diversity works > テーマを知る > ダイバーシティ推進の意義と未来(前編)
Update on :2023.04.06

ダイバーシティ推進の意義と未来(前編)

D&I、DE&I。その推進に取り組む企業は、ここ数年で急速に増加しています。それが「いいこと」「大事なこと」であることは広く認知されていますが、では具体的にどんな意義があるのでしょうか。
(2022年10月29日配信。動画はこちら

(中島)このトークセッションのテーマは、ダイバーシティ推進のリーダーたちに聞く、DEI推進の意義と未来です。

ダイバーシティ&インクルージョン、あるいはDE&Iと言われているこのテーマ。推進をすることは、どの企業にとっても大事なことだということがもはや常識になりつつありますが、なぜそれを進めるのかという意義や、それが進んだ先にどんな未来があるのかというところ、ぜひ生の声で語っていただきたいと思います。

ご一緒に進めさせていただく皆さんをご紹介いたします。
コカ・コーラボトラーズの木下梨紗さん、ソニーの森慎吾さん、野村ホールディングスの園部晶子さん、よろしくお願いします。

では、この4人でDEI推進の意義と未来を語っていきたいと思うのですが、まずは皆様の自己紹介をしていただこうと思います。木下さんからお願いしてよろしいですか。

 

木下梨紗さん
コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社
人財開発部長


99年に大学卒業後、米国保険金融AIGグループ・GE・米国半導体企業・米国大手エンターテイメント企業・コカ・コーラボトラーズジャパンにて、HRとしてRecruiting/C&B/Learning/ODを担当する傍ら、M&Aに伴うIntegration PJCT./Culture changeをリード。社外活動として、日本最大のHRネットワークである「日本の人事部」での講演登壇や勉強会講師。人材開発・パフォーマンスに関する世界最大の会員制組織であるATDのJapan理事を務める他、プロフェショナルコーチとして活躍中。

 

どんなシチュエーションにもコカ・コーラの商品を

 

(木下)はい、ありがとうございます。では私から、トップバッター始めさせていただきます。コカ・コーラボトラーズジャパンの人財開発部長をやらせていただいています、木下と申します。今日はよろしくお願いします。
私のチームには、三つの課があります。人財採用の課と人財育成の課、最後にもう一つダイバーシティ&インクルージョンの課。今この三つの課を見させていただいているという状況ですが、コカ・コーラボトラーズに入社したのは2020年になります。丸2年がたったところです。これまで、私自身いろいろな会社で人事の仕事をさせていただきました。ダイバーシティ&インクルージョンというものについて考え始めたのは2012年ぐらいからなので、8年以上ですかね。

まずは、今日私たちが、D&Iについてどんな位置づけを持っていて、そしてどんな取り組みをしているのかというところを語るにあたって、外せないポイントから紹介させていただきます。


「全ての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造します」。私たちは、これをミッションにしています。では、なぜそれがダイバーシティ&インクルージョンに関係あるのか。
全ての人にハッピーなひとときをお届けするといっても、いろんなシチュエーションの方たちがいますよね。そんないろんな背景を持った人たちが何かのタイミングで、「あ、じゃあコカ・コーラの商品を買いたいな、これがなきゃ始まらないよね」というふうに思ってもらう。

例えば、何か私たちがスポーツの試合に出たとしましょう。そのスポーツの試合で「すごくうまくいったよね。じゃあそれをみんなでお祝いしよう」となって、「じゃあ、みんなでパーティーしよう」となったとします。いろいろなスナックを買ってきたり、食べ物を作ったりして、横にこのコカ・コーラの商品がどんどんと置いてある。

こんなシチュエーションにかかせないようなものを考えていくためには、私たち自身が、多様な背景のある人たちで構成されていて、それぞれ違う価値観とか考え方を掛け合わせて、新しい価値を生み出だしていく、新しい商品というものを提案していく。それができないと様々な異なるシチュエーションの方たちにハッピーなひとときをお届けしていくことできないよね、ということで、私たちの会社の中でダイバーシティ&インクルージョンはものすごく重要なポイントだと考えています。


私たちの中で、このダイバーシティ&インクルージョンというものを、経営の中核をなす非常に重要なポイントに定めさせていただいています。
D&Iの課がハブ、中枢になりながら、会社の経営陣と実際の部門の取り組み、そして社員たちのそれぞれのボランタリーな取り組みが合わさって、より大きな成果を出していけるような、そんな姿を目指しています。

