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Update on :2023.09.12

いつまでも「かがやき」続ける社員・会社を目指す

橋本 博之 さん / 山田 奈央 さん
野村かがやき株式会社
横浜グループ

野村かがやきは、2020年1月に野村グループの特例子会社として認定を受けました。「障がい者雇用の促進と安定を通じて、共生社会の実現を目指す」を企業理念とし、東京都内および神奈川県内の4つの拠点において、社内郵便物受渡業務、電子化関連業務、研修センター運営スタッフ業務などを行っています。今回は拡大する電子化関連業務がメインの横浜グループのグループ長を務める橋本さん、2022年6月から社員として働く山田さんの両名にお話を伺いました。


橋本 博之さん(写真右)
野村かがやき株式会社
横浜グループ グループ長

野村かがやき・横浜グループのグループ長として、主に新入社員の採用や既存社員の定着支援業務を行う。また書面の電子データ化業務のノウハウの蓄積のため、そして社員のスキルアップのために、本社関連部署と連携を図り、業務拡大に務める。


山田 奈央さん(写真左)
野村かがやき株式会社
チームリーダー

横浜グループにある7チームのうち、1チームのリーダーとしてチームをまとめる。新入社員のインストラクターとして、指導、教育も務める。精神障がいの特性を持つ。

 

きちんと出勤し、仕事を覚え、一人前になっていく姿を見るのが喜び

 

まずお話を伺ったのは、横浜グループのグループ長であり、立ち上げメンバーの一人でもある橋本さん。橋本さんは、どのような経緯で野村かがやきに携わるようになったのでしょうか。

橋本さん「私は1984年に野村證券に入社し、主に営業店で勤めてきました。個人のお客様、法人のお客様に資産運用のご提案をしてきたんです。そんな中で、『今度こういう部署を立ち上げるのですが、どうですか?』と打診を受けた形です」

打診を受けたときは、どんなお気持ちでしたでしょうか。

橋本さん「障がい者のことも知らなかったし、関わる仕事をしたこともない。やっぱり、大丈夫かなという不安はありました。でも、そのお話を下さった方に『橋本さんはこれまで仕事がうまくいかない社員、みんなとなかなか上手く打ち解けられない社員なども教育して、一人前に育ててきた』『難しいお客様、厳しいお客様ともビジネスをやってきた。今までと同じです。橋本さんなら大丈夫ですよ』って背中を押してもらったんです。それで野村かがやきへの出向を決めました」

そして橋本さんは、発足当時のことをこう振り返ります。



橋本さん「電子化関連業務をする横浜グループを立ち上げるということは決まっていました。でも、決まっていたのはそれだけ。社員も私ともう一人しかいなかったし、オフィスには机とイスとパソコンと複合機しかありませんでした。それが2年前の4月のことです」

そういった環境で、橋本さんはまず何から着手したのでしょうか。

橋本さん「まずはコンプライアンスをしっかり整え、マニュアルを作りました。マニュアルは私たちが考え、本社の法務部や業務企画部にチェックをしてもらいました。彼らはマニュアルをみて、どこに欠点があるかを見つけるプロですからね。マニュアルができて、業務フローができて、採用を始めたのはそれからでした。当初入社してくれたのは8名。現在は26名にまで拡大しています」

橋本さんにとって、初めてとなる障がい者の方に向けたマニュアル作り。大変さはありましたか。

橋本さん「実は、会社に提出したマニュアルとは別に、実際に働く社員にはやさしい言い方をした手順書を作っていました。二段構えで準備をしたんです。特別な大変さは感じませんでしたが、障がい者の方だからと、はじめは丁寧に作りすぎてしまって。すべての漢字にルビをふったりしていました。でもそこまでしなくても自分でできる、十分理解してくれる。社員が働く様子を見て少しずつ改善していきました」

橋本さんが考え抜いて作成した手順書。手順書を基に仕事を覚えていく社員。1人1人が開梱から仕分け、スキャン、納品まで一通りの仕事を覚え、成長していく姿を見るのが、橋本さんの仕事のやりがいだと言います。



橋本さん「新入社員には、仕事を覚えてもらうよりも前に、もう一段階あります。それは、ちゃんと出勤してもらうこと。うちの社員は、一度も就労経験がないか、就労はしたが障がいゆえに退職してしまったかのどちらか。いずれにしても就労移行支援所に一定期間通って、やっと働けるメンタルと体力をつけてきた人たちです。そういった段階からちゃんと出勤して、仕事を覚え、一人前になっていく姿を見るのは、やはり嬉しいですよね」

しかし、社員が成長するからこそ生まれる悩みもあると橋本さん。

橋本さん「仕事を覚えレベルが上がると、今度はマンネリ化が訪れます。うちは書類の電子化という単一業務なので、今のところ仕事にあまり幅がありません。一度仕事を覚えてしまえば、新たな仕事に挑戦する喜びや、困難を乗り越える喜びが感じづらく、モチベーションを保ちづらいんです。いかに仕事にバリエーションを持たせるかが、今後の私の課題ですね。今は人が増え、新しい風が吹くことで輪を保っていますが、ある程度人数が増え、勤怠が安定したら、新しいことにもチャレンジしていこうと思っています」

