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Update on :2021.10.22

ダイバーシティ&インクルージョンは経営戦略

上村雄亮さん
東日本電信電話株式会社
サステナビリティ推進室

入社して以来、東日本電信電話(NTT東日本)で勤務してきた上村さん。営業職、相互接続というNTT特有の業務、さらに会社のガバナンスや人事・育成、情報セキュリティなど、分野のまったく異なる職種をわたり歩き、5年前から総務人事部サステナビリティ推進室でダイバーシティ&インクルージョン推進を担っています。そんな上村さんに、NTT東日本のダイバーシティ&インクルージョンの取り組みについて伺いました。


上村雄亮(かみむら ゆうすけ)さん
東日本電信電話株式会社
サステナビリティ推進室


これまで営業部門、ガバナンス部門、人事部門、情報セキュリティ部門など幅広い業務分野を経験し、2017年からダイバーシティ&インクルージョン推進を担当。現在に至る。
趣味はテニス、好きなものはワイン(地産地消のワイン醸造ボランティアメンバー)
 

ダイバーシティ&インクルージョンを推進し、社会に貢献を

 
NTT東日本グループでは2008年から、多様な働き方を実現することが社員一人ひとりの能力を最大限発揮できるという観点から、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を重要な経営戦略と位置づけ、多様な人材の活躍を推進しています。

「D&Iを経営戦略として位置づけることで、市場環境や社会の変化に追いつくのではなく、先取りしていくという観点が非常に重要だと考えています。つまり、社会課題の解決にいかに資するか、それが持続可能な社会にいかにつながっていくのか、こうした観点からD&Iを推進することで、社会に貢献していきたいという思いが強い。ひいてはお客さまの見えないニーズを満たしていくことにつながっていく、そのために、社員一人ひとりが多様性を尊重し、高い志を持ち、そして響き合い高め合うことで、まずは私たち自身がイノベーションを起こしていこうということなのです」

 

NTT東日本の特徴的なD&Iの取り組み例

 
最近のD&Iの取り組みの中で、特徴的な二つの例を紹介してくれました。

「まず紹介したいのは、パラリンピックの公式種目にもなっている障がい者スポーツ、ボッチャの体験イベントです。ボッチャという競技を通じて、障がいのある人もない人も、性別も問わず、役職も問わず、いろいろなアイデンティティを持った人が、ひとつのチームになってみんなでプレーしお互いに教えあって高め合う、そんな体験イベントを2019年から各地域で実施しています。ボッチャ自体の面白さと相まって、すごく盛り上がるのですが、その中で自然に相互理解が進んでいくのではないかと思っています」

「つぎに、〈だれでもトイレ〉です。わが社には全国各地にたくさんの拠点があります。その各拠点に〈だれでもトイレ〉という名称で、障がいの有無や性別などを問わない、だれもが使いやすいトイレを設置していこうというものです。その一例として、東京・初台本社ビル17階に設置した〈だれでもトイレ〉を紹介します。通路を回廊型にし、車椅子も利用できる多目的トイレを含む個室トイレを4つ設置しています。全体の色合いも白とアイボリーを基調に、照明も明るく、とても清潔感があります。音と臭いに配慮して壁・ドアは天井まであり、また、プライバシーを配慮し、手洗器や鏡を個室内に設置しています。この17階は共用の会議室フロアとして運用しており、社内外を問わず打ち合わせができる場所となっています。そんなだれもが自由に出入りして利用できるトイレを〈だれでもトイレ〉とすることで、わが社としてのD&Iへの思いと、使用する方のニーズがうまくマッチしたフロアになっていると思います」

だれでもトイレ

 

多様な働き方で、出産や育児と仕事との両立を

 
NTT東日本グループでは、2016年4月から「フレックスタイム制」を導入し、2020年10月からは「コアタイムを設定しないスーパーフレックスタイム制」へ移行しました。また「在宅勤務制度」は2009年4月から制度化、2017年7月からは実施日数の制限をなくし、さらに2020年10月からは「リモートワーク制度」と名称を変更し対象とする社員を全雇用形態に拡大しました。

「リモートワーク制度、フレックスタイム制を全社で導入していることで、時間と場所に制限されない、多様な働き方を一人ひとりの社員が実践しています。わが社では、リモートワーク制度とフレックスタイム制の活用によって、性別に限らず、パートナーとともに育児をされる方が非常に増えています。例えば、男性社員の育児休職取得者をみると、以前は1年に2〜3人程度だったのですが、最近では十数人の方が取得されています。



