリアを応援することです。昇進することがすべてという意味ではありません。重視しているのは、女性にとってもっと働きやすい環境を整えていくためにはどうすればいいか、という部分です。

次にフォーカスしているのが、社内のネットワークづくり。同じオフィスの人となかなか話せないコロナ禍において、「どうやったらブルームバーグらしい社風や社内文化を保っていけるのか?」など、自分たちに貢献できることを考えています。それからBWCだけの課題ではないのですが、近年では社員のみなさんが自分らしく働き続けるためのメンタルヘルスケアについても、非常に重要視しています」

アナリティクス部門のメンバーは、様々な国籍・年齢・性別の人材で構成。現在はほぼリモートワークだが、海外オフィスで働く同僚ともほぼ毎日やり取りが行われているなど、グローバルな職場環境である。
 

近年の取り組みで強く印象に残っているのは、一般的にマイノリティとして過小評価されているグループに属する社員に人材育成の機会を提供する「GOAL 1.0」というプロジェクト。同プロジェクト名のゴール“GOAL”は、「グロース(成長)、オポチュニティ(機会)、アクセス(繋ぐ)、リーダーシップ」の頭文字をとってつけられたそうです。

岡本さん「例えば、女性社員を対象に開始したプログラムの場合は、キャリアを築いていくうえで必要なプロフェッショナルとしての自信を育て、自分のキャリアの夢や目標に向かって進んでいける環境を作ることを目的にしています。そのうえでも欠かせないのが、先ほどお伝えした社内ネットワークの拡充です。この取り組みでは、参加者が各自の目標達成のため自分に適したメンターを社内で見つけたり、仲間と対話したりするための基盤を作っています」

各地域のローカル人材の育成を目的とした「ローカル人材育成プログラム」にも力を入れていることのひとつ。

岡本さん「アジアやヨーロッパというくくりの中でも、地域ごとに文化などのニュアンスが微妙に違うんです。それに紐づく課題を理解しあうことも、グローバルな環境で自分らしく働くために必要なことだと捉えています。日本のオフィスでも異なる国籍やバックグラウンドを持つ同僚同士で、それぞれの経験と課題、様々な文化的背景を学びあえる方法を模索しています。この取り組みがお互いを理解する機会に繋げていけたら嬉しいです」

 

最後に、理想の生き方を軸に仕事を選びたいZ世代に向けてメッセージをいただきました。

岡本さん「私自身、就活をしているころは不安でいっぱいでした。面接官に好かれなかったら、オファーされなかったらどうしよう?、うまく入社できても仕事や環境になじめなかったらどうしよう?と。でも、今となっては、「なるようになるから大丈夫」と、当時の自分に言ってあげたいです(笑)。もし、面接に落ちたり、環境になじめないときは、自身の成長の機会としてとらえてみてください。決して、「自分はダメなんだ」と思わないでほしいです。
自分らしく思ったことを正直に伝えながら、すべての人に好かれるというのは難しいですし、合わない環境があるのも当然です。そこで無理をするくらいなら、自分に合う職場や環境をどんどん探してみてください。自分がどのような職場で働きたいかわからない場合は、志望する企業を含め、いろいろな会社の人と話してみてください。少しずつかもしれませんが、きっと自分にしっくりくるイメージがつかめてくると思います」

 

ト・カイさん

イギリス、ロンドン出身。イギリスの大学を卒業後、2008年にエンジニアとしてブルームバーグに入社。2012年からはエンジニアリングチームリーダーを務める。2014年に来日し、引き続きエンジニアのチームリーダーとして活躍。東京オフィスの「LGBTアンド アライ コミュニティ」(BPROUD)の共同リーダーとして、社内のLGBTQ活躍推進としたD&I 活動に関わる。
 

同社の慈善事業に助けられ
自分も誰かの役に立ちたいと思った

 
カイさんが就活時に重視したのは、「地元・イギリスの地域社会に馴染んでいる企業で働いてほしい」というご両親からの強い希望。彼のご両親は、1980年代に難民としてロンドンへ移住しました。しかし、移民であることから地域のコミュニティになじむまで、とても苦労したそうです。「だからこそ、息子である私には、仕事を通じて自然と地域に溶け込んでもらいたいと思ったのでしょうね」とカイさんはやさしい笑顔で当時を振り返ります。

ブルームバーグを志望したのは、ご両親が営む飲食店の常連さんを通じて同社がプログラマーの求人を出していることを知ったことがきっかけ。入社前から「ブルームバーグはいい企業だ!」という確信があったことも後押しになったそうです。

カイさん「私が育ったイーストロンドン(ロンドンでも貧困層の多い地域)の学校では、均等に学ぶ機会を得られない学生がたくさんいました。そんな彼らに向けてブルームバーグが行っていたのは、英語の本を読み聞かせる事業。英語が読めない子と一緒に本を読むという、とても簡単なことではありますが、私自身もすごく助けられたんですよね。その経験を機に、同社が生活に困っている人たちの慈善事業に力を入れている姿に強く惹かれるようになっていきました。面接はあまり得意ではなかったのですが、面接官の方があたたかく出迎えてくれたうえ、質問時も答えやすいようにリードしてくれて。そのおかげもあって、新卒でロンドンオフィスに入社することができました」

