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Update on :2020.10.23

企業文化が自分にフィットしているかが会社選定の鍵

鈴木由加里さん
コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社
人事・総務本部

リクルートなど人材関連企業やWebマーケティング会社などを経て、コカ・コーラボトラーズジャパンに中途で入社して4年目となる鈴木由加里さんに、転職の経験から得た知見や、社内のダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)の状況について伺いました。

鈴木 由加里さん
コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社
人事・総務本部
人事統括部 人財開発部 採用課


リクルートなど人材関連企業、WEBマーケティング会社を経て中途採用でコカ・コーラボトラーズジャパンに入社。リクルート時代からダイバーシティ豊かな環境で勤務。現在の会社にも、より多様性豊かな組織への発展に大きな可能性を感じている。
 

転職を繰り返して見えてきたもの

 
2006年、大学卒業後、鈴木さんが新卒で入社したのは人材斡旋事業を行っている株式会社リクルートキャリア(当時は株式会社リクルートエイブリック)でした。

「就活にあたって、特にダイバーシティを考慮したわけではなかったんですが、年齢とか性別などに関わらず、当たり前のこととして、平等に評価される会社で働きたいと思っていました。その点、リクルートは、当時、企業文化として声高にダイバーシティを云々するような会社ではなかったのですが、入社時からカミングアウトしているLGBT当事者もいて、社内にもカミングアウトを受容するような空気があって、すごく自然にD&Iが実現されているという、今思えば稀有なタイプの会社でした。その一方で、私たち新入社員は、まずは新規開拓の営業部員としてマーケットに放たれるのですが、営業先の企業において、日本の会社社会の洗礼ではないですが、性別や年齢で反応の違いを感じることがありました」
たとえば飛び込み営業するのが女性社員である事で珍しがられたり、同期が少し他の営業さんと区別されて対応されてしまうなどの現実に直面する事もありました。

3年ほどリクルートで勤めた後、同じく人材関連の企業での経験を経て、これまでの営業職から人事職へとキャリアチェンジを試みます。そこには、自分が共感できる職場を、仕事を探している人たちに提案していきたいという思いがあったといいます。

「アメリカ系のWebマーケティング会社が、日本で支社を立ち上げる際に、大量採用を行ったタイミングで人事採用担当者として入社しました。この会社には4年ほどいて、その間に出産を経験しました。私は自分の考えがあって6か月間で復職しました。D&Iが前提として根付いている企業文化だったお陰もあり休暇の取得から復職までスムーズかつ自然だったと思います。また1度、どうしても休日出勤しなければならない時には、会社に子供を連れて行き、同僚に見ていてもらうなどとても恵まれた環境だったと思います。

 

コカ・コーラボトラーズジャパンへの転職

 
Webマーケティング会社の次に、転職先としてコカ・コーラ ボトラーズジャパン(CCBJI)を選んだ理由は何だったのでしょうか?
「日本の製造業を担う会社にあこがれを持っていて。というのも、リクルートでの営業時代に、昔ながらの製造業者さんを担当していて、人々の暮らしを支える〈もの〉を作り続けることに情熱を傾けている人たちの、確かなものを作って届けたいというプライドをかけた〈かっこよさ〉に強く惹かれていました。だから、〈ものづくりの会社〉がいいなと思っていました。加えて、企業文化も重要でした。年齢や年次、中途・新卒などの入社経路や性別で評価をされないような会社を探していたところ、コカ・コーラグループが日本でものづくりをしていたという発見とともに、私がいま在籍しているコカ・コーラボトラーズジャパンは合併を繰り返して今の規模になっているというところで、非常に面白いフェーズにある会社だということを知り、また、これまでの自分のキャリアからすると、変化が多い環境の方が能力を生かせるかなとものではないかと思って、入社を決めました」
 

具体的なダイバーシティの取り組み

 
CCBJIでは、D&I推進の取り組みの一環として、多様な社員、社内の性的マイノリティに対し平等な機会を提供するために、社内規程を改定し、2020年1月から運用を開始しました。
「社員の意識改革への取り組みとして、管理職に対して研修の受講を必須とし、一般社員に対してはe-ラーニングが受講できる態勢を整えています。さらに、今年実施した大きな改定としては、配偶者の定義をパートナーに広げたことです。パートナーの性別を問わず、事実上婚姻と同様の関係にあるものを含む、としました。これによって、特別有給休暇、育児介護規程の対象者、休業関連など多岐にわたって就業規則が改定されました。つまり、パートナーが同性であっても登録すれば、異性のパートナーと同様の規程に則って会社の福利厚生制度が適応されるようになりました。まだまだ社内でカミングアウトしている人は少ないのですが、制度が当たり前に備えられていることで、社員の意識が変わっていくものだと考えています。私は人事担当なので、そういう方向性を支持している会社だということを社内に広め、制度を安心して利用できる空気を醸成していければと思っています」


