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Update on :2022.02.24

自分らしい生き方を追求することが社内のD&I推進につながっている

江川徳義さん
セガサミーホールディングス株式会社
総務本部 ファシリティサービス部 設備管理課 (取材当時)

セガサミーグループは、セガグループのデジタルゲーム事業を中核にアミューズメント機器開発や映像制作、トイなどを展開する「エンタテインメントコンテンツ事業」、サミーを中心とした「遊技機事業」、ホテルの開発・運営等を手がける「リゾート事業」など幅広い事業を展開し、クオリティの高いエンタテインメントを提供する世界的企業。新しい価値を生み出し続けるため、50を超えるグループ会社が一丸となって推進しているのが、D&Iをはじめとした社内のサステナビリティ活動。その中でLGBT当事者のひとりとして、社内の啓発活動に取り組む江川徳義さんに、これまでの歩みと自分らしく生きるための信念について話を伺いました。

江川 徳義さん
セガサミーホールディングス
総務本部 ファシリティサービス部 設備管理課 (取材当時)

2011年、セガサミーホールディングスのグループ企業であるダーツライブに入社。2019年より総務としてセガサミーホールディングスへ出向。2021年4月の組織改革を経て、セガサミーホールディングスへ転籍。総務や設備管理の業務に携わる。セガサミーグループのCSRレポートの多様性に関する記事など、社内意識の改革に向けた啓発活動にも積極的に取り組んでいる。
 

面接時のカミングアウトで
自分らしく働ける場であると実感できた

 
江川さんがセガサミーホールディングスのグループ企業・ダーツライブで働きだしたのは10年ほど前。選んだ決め手は、海外での業務に携われるということ。あくまで自分のやりたいことを優先に考えていたため、同社がLGBTを受け入れてくれる企業かどうかという部分は特に考えていなかったそうです。

「とはいえ、新しい職場では自分らしく働きたいという思いはありましたよ。その前の職場では自分がLGBTであることをカミングアウトすることができなくて、心苦しい部分もあったので。だったら先に話してしまったほうが自分らしくいられるはずだと割り切って、最終面接のときにカミングアウトしてしまおうと覚悟を決めたんです。もし、僕をセクシュアリティで判断するような会社だったら、残念だけど入社しなくてもいいと思っていました」

思い切って打ち明けてみたところ、採用担当者たちのほとんどが「何か問題でも?」という反応。無事に内定が決まっただけでなく、快く迎え入れてもらえたこともすごく嬉しかったと江川さんは柔らかく笑います。

入社後も肌で感じたのは、同社が特別扱いをされたり気を使われ過ぎたりすることもなく、自然に接してくれる方が多い職場であること。その自分らしく働きやすい環境は、セガサミーホールディングスへ転籍してからも変わらないそうです。

「入社初日の挨拶でカミングアウトしたのですが、みなさんが優しい目で迎え入れてくれたことがとても印象に残っています。去年、LGBTが働く職場の取材としてテレビの収録が入ったときに、周りの方々が当たり前のように協力してくださったことも嬉しかったですね。顔が出てしまうことを嫌がられるのではないか?という不安もあったのですが、『全然いいですよ!』って(笑)。誰に否定されることもなく、ひとつの考え方、ひとりの人間として受け入れてもらえているという清々しさを日々感じています」

 


 

 

自身の経験を生かして
アライを増やしていきたい

 
周囲の理解の深さに限らず、「社内制度にダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に関するものが増えていることも当社における近年の傾向です」と語る江川さん。企業のLGBTQへの取り組みを評価・表彰する『PRIDE指標』でゴールドを3年連続で受賞するなど、企業グループ全体としてD&Iへの取り組みが勢いを増していることは、カミングアウトしていない社員にとっても心強いものとなっているといいます。

「カミングアウトをするかどうかは個人の自由ですが、会社側に受け入れてくれる土壌があるだけで、当事者側は『会社に守ってもらえている』『いつ打ち明けてもいいんだ』と安心できるんです。制度の中で僕が一番いいと思っているのは、公正証書とともに申請すればパートナーを婚姻における配偶者と同じように扱ってもらえるというもので、話を聞いたときは『ここまでやってくれるんだ!』と胸が熱くなりました」

