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Update on :2022.06.24

すべての人が、自分の望む成長のための機会をつくっていく

中井陽子さん
日本マイクロソフト株式会社
執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長

日本マイクロソフト株式会社
執行役員 パブリックセクター事業本部
文教営業統括本部 統括本部長

中井陽子さん


セールスやマーケティング、本社でのコンサルタントなど多岐に及ぶRole(役割)を経て、2018年より業務執行役員 パブリックセクター事業部 文教営業統括本部 統括本部長に就任。2021年より執行役員。
文教領域の筆頭として、企業の領域から中小に至るまで、全カテゴリを跨いだインダストリーリーダシップを発揮し、GIGAスクール構想をはじめ日本全国の教育現場のデジタルによる変容を推進している。
 

「誰もが自分らしく働けるのが当たり前」という空気があった

 
中井さんがマイクロソフトを知ったのは学生時代。インターネット接続に必要なアプリケーションソフトを標準搭載し、OSの歴史を変えたといわれるPC「windows95」に触れたことがきっかけだったという。

「インターネットを通じ、世界中の出来事をデスクトップ上で知れることが、当時はすごく革新的だったんですよね。私自身は理系でもコンピューターサイエンスを学んでいたわけでもなかったのですが、世界を変えるようなすごいものを作っている会社で働いてみたいと強く思ったんです。すごくシンプルな動機でした(笑)」

入社後に配属されたのは営業にまつわる部署。営業経験もネットワークに関する知識もなかったものの、親身に仕事を教えてくれる先輩がいたり、新しい技術やテクノロジーなどを学べるコンテンツが充実していた。資格取得の推奨など、社員の学びをサポートする制度も後押しとなり、入社から2年後には自立して仕事をこなせるまでになったそうだ。
 
「短期間で成長できたのは、「新人だから」「女性だから」ということに関係なく、分け隔てなく仕事を任せてもらえたおかげでもあると思っています。一般的に、IT業界は女性比率が少ないと言われていますが、私が採用試験を受けた時の男女比は同じくらい。当時はまだD&Iという言葉を明確に打ち出してはいなかったのですが、「誰もが平等に働けることが当たり前」という空気がありました。だからなのか、入社して以来、ジェンダーバイアスを感じたことはないですね」
 
2008年にマイクロソフトの米国本社へ移籍し、多様な国籍のメンバーとチームを組んだことも、同社のD&Iの在り方を肌で感じる契機に。
 
「配属されたのは全世界のテレセールス組織の戦略部門。アフリカ系アメリカ人の上長をはじめ、スペイン、イタリア、アジアの方など、英語ネイティブな方が少ない組織だったこともあり、多様な生き方や文化に触れることができました。また、女性の管理職も多く、出産して普通に会社に戻ることはもちろん、「産休を取るのは当たり前」というカルチャーも根付いていて。本社を中心にD&Iを実践する土壌ができているからこそ、日本にもその概念が浸透しているんだなと改めて実感する機会になりました」
 
米国本社時代の中井さんとチームのみなさん
 

想いや経験を学びあう場を作り
誰もが活躍できる組織にしていきたい

 
地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」、これはマイクロソフト社の掲げるミッションだが、こちらにもD&Iの精神が浸透しており、社内でもあらゆるジェンダーの社員が等しく成功できる、インクルーシブな職場であるための取り組みが行われている。そのひとつが、社員によるERG(Employee Resource Group)活動。中井さんはWomen@Microsoft ERGの代表として、女性が働きやすく輝けるような組織作りに向き合っている。
 
「私自身、新卒で入社してから現在の立場になるまで、たくさんの方に助けていただきました。特に産後の復職時は、「おかえり」と歓迎してもらえたことや、周囲の理解や協力が本当にありがたくて。それを機に、自分が管理職になったら産休に入った方が復職しやすい環境を作ろうと思うようになったんです」
 