各部門から、D&Iに対して責任を持ってもらう代表の方を選んで来ていただいていて、2ヶ月に1回、全員でディスカッションをしています。そうすることによって、今どんな課題があるのかを一緒に考えて解決したり、自分のチームではこんな課題があるけれどどうやったらいいかな、というときに、他のチームのベストプラクティス、成功事例を聞きながら、じゃあ自分たちはもう少しこうしてみようかっていう新しい解決策を見つけ出す。そんなことをしています。

そしてEmployee Relations Group(エンプロイーリレーショングループ)という、社員たちのボランタリーな集まりとして、LGBTQ+アライの集まりであったりとか、女性のネットワークであったりとかを自分たち自身で組織を作って運営していく、そんなこともしています。

指標みたいなところも会社なので定めてはいますけれども、女性の管理職比率を上げていきましょうというところですとか、障がい者の方たちが働きやすい環境を作っていこうとか。あと最近は、育休、男性の産休も含めて様々な取り組みをしています。

(中島)ありがとうございます。では続いて、森さん、お願いしてもよろしいですか。

 

森慎吾さん
ソニーピープルソリューションズ株式会社
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進室 室長


人事、ダイバーシティ、採用等を担当。一人ひとりが会社とともに成長し活躍できる環境づくりに取り組み、ソニーの価値観に共感し、新しい価値をソニーに取り入れてくれる人を増やしていきたい。

 

一人ひとりの個、Special Youを大切に

 

(森)ソニーの森と申します。よろしくお願いします。まずは、ソニーがどんなことをやっている会社なのかというところも含めてお話をさせていただきます。皆さん、ソニーをよくご存知かもしれませんが、実は様々な会社があって、業界なども異なります。

もしかしたらエレクトロニクス製品のイメージがあるかもしれませんが、それだけではなくて、ゲームとかエンターテインメントとか金融とか、いろんな事業があるんです。そのため、いろんな人が集まってきます

いろんな人が集まってくると、やっぱりそこには自然と多様性が生まれていくし、これをどうやってソニーグループ全体の力にしていくかということを考えていかないとなりません。

それを一つに束ねているのが、ソニーのPurpose(存在意義)「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」。それをグループ全体でやっていくために何が必要なのかいうことを考えなきゃいけなくって。Value(価値観)には「夢と好奇心」「多様性」「高潔さと誠実さ」「持続可能性」が入っています。


たくさんのビジネスがある中で、ソニーはこの多様性をどうやって力に変えていくかということを考えています。古い資料に『設立趣意書』というものがあります。ソニーができたときに創業者が書いたものです。この中にも「一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置き、個人の技能を最大限に発揮せしむ」。今時使わないような言葉ですけど、つまりは一人ひとりの個をちゃんと見ていくということを、創業当時から考えていたんですね。

これを今風にまとめると、Diverse Sony。先ほどご紹介したようないろんな事業があって、いろんな人たちが集まってくるソニーという場の中で、一人ひとりの個、Special Youを大事にしていくこと、これができる環境を作っていくことがソニーの感動というものを生み出すというふうに思っています。


そして、ソニーのダイバーシティステートメント。こういったダイバーシティに関しては創業以来、しっかり取り組んできています。私も実は転職でソニーに入っているんですけど、ソニーだったら何か実現できることがあるんじゃないか、というふうに思って転職をしてきたんですね。そんなところも含めて、今日お話できればいいかなと思っていますのでよろしくお願いします。


(中島)ありがとうございます。森さんでした。続いて園部さんお願いできますでしょうか

 

園部晶子さん
野村ホールディングス株式会社
サステナビリティ推進室 室長


1991年野村證券入社。資産運用相談のパートナーとして5支店で勤務後、2010年より人事で健康経営の立ち上げに従事、2015年よりダイバーシティ&インクルージョン推進室長として女性活躍や働き方改革を担当、2019年より現職。

 

D&I推進のきっかけはリーマンショック

 