現在の目標は、「社内にアライを増やしていく」という同社の取り組みを推進するため、LGBTへの理解に関心を持つ人を増やしていくこと。その背景にあるのは、社内制度を利用する人をもっと増やしたいという想い。

「会社として当事者の方々をサポートする体制を整えてはいますが、用意した制度を利用する方がまだまだ少ないんですよね。なのでまずはアライを増やし、当事者の方々がより安心できて、声を上げやすい環境を整えていきたいんです」

多くの社員から理解を得るための行動のひとつとして行っているのが、LGBTに関する啓発活動。社内外を問わず自らの経験を語り、発信していくことでアライを増やしていくことは、いち当事者である自身の役割でもあると江川さんは語ります。

「そもそもは転籍する前にセガサミーの総務の方から、『差し支えがなければLGBT当事者として社内の啓発活動に携わってほしい』『社員の前でLGBTに関する話をしてほしい』と依頼されたことが発端なんですよね。僕はセクシュアリティを隠しているわけではなく、むしろオープンにして働いているので『自分にできることなら』と受けさせてもらったという感じです。ほかの方にどうこう思われる話でもないですし、いろいろな考えの方がいることもわかっていたので。LGBTであることは自分のベースだと思っているからこそ、これまでの経験を生かして多くの方々が理解を得る機会を作っていきたいと思ったんです」


 

 

生き様も人としてのあり方も
全部自分自身で決められる

 
江川さんの生き方の軸にあるのは、「自分がどう生きたいか。どういう人間でありたいかは、自分で決められる」という信念。この思いが生まれた背景には、かけがえのない友人や多様な価値観を持つ人たちとの交流があったといいます。

「最初のきっかけは19歳のときに友達にカミングアウトしたこと。幼いころから誰にも言えずに悩んできたことなので、ものすごく不安でしたよ。『友達でいられなくなったらどうしよう?』という恐怖もありました。でもその友達は、『だから何ですか? そんなことであなたを嫌いになったり、友達を辞めることはないですよ』と言ってくれて。おかげで肩の力が抜けたというか、初めて『自分のままでいいんだ』と思うことができたんです」

20代の頃に語学留学でサンフランシスコで過ごしたことも大きな転機に。自由な雰囲気と、LGBTをはじめとする多様性にオープンな文化に触れるうちに引っ込み思案だった性格もどんどん変わり、自分を出せるようになっていったそう。

「『LGBTでも普通に暮らしていいんだ!』と実感できたことも大きいですね。そこから少しずついろいろな人と話すようになり、『自分らしさに引け目を感じることなんて何もない』、『いろんな経験をして生きていくことは素晴らしい』と思えるようになっていきました」

「いまの環境にいきついたのはさまざまな縁のおかげ」と笑う江川さんですが、他者におびやかされない確固たるアイデンティティーを得たことは、自分らしい生き方を追求し続けた成果でもあるのではないでしょうか? 最後にそんな江川さんから、自分らしい生き方や仕事探しを追求するZ世代に向けて、メッセージをいただきました。

「自身の存在を決めるのはほかの誰でもなく自分自身。どのような自分でありたいかは、個人の自由です。仕事では本来の自分を偽らざるを得ない場面もあるかもしれませんが、どの職場でも仕事でも『これが自分だ!』というものを持っていればきっと大丈夫なはずです。僕自身が読者のみなさまと同じ18~25歳の頃の自分に言いたいのは、『未来はいい方向に変わっていくから、自由に生きていい』ということ。若かった当時は20年30年後の生き方が見えなくて不安を感じていたのですが、この5年10年を振り返るだけでも世の中はどんどん良くなってきています。この変化の波はまだまだ止まりません。悪い方向に行くことは絶対にないと僕は思うので、やりたいことがある方は不安に負けずに目指す道へと踏み出していってもらいたいです。勇気を出して行動した分、道はもっと良くなっていくはずです」