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Update on :2020.09.25

「ダイバーシティ・アンド・インクルージョンにコミットする企業」

横浜梨恵さん
モルガン・スタンレー
人事部

「一人一人の社員が武器である」と言われる金融業界トップにいながら「個人が出せる力よりもその個人が集まってチームになったときに大きな成果を出す」を重んじるモルガン・スタンレーは、近年ダイバーシティ・アンド・インクルージョンにさらに拍車を掛けて取り組んでいます。この度、人事部でダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)とタレント・デベロップメントを担当する横浜梨恵さんにお話を伺いました。

横浜梨恵さん
モルガン・スタンレー
人事部ヴァイス・プレジデント


人材開発の分野でのキャリアを一貫としながら、5年前にキャリアの幅を広げたいという目的でモルガン・スタンレーにタレント・デベロップメントとダイバーシティ担当として入社。D&Iについては知識がほぼゼロのところからスタートしたが、いまは女性であり、子どもを育てる母親であるという立場も生かし、活動している。

 

ダイバーシティ・アンド・インクルージョンにコミットする


「モルガン・スタンレーでは、2020年の6月に「ダイバーシティ&インクルージョンへのコミットメント」という項目が、当社のコア・バリュー(企業指針)のひとつとして新たに加わりました。以前から4つのコア・バリューがあり、その中の『正しいことをする』や『卓越したアイディアで主導』という指針の中でD&Iの重要性を唱えていました。しかし、近年の社会問題等への意識の高まりなども相まって、『D&Iに注力していくということを言語化し、対外的にもメッセージとして発信する必要がある』というジェームス・ゴーマン最高経営責任者(CEO)の強い想いがその背景にあります。
「この企業指針が加わったことによって、日々の行動レベルでD&Iが実践されているかどうかを考えなければいけないと思います」と横浜さん。
「これからはD&Iは他人事ではなく『社員一人一人が責任を持って向かい合うべきテーマ』になったと思います。会社としてもより明確に「D&Iが大切だ」というメッセージに最近バージョンアップされたことで、私たちが目指す姿がクリアになりました。」

 

ダイバーシティ&インクルージョン・カウンシル


具体的な取り組みとして、2019年の秋に社内のD&Iを推進する、「ダイバーシティ&インクルージョン・カウンシル」という組織を経営会議の直下に立ち上げた。

「このカウンシルは、人事部主体ではなく、各部門が主体であることが大きな特徴です。カウンシルでは、社内の最上位層のマネージング・ディレクター3名がリードし、各部門の代表者が主体となりながら、多様性に富んだ最高の人材を採用し、維持するために私たちが何をすべきかを考えています。人事部は、アドバイザーやスポンサーという立場として関わります。これまでは人事部が主体となり進めていたD&Iの取り組みを、カウンシルが中心となって推進する役割も果たしています。このことで、部署を越えて成功例を現場のレベルで共有することもできるようになってきました。」

「まだ立ち上がって間もないですが、カウンシルができてからは、人事部だけでは見えていなかった現場の悩みや、会社からのメッセージがどのように現場に影響しているかが見えやすくなりました。ニーズや影響がすぐに見えるようになったからこそ、今までのやり方を見直すきっかけにもなりました。また、より多くの人たちが関わることによって、アイデアの出し方にも多様性が生まれました。また、カウンシルとマネジメント・コミッティーの連携が強化され、シニアリーダーからの後押しが非常に強くなる好循環もありました。」

 

「くくられるのは嫌いです」




モルガン・スタンレーではマイノリティという言葉はあまり使われないという。

「私は女性ですが「女性は」とくくられて語られるのが嫌いです。 私という個性を見てもらえていない気がして。自分しかもたない経験・バックグラウンドや、自分にしか出来ないことや思考などは、一人ひとりで異なります。『多いか少ないか』でカテゴリーに分けるよりは、もともとみんな違うという前提に立って、どんな違いがあるのかに関心を持ち、その違いをどうしたらプラスに変えられるかを考えることがD&Iにコミットすることなのだと思います。」

 

“当事者”じゃないからこそ、伝えられることがある


「ここまでたどり着くには、自分が”当事者”ではないから得られた多くの学びがありました。入社した当初はLGBTQの社員ネットワークの活性化が大きな課題であったにも関わらず、『LGBTQにとって職場で何が大変なのかな』と正直わからなかったこともありました。でも、いろんなLGBTQの方のお話を聞いているうちに、”当事者”じゃないからこそ客観的に分かることがあると発見しました。

また、非当事者にどう伝えて、どう理解してもらえるかも自分の非当事者としての経験から答えを探し出せるようになりました。”当事者”ではない私自身が、LGBTQの困りごとやなぜ職場で取り組む必要性があるのかを理解した過程は、同じく”当事者”ではない人や、自分ごととしてこの課題を捉えていない人にその重要性を伝える上でとても役に立ったと感じます。」

 

ウィメンズ・ネットワークに、男性を求む


モルガン・スタンレーのウィメンズ・ネットワークは社内外でとても活発に活動していることで有名だ。女性の管理職を増やすためのリーダーシップのプログラムは、世界的にもその注目は高い。このネットワークが最近特に注力しているのが男性のアライを増やすことであるという。
「性別問わずに人が集まることによって、そこからネットワークも広がり、社内で活発なディスカッションが生まれます。女性のことだから女性だけが話し合うのではなく、男性社員の視点から見える課題や疑問についても模索して、性別問わずお互いの視点を持ち寄って前に進むネットワークを目指しています。」

 

ロールモデルを探すな、ロールモデルに成れ




いま、就職活動中の方々へ、横浜さんは必ずしもロールモデルを探す必要はないと言う。

「自分の軸を決める上では役に立つことですが、ロールモデルがいないからといってその企業をあきらめるというのは違うと思います。似たような人がそこにいると安心することもありますが、その安心感から自分が持つ多様性や可能性を逆に閉じ込めてしまうかもしれません。

一方、自分がロールモデルになりたい、なれそうと思える企業を見つけられたら、自分らしく、自分がひとりのお手本として働けるのだと思います。個性を強みに変え、新しいことに挑戦し成長する姿は、きっと多くの社員にとってロールモデルになると信じています。」