一方、出産した女性社員においては、育児に専念するために一定期間、育児休職を取得される場合が多いですが、悩みとしてこれまでと同様に仕事を継続することが難しいという話を以前は聞いていました。しかし最近では、リモートワーク制度とフレックスタイム制をうまく組み合わせることで、仕事と育児を両立しやすくなり、さらには自分自身のキャリアについて、あきらめずに希望をもってチャレンジできるようになったという声も聞かれるようになりました。さらに、キャリア支援の一助になればという思いで、以前は初台にて運営していた事業所内保育所を、2020年8月から五反田のNTT関東病院の一角に移転し、「DAI★KIDS五反田」として新たに運営しています。就労時間に合わせた長めの開所時間とすることで、子どもを安心して預けながら、育児と仕事の両立に関する強い武器として役立っています」

DAI★KIDS五反田

D&Iの推進によって変化した社内風土の例として、ちょっとはにかみながら、上村さんご自身の体験を話してくれました。

「私は以前から地産地消のワイン醸造のボランティアに参加しており、その影響から右手に腱鞘炎を発症してしまいました。オフィスで仕事をするなかで、やはり不便なことも多々あって、そういうときに、役職とか属性とかを問わず、会議設定や荷物移動などちょっと不便そうな場面があると、声をかけてくれるんですね。それ、やりますよ、と。最近、そういう声かけをしてもらう機会が非常に多くて。私はこうした機会を〈配慮〉といった少し硬いものではなく、〈ちょっとした心遣い〉と呼ぶことにしています。そして、この〈ちょっとした心遣い〉を自然にできる人が会社の中に増えたなと感じています。自分がそのように感じられるようになったからかもしれないですが、これもD&Iが推進されているなというのが、私の個人的な体験からの印象です」

 

D&I精神を土台に、社会解決の課題を目指す

 
積み重ねてきたD&I推進の取り組みが成果を上げているなかで、今後の方向性やめざすところについて、上村さんはどのように考えているのでしょうか。

「まずは継続だと思っています。これまで積み上げてきたものの上に、さらに、あらたに、一人ひとりがさまざまな切り口で多様性に触れ、感じて、表現できる、こうした機会を私たちから継続的に発信していきたいと思っています。その一方で、社員のみなさまからも、こんなことあるよ、と発信してもらえるような、双方向のやりとりが活性化するような取り組みも引き続き進めていきたいです。そして何よりも、NTT東日本グループの中で多様性をしっかりと意識し、ぶつかり合い高め合いながら生み出した成果などを、外部のお客さまやステークホルダーに向けてもどんどん発信し、みなさまに還元していくことが大事だと考えています。こうした精神を経営戦略として維持し、掲げ続けていくこと、それがわが社の今後の方向性だと考えています。
その上で、その先のゴールを見据えるとするなら、それは社会課題の解決なのではないかと思っています。社会の動きや変化に対して、多様化するステークホルダーの見えないニーズを、時にわが社が黒子にもなって、時に同じ立場のパートナーとして、課題解決に向けて一緒に取り組んでいく。その土台となるものがD&Iの精神で、それが社員の根幹に息づいていることだと思います。つまり、声高に〈D&Iは必要です〉と話していくのではなく、私たちがまさに自然に、私もD&Iの一部となる存在である一方で、D&Iを体現している当事者の一人でもあるという、そういったことが風土として社内に根付いているような状態が、めざすところなのだと思います」

 

D&Iを経営戦略とすることで広がるチャンス

 
NTT東日本のD&Iに関する考え方で、上村さんが個人的に共感するところを教えてください。

「冒頭でD&Iは経営戦略であると言いましたが、経営戦略として掲げるということは、わが社に共感してくれる方を増やすチャンス、共感してもらえる方と仕事ができるチャンスができると思っています。そう考えると、D&Iは非常に良いものだと感じます。わが社にもいろいろな歴史がありますが、そのなかにあって、雇用形態は多様になり、多様な観点を持つ社員が増え、さらには性別を問わず活躍でき、障がいの有無がハンディではなく個性として捉えられる、こうした会社なっています。いろいろな社会課題にも敏感となり、もとは電話事業が主だった会社が、今ではアグリビジネスやアートビジネスなど、事業も多様化し、さまざまなステークホルダーと多様な仕事が行われています。D&I精神が社員一人ひとりに理解され、共鳴することで、こういうふうに会社がインクルーシブになっていくんだと実感しています」

最後に、「自分らしくはたらく」を軸に仕事を選びたい、学生、第二新卒を中心とする求職者へのメッセージをお願いします。

「自身に向けての言葉でもあるのですが、まずは、何事にも臆することなくチャレンジしていきたいですね。たとえ実現の可能性が不明でも、まずはやってみましょうよ、と自分から発信していくことが実現への第一歩です。そして、その前提となるのが、自身の価値観、アイデンティティ、ポリシーです。自分も含めて一人ひとりが大切にしていること、それを熱い思いでぶつけ合える、ぶつけ合えるチャンスがあるかないかではなくて、ぶつけ合えるということ。そこから新たな発想やイノベーションにつながっていくのだと思います。一人ひとりが自分らしさを活かし、輝ける未来をみんなで創造していきましょう」