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Update on :2024.02.28

「自分らしい働く」を探す旅(後編)

宮津 藍里 さん / 福嶋 剛 さん
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 / アクセンチュア株式会社
金融サービス部門 Business Transformation Manager / テクノロジー コンサルティング本部 アソシエイト・マネジャー

今回のトークセッションのキーワードは「キャリアジャーニー」。学生時代、就職、転職、カミングアウト……社会人の先輩たちは、それぞれの瞬間をどのような気持ちで迎えていたのでしょうか。EY Japanの宮津さん、アクセンチュアの福嶋さんにお伺いしました。



カミングアウトって絶対に必要?


(薬師)
ありがとうございます。これまでのお仕事でとか、アクセンチュアさんのお仕事で、どんな出会いがあって自分をどう変えていったのかを教えていただいても良いですか?

(福嶋)アクセンチュアで出会った人たちには、皆ポジティブなイメージを持っています。スタッフレベルでは経営層まで声を届けることって中々難しいことだと思うんですけれど、LGBTQアライ・コミッティの活動をしていることによって、その人たちとの繋がりも出てきました。会社で会うと「最近どうよ」とか「何かあったらすぐに言ってね」って毎回言ってもらえるんです。

アクセンチュアは全国各地にオフィスがあります。北は北海道から南は熊本まで、各地の方から「東京だけじゃなくて、こっちでもアライコミュニティ活動はできないの?」と言われることがあります。札幌レインボープライドへの協賛が決まっていますし、大阪で実施されるレインボーフェスタ2023にも協賛させていただきます。九州レインボープライドへの協賛も今調整しています。もう終わってしまっていますが、6月に実施された名古屋レインボープライドにも協賛をして、名古屋拠点の人たちと一緒にパレードに参加しました。I&Dの活動って東京に特化していると思われるんですけど、ちゃんと日本全体として盛り上げていこうよという思いを感じます。

(薬師)ありがとうございました。宮津さんにも同じ質問をしたいと思うんですけど、人生の中で価値観を変えるような出会いってありましたか?

(宮津)私は前職で嫌な思いをして、EYに転職しました。EYに入社して、LGBTQ+当事者とアライのコミュニティ「Unity」に入って色んな活動をしていく中で、職場の中でオープンにしている先輩方を見てきたというのが、大きかったなと思っています。自分のセクシャリティを悪いとも思っていないし、それは私の一部だから認めてねっていう姿勢の人が多かったので、それが私の価値観に影響を与えているなと思います。あとこれは私が勝手にありがたいなと思っていることなのですが、EY JapanのCEOの貴田がゲイであることをオープンにしているので、安心感があって、自分らしく働けているのが大きいかなと思います。

(福嶋)
日本のCEOでゲイであることをオープンにしているのは1人だけなので、私自身もすごく心強いし、ロールモデルだなと感じています。

(宮津)
実際お会いしたときも、すごくエネルギッシュな方でポジティブなエネルギーがいっぱい出ていて、「こういう風になりたいな」と思わせてくれるのがすごく魅力的でした。

私から福嶋さんにご質問させていただいても良いですか?うちの業界って、チームとして働くことが多いと思うんですね。そういったときに私たち以外のメンバーが、ヘテロセクシャルであることがすごく多いと思うんですよ。当事者じゃないメンバーがチームの中に多い中で、周りの姿勢だったり、私たちへの感覚って、どういうのがやりやすい、働きやすいかというのを是非聞いてみたいなと思います。

(福嶋)ありがとうございます。LGBTQ+の啓発本なんかを読んでいると、カミングアウトをされたら必ず「ありがとうと言いましょう」とか、そういったことが書かれていることが多い。それって特別視をされているような感じがして、私はちょっとイヤなんです。さっきも言った面接をしたときの「だから何?」とか、友人にカミングアウトをしたときにも「ごうちゃんはごうちゃんだから、そのままでいいんじゃない」とかって言われたのがすごく嬉しくて。

好きになる性別が違うからといって、何か変わることはありません。カミングアウトをしたときに、個人として、福嶋剛として見てくれれば嬉しいなと思いますね。私は人事システムの導入などのご支援をさせていただいているので、「性別欄はどうしますか?」とかっていうのが、日常的にある環境にいます。そういったところでも、「LGBTQ+の観点からはこういう風にしたほうがいいですよ「という話ができたり、お客さんから「アクセンチュアさんはどんなLGBTQ+の活動をしているんですか?」という問い合わせが来たり。お客様やプロジェクトメンバーから、「LGBTQ+に関しては福嶋剛に聞けば大丈夫だよね」と思ってもらっていることは嬉しく思っています。

コンサルティングファームの従業員は、それぞれ色んなスキルや強みを持っていて、それを掛け合わせてクライアントに対して何かしらの価値提供をしています。最近プロジェクトメンバーと話をしていて、「これってアベンジャーズみたいだよね」って。私は空を飛べる、私は火を出せるとかと同じように、「ゲイであることはひとつのスーパーパワーであるかもしれないよね」みたいな話をしました。特別だけどステキなものとして、捉えてくれると私は嬉しいなと思います。宮津さんはいかがですか?

