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Update on :2023.10.06

行き先は「社員一人ひとりがいきいきと仕事ができる環境」

滝沢 雅子さん
東日本旅客鉄道株式会社
人財戦略部 人財育成ユニット

滝沢 雅子さん
日本旅客鉄道株式会社
人財戦略部 人財育成ユニット マネージャー


2001年JR東日本に入社。駅、乗務員、現場管理者、支社、本社勤務等を経て、2022年10月から採用やダイバーシティ推進に従事

 

女性活躍推進から始まったDE&I

 

まず、滝沢さんがダイバーシティ推進に関わるようなったきっかけや背景など教えていただけますでしょうか。

滝沢さん「長年、人材育成や社員の活躍の場づくりに携わってきました。さまざまな職場でさまざまな社員と関わってきたこともあり、そういった経歴を活かせると考えたのかもしれません。これまでの経験を活かし、JR東日本のDE&Iを推進していって欲しいというメッセージだと受け止めています」

分割民営化によりJR東日本が誕生したのが、1987年の4月。滝沢さんは「JR東日本は早くからダイバーシティ推進に取り組んでいましたが、その歴史は女性の活躍推進から始まりました」と説明します。

滝沢さん「当社の発足は、1987年4月です。発足当時、女性社員の比率は全体の0.8%。圧倒的に男性の方が多い会社でした。当時は法律により女性は深夜業ができず、駅や鉄道は早朝から深夜まで動いていることもあり、長く女性活躍の場が限られていた実態がありました」

1999年になると、男女雇用機会均等法が改定され、女性でも深夜業や休日出勤をすることが可能になり、時間外労働の制限もなくなりました。男女が分け隔てなく働ける世の中となり、女性の雇用数も大幅に増加しました。

滝沢さん「深夜業の規制が撤廃され、JR東日本でも女性社員の乗務員への運用開始等、目に見えて女性社員が増えてきました。女性の活躍推進への取り組みが本格的に始まったのもこの頃からです。2004年には、『Fプログラム』というポジティブアクションがスタートしました。『F』は『Female』や『Family』の頭文字で、女性社員の活躍や、仕事と育児・家庭の両立支援などの意味を込めています。このプログラムには、女性雇用の拡大や、出産・育児などで退職した社員を対象とした再就職支援制度の導入、育児支援金の支給などの施策が盛り込まれていました」

そして「Fプログラムは、歴史とともに発展していきました」と滝沢さん。

滝沢さん「私が乗務員だった時にも、トイレや更衣室といった設備の整備が進み、職場環境が整ってきたと感じていました。その後、2009年になると、Fプログラムを発展させた『ワーク・ライフ・プログラム』がスタートしました。Fプログラムは女性を対象としていましたが、ワーク・ライフ・プログラムは、「男女」や「両立支援」とテーマを拡大し、全社員が対象となりました。さらに2016年からは『ダイバーシティ・マネジメント』として、多様性への意識を高め、すべての社員が活躍できる職場づくりを進めています」


働きやすい環境は社員1人1人によって作られる

 

JR東日本のDE&I施策の歴史からは、世の中そのものの歴史的背景が伝わってきます。

滝沢さん「障がい者、高年齢者、外国籍、LGBTQ+など、現在も多様な取り組みを進めています。ここ最近では、介護や病気治療、不妊治療などさまざまな事情を抱えた社員も活躍できる環境の整備や、それぞれに事情を抱える中で、工夫しながら経験を積んだ社員が活躍できることが重要だと考えています。元々は女性の活躍推進から始まりましたが、現在は全社員がいきいきと働けるようにすることがテーマになっています」

女性でなく男性社員向けの制度もあるのでしょうか。

滝沢さん「配偶者出産休暇のほか、産後パパ休暇制度などがあります。育児休職や休暇等の取得率は、2020年度には18.7%でしたが、2022年度には43.7%まで上がっています。育児休職の新規取得者で言えば、女性社員より男性社員のほうが多いんです」



わずか数年で取得率が大きく増えました。その背景にはどんな工夫があったのでしょうか。

滝沢さん「社内のセミナーを企画し、実際に休暇等を取得したり、両立しながら頑張っている社員に、両立のために工夫していること等を伝えてもらっています。でも、本当に大きいのは社員一人ひとりの自主性なんです。各職場でも、両立に関するセミナーを開催したり、コミュニケーションを取ったりしており、それぞれの取組みについて社内報や社内ネットワークで情報発信をしてくれています。実際に取得した人や、それを応援したい人の思いや行動など、様々な力が合わさった結果だと思っています」

社員の自主性は、DE&Iを推進する上での大きな財産になっていると滝沢さんは続けます。

滝沢さん「例えばLGBTQ+について『もっとちゃんと知りたいので勉強会ができないか』等、理解を深めたいというコメントが増えてきました。共に働く仲間の力になりたいという思いが、意見や行動に現れているのを実感できます。社員がお互いに思い合い、良い影響を与え合っていることは、この会社の強さでもあります。私はその一員であることを誇りに思っています」



現在のポジションに就いてもうすぐ1年。今の滝沢さんの目標を教えてください。

滝沢さん「今までやってきたことにも、それぞれ課題があります。政府の方針で掲げられた、『女性役員の比率を30%にしましょう』というのも当社ではまだ達成できていません。育児や介護、不妊治療と仕事の両立支援といっても、実際には難しくて悩みながらがんばっている社員がいます。外国籍社員への配慮やLGBTQ+への理解などもまだまだ足りないところがあります。すべての社員がいきいきと仕事ができる環境を目指しています。そしてそれと同時に、働き方やキャリアの多様化にも、意識して取り組んで行きたいと考えています」

働き方やキャリアの多様化とは、具体的にどういうことなのでしょうか。

滝沢さん「どの社員にも『この会社をこうしたい!』『この会社を通じて世の中に貢献したい!』という意欲があります。そして今後はその実現のために、環境を整えていけたらと思っています。新型コロナウイルスが流行したころ、私は現場にいました。外出自粛によりお客さまが激減し、ほとんど空っぽで走る電車を何本も見送りました。そのときに私自身も『お客さまのため、世の中のためにもっとできることがあるんじゃないか』と強く思ったんです。属性だけでなく、働き方や仕事にかける思いにも、一人ひとりの個性があります。それを大切にするのも、DE&Iのかたちのひとつだと思うんです」

毎日のように電車に乗っても、電車を動かしている人たちのことを、意識することは少ないかもしれません。でもそこには確かに、アツい思いがあります。

滝沢さん「お客さまが目の前にいる。この方のために何かできないだろうか。責任感、信頼、安心感。JR東日本は、そういったものを実現させたいと思っている社員の集まりです」

では最後に、読者の皆様へのメッセージをお願いいたします。

滝沢さん「人生の中で『働いている時間』というのはかなり長い時間になります。自分の力をどんな風に発揮したいのか。どんな価値を創造したいのか。自分の中の「こうしたい」という軸を、大切にしていただきたいです。良いも悪いも、これまで生きてきた人生の中で、強く自分の中に残っている経験ってあると思います。それを踏まえて、自分の中の強み弱み、得意不得意、好き嫌いを受け止め、ぜひ自分の夢や志を大切にしてください」