今回のテーマは「パーパス」。パーパスってどうやって見つけるの?ライフパーパスとワークパーパスは切り離したほうがいい?そもそも本当にパーパスって必要?パーパスに関するあれこれをお伺いしました。
(2022年10月29日配信。動画はこちら)
百瀬旬さん
デロイト トーマツ グループ
パブリックセクター マネジャー/ Just Do It!!地域イニシアチブ 代表
震災後の2年間、宮城県気仙沼市に赴任・復興プロジェクトに従事する中で、一人の想いが周囲を巻き込み、まちの未来を変えていく様子を体験。現在は全国の自治体や事業者を繋ぎ、地域課題解決が加速する仕組み作りに従事。地域の未来創造をプロボノで伴走する 「Just Do It !! 地域イニシアチブ」
ピーター嶋さん
株式会社セールスフォース・ジャパン
Tableau事業統括 ビジネス・バリュー・サービス ディレクター
英国生まれ、アメリカ育ち。大学は日本。グローバルな金融機関での勤務を経て、現在の職に至る。前職では、LGBTQ+の社内ネットワークをゼロから立ち上げた。現在はOutforce Japan President。趣味はシステマ。
河﨑瞳さん
ユニリーバ・ジャパン
マーケティング ダヴスキンクレンジング ブランドマネジャー
滋賀県出身。同志社大学文学部卒業後、2014年にユニリーバへ営業職で入社。ショッパーマーケティング、現場営業、男性化粧品とボディ市場営業戦略の経験を経て2021年よりマーケティングへ異動。
前編では、みなさんのご経歴や、ご自身が生きる上、働く上でのパーパスをどう見つけていったのかなどについてお話しいただきました。
後編では、皆さんに聞いてみたいことなどあれば、ぜひご質問いただければと思います。
対話の機会、どうしてる?
(百瀬)個人のパーパスや思いを、社内外に向けて広げていくときどうしているか、お二人にもお伺いしたいなと思ったんですけど、よろしいですか。ずっと思っているだけじゃ、なかなか人に伝わっていかない…。
今デロイト トーマツ グループでは、いわゆるサードパーティのようなものが非常に多く存在しているんですね。本業は本業として、例えば私だったらパブリックセクターという部門の仲間との繋がりがあります。その一方でグループ横断の、先ほど自己紹介でも話した地域イニシアチブのようなチームもあって、業務を超えて集まってくる様々な部署のメンバーと一緒に、個人の想いを起点にしたプロボノ活動ができるんです。
そういったところで自分の想いや様々なことを語り合うことで、パーパスがより醸成されたり、チーム感が出てきたりということもあるかなって、最近思っているんです。
ユニリーバさんやSalesforceさんでは、そういったサードパーティとか対話の場面とかは、どうやって生もうとされているか、そういう仕組みみたいなものってあるんでしょうか。
(嶋)Salesforceには「1-1-1 モデル」という制度があって、従業員の就労時間の1%、年間56時間を社会貢献のために自由に使うことができます。これは有給休暇ではなくVTO(ボランティア活動時間)というもので、自分がやりたい社会貢献のために会社のコンピュータや機器を使ってもOKです。
そのテーマで集まったコミュニティが、LGBTQの場合はOutforceだし、障害者の場合はAbilityforceです。Salesforceのコアバリューの一つである平等(イクオリティ)という価値観に基づいた従業員グループがあって、それぞれのコミュニティに参加したいという人がそこに参加して、横の繋がりを広げながら同じ目的に向かってやるという仕組みがあります。
(河﨑)ユニリーバでは選び放題なくらいシステムがたくさんあって、そこにすごい思いを持っている人もたくさんいるので、どっちかっていうと、自分から自発的に動いて呼びかけるというのがすごく大事だなと思っています。
例えばさっきWAAの話をしましたが、「地域 de WAA」っていうワーケーションの制度もあります。いろんな地方自治体と弊社が提携を結んでいて、地域課題の解決に貢献すると宿泊費が無料または割引になるというものです。この仕組みを使って、私のチームの人が今山形県酒田市に行っていて、1週間ぐらい地域貢献をしながら、本業の仕事もしていたりします。