現在考えているのは、各人の想いや経験を共有し、学びあうことで、成長するというサイクルを作っていくこと。
 
「share、learn、growというサイクルですね。自分の業務だけという視点で仕事をしていると視野が狭くなりやすいし、ひとりで抱えすぎて疲れてしまうこともあると思うんです。日本国内だけではなく、世界十数万人の社員と、試してうまくいったことをお互いに学びあい、何かしらの気づきを得ることで、その人自身の成長につなげていく。それを続けるうちに、より女性が働きやすい会社になればいいなと。組織って一気に変えようとしても変わらないと思うんですね。だから、まずは自分たちができる小さな活動を積み重ね、少しずつ輪を広げていって、その輪を次世代の方につないでいく。継続していけるようなモデルを作り、参加していく人を増やしていくことで、あらゆるジェンダーの人がいきいきと活躍できる環境を定着させたいと考えています」
 
ERGでの最終的な目標は、すべての人が平等に成長できる機会を作ること。「ひとりひとりの社員に改めて、どのような課題や目標を持っているかをしっかり聞いて理解し、それに対する解決策を提案していきたい」と中井さんは語る。
 
「今度は私が次世代を担う社員を育てていく番。自分がしてもらったことを返していきながら、新人たちが能力を発揮できるようにサポートし、より働きやすい環境作りを目指していきたいと思います」
 

多様な生き方に寄り添う働き方を
テクノロジーの力で叶えていく

 
働きやすさを推進する施策として注目したいのが、同社の経営戦略の中核に位置付けられた「働き方改革(ワークスタイル イノベーション)」。以前から存在していた在宅勤務制度を2012年から順次拡充し、「テレワークデイ」といった顧客へのテレワークの推進を進めると同時に、社内でも様々な取り組みを進めてきた。「働き方改革の推進企業として、社員自身がワークライフバランスを大切にする働き方を実践していこう」という傾向が強まっていったという。
 
「昔はキャリアのためには何かを犠牲にしたり、諦めたりしなければいけないという風潮がありました。しかし、ずっと働き詰めで、くたくたになりながら仕事をしていると、他者への思いやりやクリエイティビティ、革新性といった、イノベーションがどんどんすり減っていってしまうんです。加えて現在は、その価値観に縛られず、自分らしい働き方を求める人が増えています。一番の理想とされるのは、100%の力で仕事に臨みつつ、プライベートもしっかり充実させるという生き方。「難しいのでは?」と思われがちですが、技術的には、公私の両立を叶えるためのサポートができる状態になっているんです」
 
コロナ禍によるリモートワークの普及で広く活用されるようになったTeamsをはじめ、マイクロソフト社のクラウドサービスは、多様なライフスタイルに合った働き方の実現を叶えつつある。中井さんが現在担当している教育チームの業務においては、過重労働が問題視されている、教員の働き方改革に一石を投じることになりそうだ。
 
「手作業で行われてきたプリントの配布や出欠確認などをデジタルに置き換えたり、Teamsのオンラインツールを使って在宅でも会議に参加できるようにしたり。校務の効率化で空いた時間で生徒さんたちと向き合う機会が増えれば、教育の質や内容がより素晴らしいものになる。私たちの提案には、そんな可能性があると思っています」
 
「自分の時間を充実させるゆとりがあったほうが、その方の暮らしも豊かになり、仕事の質も上がっていく。このメリットを私たちが自ら体現し、お客様に提供するのも私たちのミッションのひとつと考えています」と中井さん。
 
最後に自分らしい生き方や働き方を目指すZ世代へ向けて、メッセージをいただいた。
 
「Z世代はものすごい数のツールと情報の中から自分にとっていいものを選んでいくという、高度な時代を生きていると思います。その選択はとても大変なこと。自分は何を信じ、何を取り入れていくのか。さらには「これは本当の情報なのか」「自分の投稿が読んだ人にどう思われるか」という部分でも、とても高度な判断が必要となってきます。その基準として大切なのは、人を想う気持ちではないでしょうか。相手がどんな気持ちで、どんなことに苦しんでいるかを想像したうえで、何をしてあげられるかを考える。人の感情に寄り添えるのは、人間だからこそ成せる業。あらゆることがデジタルでできるようになり、いろんな国の人と時差なく繋がれてしまう時代だからこそ、根本にある人とのつながりを常に大事にしていってほしいです」