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Update on :2023.10.18

キャリアも、ライフも 。――カミングアウトをした職場から目指す未来

吉岡大樹さん
デロイト トーマツ グループ
リスクアドバイザリー新規事業推進 ビジネス開発所属

監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務など多岐にわたるサービスを提供するデロイト トーマツ グループ(以下デロイト トーマツ)。その存在は日本最大級のプロフェッショナルグループとして知られています。今回お話を伺ったのは、2023年2月からグループの一員となった吉岡大樹さん。デロイト トーマツでの日々を、吉岡さんはどう感じているのでしょうか。


吉岡大樹さん
デロイト トーマツ グループ
リスクアドバイザリー新規事業推進 ビジネス開発所属


ESG関連の戦略立案・提言およびリサーチなどに従事。プライベートではゲイであることを公表しており、2023年7月にはMr. Gay Japanの日本代表として選出される。アドバイザリー業務に従事しながら、LGBTQ+の福祉やユースワークにボランティアとして参画。自分自身のミッションとして「どんな人でも公平にチャンスが与えられて、自分らしくいられる社会づくり」を掲げる。

 

思い描いたゴールに向けて、歩みを進めるためのプラン

 

まずは吉岡さんの経歴を教えてください。

吉岡さん「私は日本で生まれ、中学校時代の3年間を中国で過ごしました。その後、大学の3年間をアメリカで過ごし、日本に帰ってきて就職をしました。1社目はベンチャー企業でマーケティングと営業を、2社目はコンサルティングに関するリサーチなどのサポートを行う会社で営業を担当していました。私がこれまでの仕事選びで大切にしてきたことは、大きく2つあります。1つ目は自分のキャリアプランに沿っているか。2つ目は心理的安全性を感じられるか。1社目にしても2社目にしても、そこを重視して就職活動をしました」

デロイト トーマツも、その2点を重視した上で入社を志望されたのでしょうか。

吉岡さん「そうですね。そもそも2社目のコンサルティングに関するサポートを行う企業に入社したのは、様々な業界に触れて、本当に自分がやりたい仕事を見つけたいという側面もあったんです。ハラールミルク業界からジェット機のエンジン製造業界まで、本当に多種多様な業界の方とお付き合いをする中で、ESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance のこと)やインパクト投資(経済的な利益の追求だけでなく、環境や社会における課題の解決へ繋がるインパクトを生み出すことを目的とした投資)に興味を持ち、コンサルティングという業務にも惹かれていきました。今私は、自分のキャリアのゴールとして、インパクト投資家もしくは、インパクト投資に関するコンサルタントになることを描いています。転職活動をする中でいくつかの企業からオファーをいただきましたが、その実現に最も近い企業としてデロイト トーマツで働くことに決めました」

大学卒業からわずか3年にして、吉岡さんはご自身のキャリアプランをしっかりと描いています。

吉岡さん「実は大学を卒業した当時は、コンサルタントという職業があることも知らなかったんです(笑)。ただ大学時代に、チューターとして英語のエッセイの添削をするアルバイトをしていたことがありました。分析をして、何が足りないのかを査定して、提言する。チューターとコンサルタントは、結構似ているところがあるんです。またこれも学生時代の話ですが、インターンとしてNPO法人の支援をしていたこともありました。コンサルティングと社会貢献、志すバックボーンはどちらにもあったと言えるかもしれません」

企業選びのポイントとしてもうひとつ、心理的安全性をあげていた吉岡さん。こちらはデロイト トーマツに入社してみていかがでしたか。

吉岡さん「入社して実際に働いてみて感じているのは、『自分らしい自分』で働くことができる土壌があることです。今私はゲイであることをオープンにしていますが、実は、職場でカミングアウトをしたのはデロイト トーマツが初めてなんです。これまでも隠していたわけではないのですが、積極的に言うということはありませんでした。」

カミングアウトをするのには、何かきっかけがあったのでしょうか。

吉岡さん「先ほど自分のキャリアのゴールをインパクト投資家またはインパクト投資に関するコンサルタントと言いましたが、ライフの方でも目指しているゴールがあるんです。それは、今以上にLGBT+コミュニティのサポートに貢献すること。私はアメリカでの大学時代、様々なヘルプがあって、自分がゲイであることに誇りを持てるようになりました。だけど日本はまだ、LGBT+に対して、オープンな社会とは言えないと感じています。ゲイであることに葛藤を感じている方、とくに学生の皆さんに、私がアメリカで経験してきたようなインクルーシブな環境や多様な機会を提供したいと思っています。現在そのために様々な活動をしていますが、その一環として今年『Mr. Gay Japan』への応募をしたいと考えたこと、そうした気持ちが募ったタイミングで、DEIを推進しているデロイト トーマツへの入社が決まったことがきっかけとなり、ゲイであることを職場でもオープンにしていくことに決めました」