(園部)皆さんこんにちは。野村ホールディングスサステナビリティ推進室の園部と申します。

まずは私の自己紹介をさせていただきたいと思います。
私は、大学を卒業後に野村証券に入社をしてからずっと今まで同じ会社で働き続けています。長い間ずっと働いてはいますが、金融機関では大体3年から4年ぐらいで異動があります。地域も地方も違いますし、1回異動するたびに会社1回変わったぐらいのインパクト。そういう意味ではいろいろな経験をさせていただいているなと思っています。

過去のキャリアでは、まず支店5か店で営業職として18年間、お客様の資産運用のアドバイス業務に従事しておりました。その後2010年に人事に異動しまして、健康経営の立ち上げに携わり、2015年からは、ダイバーシティ&インクルージョン推進室というところで、女性活躍とかLGBTQ+とか働き方改革などを担当いたしました。2019年からは現職ということになっています。

現在の部署では、今日のテーマでもあるダイバーシティとか、あとは金融経済教育とか、環境対応とか社会貢献活動、そういったものに加えて、非財務情報、ESG情報とも言うんですけれども、環境ですとかあるいは社会など、会社のデータのディスクロージャーをしております。

プライベートではパートナーと高校1年生の娘、それから金魚6匹と暮らしております。
今日は登壇者の皆さんとのディスカッションの中でもいろいろと学んでいきたいなと思っていますのでよろしくお願いします。

ここからは当社の取り組みをご紹介させていただきたいと思います。
皆さんこのスライド、黒地が背景などを不思議に思った方はいないでしょうか。


これは、色弱の方、色の見分けがつきづらい方に配慮したスライドになっています。
今日は、ダイバーシティのイベントでもありますので、こういう心掛けを可視化するという上でも、このスライドを使っております。

野村グループは野村証券を中核とするグローバル金融サービスグループで1925年に設立し、まもなく100周年を迎えます。設立時は職員84名でのスタートでしたが、現在では世界36の国を超える国や地域でグローバルネットワークを有しております。従業員数が大体2万6千、7千名。グループで働く役職員の国籍が90カ国程度になります。

国内では全国で大体120の支店や営業所を持っており、個人のお客様だけではなく、事業会社、あるいは機関投資家のお客様なんかにも商品やサービスなどを提供しています。

弊社がダイバーシティに取り組むきっかけになったのは、実はリーマンショックのときだったんです。その当時リーマンブラザーズという大きな投資会社が危ない状態になったときに、野村がヨーロッパとアジアのビジネスを承継しました。

それまでは日本人だけのドメスティックな企業でしたが、人種も国籍も宗教も違う、さまざまな方が一斉に野村の仲間になって、こういう人たちと一体どうやって働いていったらいいのかということが当時すごくテーマになり、ダイバーシティという活動が始まりました。


ここから、野村のダイバーシティの考え方についてご紹介をしたいと思います。
実は今年の9月に、これまで推進しておりましたダイバーシティ&インクルージョンの方針にエクイティ、公平性を追加しています。

それと似た言葉で、平等、イクオリティという言葉があります。この平等というのは、全ての人に同じ支援や機会を提供すること。エクイティというのは、個人ごとの状況とかニーズに応じて最適なリソースや機会を提供して、1人1人が目標を達成できる公平な環境を作ることをいいます。

金融というのは、ものを作ったり販売したりしているわけではないので、人ありきなんですよね。野村グループの最大の財産である多様な人材は、まさに私たちの競争力の源泉でもあります。

社員1人1人が自分の持つ能力や個性を十分に発揮して活躍できるように、採用とか育成とか、配置評価処遇だけではなくて、あらゆる場面において公平な機会を提供することで、多様性のあるインクルーシブな職場作りを目指しています。


こちらが、各属性の課題に応じた主な施策になります。色々ありますが、3点ご紹介させていただきたいと思います。

まず1点目、「ジェンダー」のところですね。2030年までに、取締役の女性比率30%を目標として、30%クラブジャパンというのに参加しています。企業の意思決定層に、女性を含むマイノリティが入ることは非常に重要だと考えています。

続いて「治療」がんアライアワード。当社では2013年から始めたLGBTアライという活動があるんですけれども、これが様々なマイノリティのアライへと拡大してきています。
癌の方はLGBTQの方と同様に、課題が見えにくいという特性があります。そのため当事者の治療と仕事の両立を可視化して支援する取り組みというのを実施しています。