(宮津)私は初対面でバイセクシャルであると話すようにしています。先ほど福嶋さんが「ありがとうと言うのがマニュアルに載っていて」というお話をしていましたが、私自身は「プライベートのことなのに話してくれてありがとね」と言ってくれたのが嬉しかったんですね。自己開示したことに対して、受け入れてくれたのが嬉しくて。EYの中では「あ、そうなんだ」という淡白な方と「シェアしてくれてありがとう」と言ってくれる方の2択しかないので、うちの業界の人は、今まで自分が触れたことの無い価値観だったり、キャラクターを飲み込む順応性が高い人が多いのかなって思います。福嶋さんのお話を聞いていてもそう思うのと、私の周りを見ていてもそうなのかなって思いました。

(福嶋)でもカミングアウトについては「将来的にはやらなくてもいいことなのかな。でも今は可視化するために必要なのかな」と思っています。だから、できる環境の人ができるタイミングで、できる範囲ですればいいのかなと思っています。

私たちは「ゲイなんです」「バイセクシャルなんです」ということを、特別なものとしてカミングアウトしています。でもヘテロセクシャルの人たちがしている「嫁が、旦那が~」という話って、プライベートなことであって別に特別じゃない。今はまだカミングアウトの必要がある過渡期なのかなと思いますが、将来的にはしないでもいいような状況になれば嬉しいなと思っています。

(宮津)当たり前のこととして、話すのも話さないのも本人の自由ですよっていう風になれば一番良いですよね。

(薬師)カミングアウトの必要性ってすごく良いトピックだなと思っています。というのも今回はたまたまLGBTQ+の属性をオープンにしている3人になりましたが、よく「カミングアウトをしないと、フルオープンじゃないと自分らしく働けないんですか」と就活生から聞かれるんです。でも、全然そうではない。やっぱり自分が安心だとか安全だとか思える範囲は人によって違うし、環境によっても違う中で、「どこが自分にとってセーフなのかな」「働きやすい範囲って何なのか」を模索していくことが重要なので、カミングアウトしないといけないでもないし、しなければハッピーに働けないでもない。それをあえてここで触れられたというのが、すごくいいことだなと思いました。

(福嶋)まさにその通りで、今同じ組織にいる人から相談を受けていいます。「カミングアウトはしたくないけど、福嶋さんには言ってみました」とか「1人に言ったらちょっと心の荷がおりて、もっと言いたくなったんですけどどうしたらいいですかね?」とか。本当にカミングアウトできる人が、できる範囲でやっていってもらえるといいのかなと思います。しなくてもハッピーに働ける場所は必ずあるのかなと思います。

(薬師)LGBTQ+に限らず、全ての人が「実は…」って言った方が安心できるタイミングや内容があるし、それを言いたくないなってこともあるじゃないですか。実は子どもに障がいがあるんだとか、実はこういうことが不得意なんだとか。伝えておいたほうが働きやすいときに、伝えられる環境があるのがまさにダイバーシティ&インクルージョンとエクイティなのかなと思っています。そういう心理的安全がある職場というのは、誰にとっても働きやすいなということを再実感する時間でした。



LGBTQ+当事者でもアライになれる


(宮津)もう一個触れてもいいですか?私はWebミーティングの背景や、デスクトップの画像をレインボーにしているんですけれど、そうやって見せておくだけで周りの人が話しかけてくれる、聞いてくれるきっかけになるというのが大きいかなと感じています。ネックストラップを使っているのを見て嬉しかったという福嶋さんの話もあるから、そういう風に「自分はアライなんですよ」と目に見えるかたちで見せてくれるのはすごくありがたいことだし、大事なことなんじゃないかなって思いました。

(福嶋)アライってLGBTQ+当事者はなれないと思っているかもしれませんが、そうではない。私もアライですし、カミングアウトをしていないゲイの人たち、カミングアウトをしているけれど間もない人たち、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダーなどマイノリティ性を持っている人たちにとっても、アライでありたいと思います。アライ=ヘテロセクシャルの人たちだけ、シスジェンダーの人たちだけがなれるものではないと思うので、そこもポイントになるのかなと思います。

(宮津)仰る通りだと思います。やっぱり抱えている事情は人それぞれじゃないですか。それぞれきちんと耳を傾けて、支えられるようにしようとする姿勢とか、取り組みができるのが大事なんだろうと思いました。

(福嶋)そういう活動ができる土壌がお互いの会社にあるというのは素晴らしいですよね。

(宮津)コンサルティング業界はどこもこういう環境にあるのかな、恵まれているのかなと思います。これが恵まれているんじゃなくてどこでも当たり前になるといいなと思いますよね。

(薬師)ありがとうございます。すごくいいメッセージをいただいたなと思っています。最後に今日ご参加いただいている皆さんにメッセージをいただいて、自分らしく踏み出せる環境だったり、踏み出せる人が増えるなと思います。最後にメッセージをいただいてもよろしいでしょうか。

(宮津)自己開示をする前は不安に感じることのほうが多いと思うんです。受け入れられないんじゃないかとか、腫れ物に触るみたいな感じになるんじゃないかとか。心配に思うかもしれませんが、思っている以上に10年前の日本とは変わってきていて、普通のこととして受け入れてくれる人も業界も増えてきています。どうか不安に思い過ぎずに、自分らしさ全開で就活に挑んでもらえたらいいのかなと思います。

(福嶋)色んな状況があって、色んなバックグラウンドがあって、悩んでいる人はたくさんいると思います。私も悩んでいるうちの1人でした。でもその悩みに対してちゃんと向き合ったり、自己開示をしたりすることで、道が開けることも多くあると思っています。

今の場所だと自己開示が難しそうなら、その場所じゃなくてもいい。是非自分らしくいられる場所を探してみてもらえればなと思います。その場所がもしかするとアクセンチュア株式会社なのかもしれないし、EYさんなのかもしれません。興味関心を持っていただけたら、是非サイトなどを見てもらえると嬉しいなと思います。各地のプライドイベントにアクセンチュアとして出展・協賛させていただく機会も多くあるので、お近くにすんでいる場合は足を運んでみてもらえると嬉しいなと思います。就活生のみならず企業の方も一緒に、マイノリティ性を持つ方たちが働きやすい、生活しやすい世の中にしていくために、手と手を取り合いながら進んでいければいいのかなと思います。