では橋本さん、最後に、今後の目標を教えてください。

橋本さん「野村かがやきは、金融グループである野村グループの一員です。せっかくそういった企業で働くのであれば、金融の知識をつけてもらいたいというのがベースにあります。私は営業店時代、よく講演会の講師をしていました。そこで、『人生設計(ライフプラン)』において大切なのは、こころ、からだ、おかねの3K。この3つがしっかりすると豊かになれるという話をしていました。今うちで働いている社員は、決して体も心も強くなく、お金もあまり持っていない人が多い。そんな社員の皆に、野村グループとして3Kを提供したいんです。彼らにはぜひ豊かになって、『輝いて欲しい』と思っています」


対スキャナーではなく対ヒト

 

続いてお話を伺ったのは、昨年6月に入社した山田さん。山田さんはどのような経緯で、野村かがやきのことを知ったのでしょうか。

山田さん「私は野村かがやきに入社する前に、2年間就労移行支援所に通っていました。そこで野村かがやきのオンライン説明会が開かれて、初めて野村グループに特例子会社があることを知ったんです」

ではなぜ、山田さんは野村かがやきで働きたいと思ったのでしょうか。

山田さん「理由は大きく3つあります。一つ目は特例子会社であること。私は就労移行支援所に通う前に、10年ほど一般雇用の事務職として働いていました。でも残業やノルマがあって、負担に感じることが多かったんです。その経験から、配慮を受けながら働くということが、自分の中で重要だと思っていました。二つ目は通勤時間に関してです。過去に働いてみて、通勤で体力を消耗してしまうことを実感しました。満員電車やたくさんの電車の乗り換えは、自分にとってかなりの負担になります。通勤時間は1時間以内で、と考えていました。その点も野村かがやきはマッチしていました」

「障がい者の中には電車が苦手な方も多い」と同席した橋本さんも言います。

山田さん「三つ目は業務内容です。私は前職でも前々職でもスキャン業務に携わっていて、野村かがやきの業務内容に縁を感じたし、過去の経験を活かしたいと思いました。そして面接で、これからどんどん成長していく会社だと聞き、私もその一員として働きたいと思ったんです」

「でも」と、山田さんは入社当時の自分を少し恥ずかしそうに振り返ります。

山田さん「私の特性として、新しい環境に慣れるのに時間がかかります。入りたてのころは、橋本さんに『私、大丈夫ですか!?』って何度も何度も相談させていただきました(笑)」

「それが今やチームリーダーですからね」と橋本さん。橋本さんの言葉の通り、山田さんは今年の3月から、メンバーをまとめるチームリーダーを務めています。

山田さん「それでも仕事を続けられたのは、私がどうやったら働き続けられるか、どうやったら働きやすくなるかを橋本さんたちが考えてくれたからです。当時の私は、やることが頭の中でこんがらがってしまって、いっぱいいっぱいになっていました。橋本さんは、そんな私に先輩社員をマンツーマンでつけてくれたんです。そしてその先輩は、メモをとる時間をたくさん作ってくれたり、物事を細かく細かく説明してくれたり……皆さんのおかげで、半年ぐらいで私も職場に馴染むことができました」

3月からなったというチームリーダーは、どんな役割なのでしょうか。

山田さん「朝ミーティングをして、メンバーの仕事の割り振りを決めます。皆の体調や疲れ具合も考慮しないといけないので、難しいですね」

責任が増えた一方、チームリーダーになったことで、こんな嬉しい出来事もあったと山田さんは言います。

山田さん「チームリーダーとして、野村グループのある企業に見学に行く機会があったんです。横浜グループが電子データ化する書類(2,000箱以上)を保管している会社です。そこで、私たちがいつもスキャンしているものを、『こんな風に活用しているんですよ』と説明していただき、『ありがたいです』と感謝の言葉までかけていただきました。私はそれまで、自分の業務をスキャナーと向き合うものだとどこかで思っていました。でもそうではなくて、その先で人と繋がっているということを感じることができました」

では、現在の山田さんの夢や目標を教えていただけますか。

山田さん「特例子会社に勤めていて思うのは、やっぱり黙っていても理解してもらえないということです。多様性や個を大切にしようという世の中になってはいますが、まだ色々と打ち明けにくい状況だと思います。私自身も、障がい者手帳を持っているとか、障がい者枠で働いているということを、家族以外には中々伝えられていません。声を大にして言うことではないかもしれませんが、やはりお互いを認め合い、『皆違って皆いいよね』という世界になるといいなと思います。野村かがやきにしても、まだ言いたいことを言えない人、隠してしまっている人がいるような気がしています。皆でもっと言い合って、コミュニケーションをとって、お互いを理解していきたいですね」

最後に、山田さんから読者の皆様へのメッセージをお願いいたします。

山田さん「過去の自分を振り返ると、とくに具体的な目標もなく日々を過ごしていました。皆さんに『こうしたい』という軸があるとすれば、それだけでもとても素晴らしいことだと思います。思い通りいかない時もありますが、『こんなときもあるさ』と深呼吸してみることも大切です。もし具体的な目標がなくても、周りの人と話すことで気づくこともあります。自分が思っていることと逆の方向に目を向けてみるのも、新たな発見につながります。答えはひとつではありません。様々なことに目を向けてみてはいかがでしょうか」