それから「LGBTQ+」ですね。2017年にトランスジェンダー対応ガイドラインというのを定めて、性別移行の支援ですとか、通称名、通称性の整備、お手洗いや服装など性自認に基づいて働くということを支援しております。

(中島)園部さんありがとうございました。今こうやってお聞きいただくとわかる通り、今回ご一緒させていただいている三名の方も、例えば関わっていらっしゃる業界とか、ご自身のキャリアだとか、今所属をされている部署や役目、本当に様々なんですよね。

DE&Iに取り組むことが重要なことだというのは、ある程度共通した認識として皆様持ってらっしゃると思うんですけれども、じゃあなぜそれに取り組むのかという背景を聞いていくと、実は思いだったり、どこに熱を持ってらっしゃるか1人ずつ違ったりするなということを私も感じています。

今日はせっかくなので、お集まりいただいた三名の方に、皆さん個人にとってのDE&Iとは何かを、投げかけてみたいなと思っております。経営戦略上、DE&Iが大事だと言われているけれども、個人にとって、あなたにとってのDE&Iの意義や重要性って、どんなふうに実感されているか、ぜひお聞かせいただきたいなと思っています。


はじめに園部さんからお話をお伺いしてもよろしいですか。

 

自分らしく生きることは、人をイキイキさせる

 

(園部)私の方からは二つ、エピソードを紹介させていただきたいと思っています。まず一つはですね、自分らしく生きるっていうことについてなんです。

数年前にトランスジェンダーの方が弊社に採用面接にきました。この方は生まれながらの身体の性は女性で、心の性が男性という方だったのですが、彼は最初、自分がトランスジェンダーであることは隠して就職活動されていたんです。

でも就職活動を進めていくにあたって、やっぱり働くって一生のことだと、一生世の中を欺いて嘘をついて生きていくのはつらいと。だから自分らしく生きたいという思いで、我々にカミングアウトをしてくださったんですね。

それを聞いた弊社のリクルーターが「まずは教えてくれてありがとう、一緒にこの先のことは考えていこうね」ってお話をさせていただきました。社内の中で研修をしているんですけど、カミングアウトを受けたら「ありがとう」ってまず言おうねっていう話をしているんですね。

話が途中になりましたが、その方が入社をして、都内の支店に配属になりました。その事前に支店長と、それから総務課長にお話に行って、その後全社員に対してLGBTQの研修をして。

4月1日、本人が初めて支店に行く日。その日には支店全員が自分はLGBTQの支援者であるアライですよということを示すステッカーを用意して、そのステッカーを自分のパソコンに貼って、本人を拍手で迎えました。

後から聞いてみたところでは、彼がその部屋に入ったときもう涙が出るかと思ったと。すごく嬉しかったっていう話をしてくれて、この会社に入って良かったというか、その先輩たちに何か自分もお返ししたいというような気持ちを話してくれています。

何が良かったかっていうと、自分らしく生きるっていうこと。こんなに人をイキイキさせるんだなっていうぐらい、もう見ると目の輝きがすごいんですね。ものすごく仕事も充実して、頑張っていて、例えば、アイディアコンクールみたいコンテストがあるんですけど、みんな一人一個出せばいいところを何十も1人で出してくれたり。本当に一生懸命頑張っているのがすごく見えて、私はいいなというふうに思っています。もう本当にこれは意義を実感した瞬間でした。

(園部)あともう一つの話は、自分の担当領域でのことです。今私はサステナビリティ推進室で、企業のSDGsとかESGの対応をしています。

チームは20数名なんですけれども、本当に多種多様な人の集まりで、ゲイの当事者の方もいらっしゃるし男性も女性もいるし、海外にルーツをもつ人もいるし、私みたいに野村でずっと働いている人もいれば、他の金融機関とか製造業とかからの転職の人、さっきのリーマンブラザーズからの人もいるんですよね。

業務は基本的にグローバルでのプロジェクトベースで、全社横断での対応が多いのですが、何をやるにしてもいろんな人の意見を聞けるというところはあると思います。このメンバーでなかったら、こんなに新しいことはできないし、こんなに変化の大きい時代に、野村として柔軟に対応できなかったなと思っているんですよね。

例えば気候変動一つとっても、欧州、ヨーロッパの方と、日本と東南アジアとでは全然考え方が違います。皆さんの意見を調整するのも大変ですが、様々な意見が聞けることは、逆に良い方向にも動いていると思います。