この他にも、社内で自分たちでこういうことやりたいな、じゃあどういう人が必要かなって自分たちでチームを組んで進んでいるプロジェクトも多いですね。例えば、リフィルステーション、つまり、消費者の方がボトルを持ってきてシャンプーやボディウォッシュを量り売りで買えるようなプロジェクトを、社内起業制度を使って立ち上げた人たちもいます。すごくたくさんサポートする仕組み自体はあるので、あとは自分でどれを選んで飛び込んでいくかですね。
(百瀬)ありがとうございます。地域の課題っていうのはすごく複雑化していて、一社だけじゃとても解決できないっていう問題があると思うんですよね。私は今、地域を繋ぐ、解決人材を繋ぐっていうお仕事をさせていただいているので、ぜひ皆さんとも繋がらせていただけたら嬉しく思います。ありがとうございます。
(嶋)月の半分は、会津若松の方にいるんですけど、普通に仕事ができる。会社もFlex Team Agreements (FTAs) と言ってそれぞれのチームでどのように働くのかを定義することができるので、このような働き方ができる。どこからでも働けるようになったから、すごく便利になりましたよね。
キャリアとライフのバランス
(河﨑)私がお二人の話を伺っていてすごいなと思ったのが、百瀬さんのおっしゃっていた「ワークライフシナジー」の単語。ピーターさんも、もしかしたらそこに近いのかなと思っているのですが、私は結構マイルールというか、ライフとキャリアをめちゃめちゃ切り離して考えていて、仕事終わったらもう何もしません。もう絶対に家族と過ごします。ホリデーの間は一応携帯は見るけど、会議はできたら入りたくありません。だって休みだもん。みたいな感じですごく切り分けていて。
自分なりのキャリアのパーパスとかライフのパーパスとかっていうのはあるんですけど、人生とキャリアが融合しているかっていうとまだそうではないかなと思っています。百瀬さんとピーターさんは私より社会人としての先輩だと思うんですけど、いつぐらいから、バランスよりもシナジー寄りになったのかなっていうのを、ぜひ教えていただきたいなと思います。
(百瀬)いやもう本当最近だと思います。私も元々仕事は仕事で、休みをより充実させたいタイプだったと思います。ただ特に今は、コロナでほぼ在宅勤務になっていて、本当に生活と仕事が近い。こんな環境の中だと、どっちの頭も同時に動いてるみたいなことがあると思うんですよね。
仕事脳でいたとしても、例えば目の前に子どもがいると、そっちのことも意識しながら仕事のことを考えたりして。その結果、脳が行ったり来たりしながら、何かしら仕事のヒントみたいなものが生まれるっていうようなことも体験的にあります。
(嶋)僕は、週末には仕事の業務プロセスをしません。でも、そのときに社会や行動心理学に興味があるからそういう本を読んだり調べたり。あるいは、そのカルチャーをどういう風に変えるんだっていうのを考えたり。ワークライフとはちゃんと分かれているんだけど、ライフでも興味あるものが仕事でも使えるから、シナジーなのかなって。やっぱり個人の興味が仕事にも役に立っていますね。
(河﨑)それぞれの自分のライフとキャリアがうまく共感しあってというか、影響を与え合っているのが、すごく素敵だなと思いました。ありがとうございます。勉強になりました。
(嶋)子育てをしている上で商品アイディアが出てきて、子ども用の何かっていう風になってそれがマーケで使えたら、それこそワークライフシナジーですよね。
(河﨑)そうなんですよね。少しずつシナジーに足を突っ込み始めているんですけど、今まで切り離していた分、ずっと仕事のことを考えちゃう怖さや嫌さもあって。でもお二人の話を聞いて、すごくポジティブなマインドセットになりました。
(藥師)非常に面白いですね。仕事のときもライフのことを考えて…なるほどって思いました。ワークライフシナジーとか、あとは働きがい、生きがいの話をすると、じゃあその二つだけではなくって、例えばボランティア活動、めちゃめちゃパーパス持ってやっていますとか、ずっとやっている趣味がものすごく好きで、他のことは全て、この趣味のためにやっていますとか。