2021年で入社13年目。7年前には東京オフィスへ移動し、現在はエンジニアリングチームのリーダーとして活躍しています。メインはエンジニアの仕事ですが、岡本さんと同じようにブルームバーグコミュニティの活動にも従事。数年前からは、「BPROUD」という、LGBTQ+アライコミュニティの共同代表を務めています。

カイさん「ロンドンオフィス時代も同コミュニティのメンバーでしたが、アクティブに活動するようになったのは東京へ来てから。ロンドンにいたころはオフィスの外にLGBTQを支援するアクティビティがたくさんあったので、個人での活動を優先していたんですよね。だけど、東京では日本語に不慣れなこともあり社外での活動を探すのが難しかったので、BPROUDに参加するようになりました。社内でも確立されたコミュニティであることや、言語の壁がないこと、活動内容の質が高いことも、参加を決めた理由です」

BPROUDが定めているゴールは3つ。ひとつは、アライの方々に積極的に参加してもらうこと。2つめは社員全体のLGBTQが抱える課題に対する認識を上げること。そして3つめは、コミュニティとしての連帯感を高めること。

カイさん「私たちがとても大切にしているのは、コミュニティという居場所を作ることです。当事者の社員が安心できる居場所があれば信頼感も育まれますし、それぞれが自分らしく生きるための環境や気持ちを整えることもできる。そしてゆくゆくは、誰もが日々気持ちよく仕事ができるという部分にも繋がっていくと思っています」

 

近年では、全社員の業務をより円滑に遂行できるようにするためのプロジェクトにも参加。チームの仲間とアイデアを出し合い、視覚障がいのある社員が使いやすいようにダッシュボードの改良を行った。
 

インクルーシブな環境が
自分を成長させてくれた

 
近年のBPROUDの活動で、手ごたえを強く感じた取り組みは2つ。ひとつは、2020年に社員全員を対象にリモートで開催した「オープンデイ」という取り組み。自分たちでテーマを決めて自由に話し合うことを目的としたイベントで、現状の平等性や不平等について話し合ういい機会になったそうです。

カイさん「一番感慨深いのは、“平等性”というテーマをみんなで選べたこと。参加者の方々といろいろな意見をシェアして、多くのことを学びあえたのもよかったです。私自身、LGBTQに対する社会全体の意識はまだまだ低いと感じているんですよね。だからこそ当事者の方が抱える葛藤や不平等だと感じた経験を社員の方々に共有できたこの会は、皆で信頼関係を築き合ううえでもとても意義のある時間になったと実感しています」

もうひとつは、8月に行われた「OUT&B-PROUD」という催し。内容は、LGBTQの方が自身のセクシュアリティをカミングアウトした時のエピソードを、少人数のグループ単位で打ち明けるというもの。

カイさん「カミングアウトというのは、当事者以外にはあまりわからない経験だと思うんです。当事者の方たちが各自のストーリーをシェアすることで、LGBTQの人たちがどういう思いで生きているかという認識も高められたのではないかと思っています」

 
 

D&Iに関する啓蒙が広く浸透しやすいのは、社員たちが長年培ってきた社内風土があってこそ。いち社員であるエンジニアとして、そしてチームリーダーやコミュニティ代表として、カイさんが特に共感しているのは、インクルージョンが企業文化として成り立っているところだといいます。

カイさん「普段の会話はもちろん会議の決定事項などでも立場や役職に関係なく、様々な人たちと意見を持ち寄り話し合うことで解決策を探すというプロセスが風土にしっかりと根付いている。すべての意見やアイデアにはいいも悪いもないという当社の考え方は、私がエンジニアとして仕事を進めるうえでも大切にしていることでもあります」

自分の意見を発信したり聞き入れたりしてもらえるのも、インクルーシブな環境だからこそ。この“受け入れる”というやりとりは、「社員が自信を育み、成長するためにも大切なことである」とカイさんは語ります。

カイさん「入社したばかりの頃の私は、ネガティブなフィードバックを自分への攻撃や非難と捉えがちでした。しかし、誰に対してもフラットに接するメンバーと対話を重ねるうちに、「これは自分が成長するためのアドバイスなんだ」と前向きに考えられるようになってきたんです。相手の言葉をまっすぐ受け止められるよう成長できたのは、インクルーシブな環境で過ごしてきた恩恵でもあると思っています」

 

最後に、理想の生き方を軸に仕事を選びたいZ世代に向けてメッセージをいただきました。

カイさん「仕事を探すといっても、自分が何を求め、何がしたいのかわからないこともありますよね。特に若い方は自己が確立しておらず、自分自身がどういう人間かわかっていない方も多いでしょうし。なので、思い切って冒険してしまうのもアリだと思います。「こういう環境や条件じゃないと合わなそう」という考えにとらわれるよりも多少のリスクをとって、考えてもみなかった分野に飛び込んでいく。もしそこが働きにくい職場だとしたら、自分を犠牲にして何年もいる必要はないし、転職という選択肢もありますからね。もちろん会社と戦うのも方法のひとつですよ。ただ、「自分らしく働ける」という部分は妥協しないでください。自分らしくいることは自信やいい仕事、ひいてはいい人生につながりますよ!」
 





企業情報:Bloomberg L.P.