あとはDEIでいうと、日本はどちらかというと育児とか介護との両立支援みたいな話を出すことが多かったのですが、グローバルですと人種とか、特にエクイティの話なんかは、ずっと海外が先行してぜひともこれを方針としてやりたいというような話もしています。

日本の課題だけにフォーカスしないで、海外から見た日本など、俯瞰的な視点を持って取り組んでいけるっていうのはすごく私にとってありがたいなというふうに思っています。

(中島)園部さんありがとうございます。初めにお話いただいた社員の方のエピソードは、ご本人にもご了承いただいた上でシェアしてくださったということです。もちろん、職場の中でカミングアウトするかしないかを選ぶことができるのはご本人だけではありますが、そのご本人がカミングアウトをしたいと思ったときに、それをサポートしてくれる状態であるとか、カミングアウトした上で安心して、自分のままに働ける環境があると、本当に、この会社で働けていることって嬉しいなと思いながら、イキイキと、そしてのびのびとご活躍されているんだろうなということがエピソードからも伝わってきました。

そして、もう一つのエピソードは日々のご自身の業務の中でも、多様な価値観、多様な経験というのが集まっているからこそ、この変化の大きいなかを生き抜いていけるということを実感させていただきました。園部さん、ありがとうございます。では森さんはいかがでしょうか。

 

会社が、人が変わることがやりがい

 

(森)私はDE&I推進の仕事をだいぶ長くやっていて。最初のきっかけは、まったくダイバーシティという言葉すらなかった頃の時代の話です。ある人の雇用をしようと思ったときに、ある属性の人たちの雇用をしようと思ったときに、皆さん判で押したように同じようなことばかり言うんです。

「雇ってください。自分たちにできることなら何でもやります」って言うのですが、そうじゃないのではないかなと。

皆さん一人一人やりたいことだったり、考えていることだったりがあるはずなのに、なんでこの人たちはこんなことを判で押したように言うのだろうと思ったんです。

そこで理由や原因を調べたら、やっぱり社会がどうも変わってないぞということや、会社の制度がどうもその人たちを支援する制度になっていないぞということ。そういうことがすごくよくわかってきたんですね。

これがわかってきたときに、じゃあ、変えていくためには何が必要なのか。今より小さい会社じゃ駄目だと。大きい会社で、しっかりと社会に発信できるような会社で、物事を進めていかないと何も変わらんじゃないかというふうに思って転職をしました。

転職活動の際、この会社だったらというふうに思ったのが、ソニーでした。ソニーの元々の創業者が言っていた考え方などがあるからこそ入ったのですが、そうは言っても、日本にある会社なので、日本人の人たちが働いているわけです。

そうすると、やっぱりその社会全体の縮図みたいなところが、会社の中にあります。できているところと、できていないところ。これを一つ一つ丁寧に対応していくにはやっぱり時間もかかるし、やるべきこともいっぱいあるってことがわかったんですけれど、それぞれ1個1個潰していくっていうことが、すごく楽しくて。

やっぱりそれが社会に繋がったりとか。社員一人ひとりの個や、自分の元々持っているものが発揮できるような、そういうことができるようになっていく姿を見ていくことが、今、やりがいに繋がっているのかなと思います。

(中島)ありがとうございます。DEI担当のやりがいを聞かせていただけることって、思ったよりも少ないなと私は感じているので、私自身も、なるほどなと思わされました。確かに規模の大きな会社だからこそ持てる、社会に対しての発信力だったり、影響力みたいなところってありますよね。

(森)そうですね。多分、自分のいた前の会社だったら、今日のこの場にも呼ばれていない気がするし。こういう場に来て、こういう話ができるっていうこと自体が、今やっていることの意義や、いろんなエピソードに繋がっていくんじゃないかなって思っています。

(中島)ありがとうございます。これからどんな職場で働こうか考えている方も多いと思います。もちろんどんな規模の会社が自分にとってフィットするかは人によって違うと思いますが、会社を選ぶときの一つのポイントとして、社会に対してどんな影響力がある会社にいるとハッピーかな、やりがいを感じられるかなっていうことも考えていただけると、楽しいかなと感じました。

(後編へ続く)