いろいろあるときに、人生の中でこれだけはって思っているものがある人は、別にそれが仕事じゃなくても、ライフの中のザ・ライフみたいなところじゃなくてもいいのかなと思ったりしつつ、多様なパーパスがあって、かつそれが一つじゃなくって、複合的だからこそ、そのバランスが時によって変わるからこそ、キャリアだったり、ライフジャーニーっていうのが変わっていくのかなって思いながら、聞いていました。
僕からも一つ質問したいなと思ったのは、そんな変遷の中で、自分はこれを大事にしたいなって気づいていく中で、たくさんの出会いとか、きっかけとかがあったと思うんですよね。
この人にこう言われたからこう思ったとか、こういうふうに思っていたけれど、こんな感想を言っていただいたからそういった見方あるんだと気がついたなど、自分のパーパスとか目的が明確化していく瞬間があるのかなと思うんですけど、何かもしよければそういった気付きのエピソードなど教えていただければと思います。
自分を変えたあの出来事
(嶋)あるお坊さんに「あなたは別に外枠じゃなくて自分で考えてればいいんですよ」って言われたところから始まって。
自分はそもそも環境が変わっている人間です。海外にいるときはアジア人としてのマイノリティ。日本に来てもやっぱり自分がマイノリティ。自分が違うということに対して、反対に魅力にもなるのかなといったのを、いろんなところでお話しながら、何か自信に繋がってきたという感じです。
(百瀬)ありがとうございます。私は二つの言葉が影響していると思っています。一つは、震災直後にも関わらず、気仙沼市が掲げたスローガンは「海と生きる」だったんです。もうそれは何て言うんでしょうね。あの状況にあっても「海と生きる」というスローガンを打ち出したところに、やっぱり海を大事にして自然と対峙しながら生きていくっていうその覚悟や力強さを感じました。その感覚は私に自身のパーパスを決める上で大きな影響を与えていると思います。
あともう一つ影響を受けたものとして、「Build Back Better」っていう言葉もすごく印象深くて。ただ元に戻す復興ではなくて、より良い復興を目指しているっていう街の方々のアクション、活動を見たときに、自分の中で背筋が伸びたって言ったら変ですけど。どうせやるなら楽しく、どうせやるならよりよい方向にっていうところで、何か自分の人生の軸が少し固まったという。個人的に印象深い言葉やエピソードは、この二点でしょうか。
(河﨑)自分のキャリアパーパスに気づいたのは、さっきお伝えした就活の「なんでなんでなんで面接」です。それがすごく大きかったので、その後特にぶれずに、ラッキーなことに今まで8年ぐらいずっとキャリアを歩めています。
それとは別に、日々どういうところで自分のマーケティング活動のモチベーションを得ているかというと、今、教育機関と連携をして、高校生とか中学生に対して自分の自己肯定感を高める授業っていうのをやっていただいているんです。そこでアンケートの結果を見せていただいたりとか、オンラインでちょっと拝見させていただいたりとかすると、ものすごく如実に変化が表れていているんです。
例えば、自分の好きなところと嫌いなところを書いてみてっていうと、嫌いなところの方がやっぱり多かったりするんですよね。でも、お友達の好きなところはどこって聞くと、すごくいっぱい出てくるんです。まわりの人に自分の分をもらったら、自分で気づいていなかったけれど「こんなにいいところがあった!」「この子は私のことをこんなふうに思ってくれていたんだ!」っていう、すごくポジティブな感情が溢れて、しかもみんながお互いをより密に感じられる、みたいな変化が毎回あるんですよね。
その様子を見て実は先生が一番喜んでくださることもあり、そういうのを見ていると、この活動をやってよかったなと思うし、これをもっと広められるように日々の業務を頑張ろうって思います。そういうエネルギーを頻繁に貰って自分の糧にしています。
(藥師)すごく素敵な授業ですね。働く理由や生きる理由をこれだっていうふうに思って、その思いを常にブラッシュアップする、エンジンを入れていくためにさまざまな機会や出会いがあるよねという話は、本当にその通りだなと聞いていました。嶋さんがおっしゃっていた心理的安全な空間があるからこそ、こういうことをしたいっていうことが体現していけるんだよねという話もその通りだなって聞いていました。