社内の制度が改定され、今後ますますD&Iが推進されていくだろうCCBJIですが、社内のLGBT+Ally(アライ)のコミュニティはまだないのだそうです。

「取り組みを始めたばかりなので、コミュニティの設立は今後の課題です。ただ、最近LGBTQコミュニティの一部で話題になった事があるようなのですが、弊社の制服は、どこの現場でも、男女とも同じなので、そこが気に入ったという理由で弊社を受けてくれる人が一定数いるようです。もともとはLGBTQの人たちのニーズを意図したわけではないのですが、特にトランスジェンダーの人たちにとっては重要なポイントになっているようで嬉しかったです」

女性も男性も制服のデザインは同じ
 

多様な家族の形や育児・介護に寛容なカルチャー

 
LGBT領域においては、まだまだこれからながら、多様な家族の形や介護、子育てなどに関しては、非常に寛容な会社だなというのが、鈴木さんが4年勤めての印象だといいます。

「今、子どもを育てながら、フルタイムで働いています。海外も含め出張にも行っています。それができるのは、育児に対するフォローの制度があるからですし、周りに素直に助けを求めれば、誰かが必ず助けてくれるからです。育児にしても介護にしても、だれにでもそういう時期があるものだよねっていう認識を社員が自然に持っている会社なのだと思います。20代で入社して、パートナーができて、親の面倒を見て、自分が病気になって、休む事があったりしながらも働いて、定年退職して、という人生のサイクルに合わせた制度を、会社がきちんと作っていること、そして、それを使うことに対して、寛容なカルチャーがある点は当社をお勧めできるポイントだと思います」

また、昨年、会社に家族を招いて行われるファミリーデーなどのイベントも非常に盛り上がりました。小さなお子さんやパートナーと参加された方々もいましたし、職場とは違う同僚の表情を見る事ができたので、とても良い機会だったなと思います。

小さな子供もたくさん参加したファミリーデー
 

まずは宣言し、実現に向け突っ走るスタンスに共感

 
実は私たちの会社では最近、先ほどお話をした社内規定の変更だけでなく、誰もが働きやすい職場環境の実現に向けて、『人権ポリシー及びダイバーシティ&インクルージョンポリシーの改定』についても決定され、社長から社員へのメッセージが出され、私たちの会社としても新たな一歩を踏み出しました。私はこのメッセージの中の、『当社には既に多様な価値観や背景を持つ人々が集っており、その違いこそが私たちの強みです。違いには見えているものも見えにくいものもあります。その両方を大事にしなくてはなりません』という一説が好きです。またこういったメッセージを社員に向けて発信する会社の一員である事を誇りに思いました。

今回のメッセージについて一部抜粋してお伝えしたいと思います。
『当社には既に多様な価値観や背景を持つ人々が集っており、その違いこそが私たちの強みです。違いには見えているものも見えにくいものもあります。その両方を大事にしなくてはなりません。
そのために、見えにくい多様性の一部である「性的指向」「性自認または表現」を人権ポリシー及びダイバーシティ&インクルージョンポリシーに新たに明記します。
(中略)
コカ・コーラに誇りを持ち、誰もが働きやすい職場」を実現するために、一人ひとりがお互いを尊重しあえる環境を作り “Integrity(誠実と信頼)”を常に意識し行動しましょう。』

多くの人と協働する職場において“Integrity(誠実と信頼)”を心に留めて過ごす事はとても難しいですが、それを目指そうという志を共にできる人たちと働ける事は幸せな事なのかもしれないと思っています。

最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
「仕事内容や報酬など、仕事を選ぶ軸は人それぞれだと思いますが、仕事をしている時間は人生の中でもすごく長いので、会社のカルチャーが自分にフィットしているかどうかが非常に重要だと思います。就職活動の時期は、いろんな会社と出会えるタイミングです。学歴とか年齢とかで自分で勝手にスクリーニングしてしまうのはもったいないです。心に刺激を受けた面白そうだと感じた会社にはすべてアプローチして、自分の心に一番フィットする会社を見つけてくださいね」