Mr. Gay Japanは、ゲイの方々に向けた日本初のLGBTQ+コンテスト。吉岡さんは見事グランプリに選ばれ、日本代表として国際コンテストに出場する予定となっています。

吉岡さん「コンテストに出場してから、より気兼ねなく、自分がゲイであることを周りにも言えるようになりました。また、Mr. Gay Japanへの応募は、私の『ライフ』としての行動でしたが、『ワーク』の場であるデロイト トーマツの上司からも、『優勝おめでとう!』と言ってもらえて嬉しかったですね」



多様性を重んじる環境で、自分らしさを強みに

 

ゲイであることをオープンにされたことで、職場での変化はありましたか。

吉岡さん「私は今、ダイバーシティに関するコンサルティング案件に関わっています。その中で、『自分はゲイで、これこれこうだと思います』と言う機会があったんです。皆さん非常にプラスに受け止めてくれて、プロジェクトマネージャーからは『吉岡さんの視点や経験を、ぜひ今後も活かしてもらいたい』と言っていただきました。私はその言葉にエンパワメントされましたし、今後も、自分のバックグラウンドならではの視点を、クライアントへの提案などはもちろん、職場全体のDEI推進などにも積極的に活かしていけたらと思います」

また、「ボランティア活動を歓迎する職場の空気も、私らしさを後押ししてくれる要素です」と吉岡さん。

吉岡さん「私は今、本業の他に、プライドハウス東京というところで組織運営のボランティアをしています。デロイト トーマツ グループには、私以外にもボランティア活動をしているメンバーがたくさんいて、ボランティア休暇制度があったり、ボランティア活動推進月間として、メンバーが地域社会や地球の課題解決に関与する機会を提供する『Impact Month』というキャンペーンをグループ一丸となって実施したりしています。もともとデロイトは”教育”・”スキル開発”・”機会創出”の分野で2030年までに全世界で累計1億人の人々に対してインパクトを創出するという『WorldClass』というミッションをもっていますし、組織全体の素地としてボランティアや社会貢献活動に関心が高いメンバーが多いというのは、理解者や仲間の多さにも繋がる部分があり、心理的安全性を感じる一因にもなっています。それに何より、自分のバックグラウンドや経験を、仕事だけでなくボランティアを通じて社会にも還元できることは、私自身の日々のモチベーションやウェルビーイングの向上にも繋がっているなと思います」



ボランティア関連の制度以外に、モチベーションやウェルビーイング向上に役立っていると感じる制度はありますか。

吉岡さん「私は過去にメンタルヘルス不調になった経験があり、今もメンタルヘルスが不安定になったりするときがあります。そんなときは、デロイト トーマツのEAP(従業員支援プログラム)を利用して、カウンセリングを受けています。私は英語の方が自己開示しやすいのですが、カウンセリングが多言語対応可能なのも助かっています。LGBT+もメンタルヘルスも目に見えないダイバーシティだと思うので、これからも社会全体のインクルージョンが進むとよいなと思います」

最後に読者の皆様へのメッセージをお願いいたします。

吉岡さん「まず自分の好きなこと、得意なことを洗い出して、ラフにでもいいので自分のキャリアプランを描いてみてください。もしそれが上手く描けなかったら、インターンシップなどを利用して模索するのもアリだと思います。そして、自分らしく生きられる、働ける職場を見つけるにはリサーチが必要です。どんな人が働いているのか、ERG(Employee Resource Groupの略、従業員リソースグループのこと)はあるのか、どんなイベントに企業として参加や協賛をしているのか。リサーチすればするほど、ミスマッチは少なくなると思います。時には内部にリソースがないこともありますが、内部に求めるものがなければ、外部からどう補っていくかのプランを立てることも大切です。私は内部にコミュニティがなければ、外部でコミュニティを見つけようと考えていました。自分が望む未来への道筋は一つではないはずなので、いろいろな人たちとふれあって、様々なルートを模索するのがよいと思います。自らが望む未来の実現に向けて、一歩ずつ共に歩んでいきましょう!」

(本記事内容およびインタビュイーの所属・職責・氏名などにつきましては、2023年9月14日時点の情報です)