あっという間に時間になってしまいました。最後にこれをご覧いただいてる皆様に、メッセージをいただければと思っています。
どこで何が気づきになるかわからない
(河﨑)繰り返しになりますが、私の場合は、初対面の、自分が面接を受けている人事の人と話して得た気づきが大きかったです。
どこで何が気づきになるかわからないなというのがそこでの学びだったので、ぜひ親しい人でも、話したかった人でも誰でもいいので、自分のことを話す時間を持ってみてください。自分のことがもっとよくわかるし、あなたってこうなんじゃないとか思いもよらない言葉をいただけけると思います。一人で悩むとか考えるよりも、私がおすすめするのは、人と話をして、アウトプットして、で、またもらってみたいなことを繰り返すこと。ぜひ試してみていただければと思います。
自分をよく見て、自分が本当に好きな行為を見つけておく
(嶋)元の上司に「自分が本当に好きなものを見つけておくとすごく楽ですよ」って言われたことがあります。こういう仕事が好きですとかではなくて、例えば、こういう本を読んでいるのが好きとかっていうのを、見つけておきなさいと。
自分をよく見て、自分が本当に好きな行為を持っておくと、いろんな会社や仕事の中で、それを活かせるはずです。私はいつもその言葉を考えながら動いています。
隣の芝は多分青くない
(百瀬)私のビジネスキャリアは金融のカード会社から始まって、出版社、クリエイティブの方に行って、広報、マーケティング広告に携わって、今、地域活性の仕事をしています。一見繋がっていないキャリアのように思うんですけど、今の地点から振り返ると全部繋がっているんですね。
何が言いたいかというと、隣の芝は青いって言うじゃないですか。でも多分青くないんです。青くなくて、青くするためには、もう徹底的に自分と向き合って、徹底的に自分を疑って、でも信じ続けるということで、芝が青くなっていくんだと感じています。そのうえで、一次情報が一番大事かなと思っていでも信じ続けるということで、芝が青くなっていくんだと感じています。そのうえで、一時情報が一番大事かなと思っています。やっぱり自分の目で見て自分の五感で感じたものを判断材料にし、一つずつ積み上げていく。その結果、自分の立っている芝が徐々に青くなってくる。私は二十数年のビジネスキャリアを経て、ようやくそう感じています。
一次情報を大事に。いろんなことを迷いながら、楽しみながら自分の言葉を見つけていただければいいんじゃないかなと思います。ありがとうございます。
(藥師)ありがとうございます。今日は本当に素晴らしい皆さんとお話できてよかったな、嬉しいなと思っています。僕自身は自分らしく働くって、その時々で違うことだろうなというふうに考えていて、その軸って変わっていったりするものだからこそ、何かそれを探したりとかバランスをとっていくその旅自体を楽しむということが大事なのかな、なんて思っています。
そのときに河﨑さんがおっしゃった、自分のことは自分でなかなかわからないけど、周りの人からフィードバックをもらうとわかるようになるから、いっぱい対話するといいよっていうのは確かにそうだなと思っています。
また、実は企業ごとにパーパスがあるんだよっていうのを河﨑さんに今日ご指摘いただいているんですけど、その通りで、企業ごとにパーパスがあるから、その企業はどんなパーパスがあるのかな、何を大事にしているのかなって、企業の説明会とかに行くときも、そこと自分を対話するような形で見てみるとか、そこで働く人々も一人一人どういったパーパスがあるのかどういった働き方、生き方をしているのか。今日この場もそうなんですけど、いろんな社会人の方に聞いてみる、こういう人と一緒に働きたいな、こういった企業で働きたいな、という共感性の高いところを見つけていく。そういうところも自分らしく働いたりするということに一歩近いのかな、と思いながら、聞いていました。
その中で、自分のパーパスを大事にしながら、こういうふうにキャリアを重ねていっているんだよ、それが企業とか社会に影響してっているんだよという話を今日は聞けてすごく嬉しいなと思いました。
素敵な機会をいただきどうもありがとうございました。