◆宮川 良子(ミヤカワ リョウコ)さん
2023年入社。米国の大学を卒業後、サステナビリティ分野のコンサルや情報開示などを歴任。現在はそれらのスキルを活かし、海外グループ会社とのやりとりや外部評価の回答対応、DEIに関する各種企画にも携わっているワーキングマザー。◆高柳 裕子(タカヤナギ ユウコ)さん
2020年入社。セガサミーHD入社前は他社で人事を担当、人事在籍中に希望により特例子会社に異動。現在はセガサミービジネスサポート(特例子会社)で、障害者雇用に携わりながら、セガサミーHDサステナビリティ本部を兼任している。◆山崎 恵理子(ヤマザキ エリコ)さん
2006年、新卒でセガに入社。以来年経理畑で活躍。2023年、社内公募に応募し、セガサミーHDサステナビリティ本部へ異動。現在は、外部評価の回答対応や、グループサステナビリティ推進会議など各種重要会議の運営などを担当。CEO自らが旗振り役を務めDEIを推進
「エンタテインメントコンテンツ」「遊技機」「リゾート」の3つを柱に総合エンタテインメント企業として業界を牽引するセガサミーグループ。同グループでは2022年に「サステナビリティビジョン」を策定し、持続的な企業価値向上のために取り組むべき「5つのマテリアリティ(重要課題)」の具体的な施策を公表した。「5つのマテリアリティ」では、「人」「製品/サービス」「環境」「依存症」「ガバナンス」を重要課題とし、特に「人」については雇用や人財登用面でDEIを推進し、企業内大学「セガサミーカレッジ(SS-College)」の拡充など社内での人財育成制度や職場環境の整備への投資を増やすことを発表している。
「私たちの部署は、以前は『社会貢献やボランティア活動の担当部門』というイメージがあったかもしれませんが、最近では『会社存続のための非常に重要な役目を果たしている部門』という認識に変わりつつあると思います」というのは宮川良子さん。宮川さんは大学生時代にはアメリカで環境計画学を専攻し、卒業後はサステナビリティ分野のコンサルや情報開示などを歴任。そんな宮川さんには、日本におけるダイバーシティやサステナビリティはどう映っているのか。
「ダイバーシティやサステナビリティという言葉は一般的になりつつありますが、浸透度という点では、会社ごとの取り組み方によって大きく異なっていると思います」
セガサミーグループの里見治紀CEOは、「長期的成長のためには、社内外から共感を得ることと、ステークホルダーと感動を共有することが欠かせない。感動がなくても人は生きていけるが、感動のない人生はつまらない。感動は一人でもできるけれど、多くの仲間と体験し、共感が生まれたときにその感動は何倍にもなる。セガサミーグループは、共感が溢れる社会を製品やサービスを通じて生み出し、世界中の人々の生活に彩り(カラフル)を添えていくことが使命である」とし、ダイバーシティやサステナビリティによる企業価値向上にかねてより努めている。
「CEO自身が社内外でその重要性や必要性を訴え、リーダーシップを発揮し旗振り役を務めていることもあり、社員の間でも徐々に理解されてきたと思います」というのは、山崎恵理子さん。山崎さんは新卒で入社して以来、経理畑で約10年活躍していたが、社内公募制度を活用し2023年にサステナビリティ本部へ異動。里見CEOの情熱に触発されたひとりと言える。
「セガサミーグループで働く人を支えたいという気持ちで経理という仕事を続けてきました。社内公募制度にチャレンジしようと思ったのは、数年前からダイバーシティやサステナビリティに興味を持つようになったのがきっかけです。畑は違いますが、セガサミーグループで働く人やお客様を支え、応援したいという気持ちは同じです」
全ての社員が「セガサミーグループの一員」と感じられる職場環境
DEIが浸透するにあたっては、組織のリーダーに負う部分が大きい。同グループのようにCEO自身がけん引役を努めてくれると、社員にとってはそれが心の支えとなり、物怖じせず意見を言い合い、積極的に行動に移すこともできる。総合エンタテインメント企業は、沢山のお客様に感動体験を提供するのが仕事だ。それゆえに柔軟でクリエイティブな発想が求められる。そのためには多様な人財が、年齢や性別に囚われることなく生き生きと仕事ができる環境が必要とされる。そうした点でもDEIを受け入れる土壌が備えられていたともいえる。
「サステナビリティ本部では、LGBT+や女性活躍、障がい者といったテーマ別にイベントや勉強会を開催していますし、人財開発本部や総務本部などが主催する講演会などもあります。グループ社員は、そうした経験を積み重ねているうちに、自然と意識が醸成されているのではないでしょうか」というのは、高柳裕子さん。高柳さんは特例子会社で障がい者雇用を担当しながら、サステナビリティ本部を兼任している。
「特例子会社の東京事業所にはオフィスクリーニングチームとオフィスアシスタントチームがあり、オフィスではグループ会社と同じフロアで当たり前のように働いているので、そのような面でも、障がいの有無にかかわらず全員がセガサミーグループの一員であるという帰属意識を高めることができる職場環境です」
同グループで実施している障がい者理解体験型ユニバーサルマナー研修では、車いす利用者、視覚障がい者、聴覚障がい者、高齢者の4つの当事者体験・サポート体験を行うなど、当事者と支援者、双方の立場を体験できる研修も継続的に行なっている。ダイバーシティの観点でいえば非常に素晴らしい。
このような取り組みが評価され、2023年、セガサミーホールディングスは、全ての人が平等に参加できる社会や環境の構築に向け、先進性、独自性、波及効果などの観点から、特に優れた取り組みを実施している企業として東京都が定める「心のバリアフリー好事例企業」に認定された。「クリスマスのとき、『いつもきれいにしてくれて、ありがとう』といったクリスマスカードをいただいて、オフィスクリーニングチーム一同感激したこともありました。そうしたことが起こる会社に所属できていることがとても幸せであり、セガサミーグループの社員として働きやすく、やりがいを感じることができる環境です」(高柳さん)
アライストラップ — 可視化で広がるアライの輪
では、セガサミーグループでは、DEI活動に具体的にどう取り組んでいるのか。
「LGBT+に関する取り組みとしては、2021年から、LGBT+理解促進およびLGBT+当事者への理解と支援を目的とし、アライへの賛同を表明した社員を対象に、グループ各社のレインボーロゴを施した特製ネックストラップを配布しています。このほか、東京レインボープライド共同代表理事の杉山氏による講演会や、女装パフォーマー・ライターのブルボンヌ氏によるセミナーや対談など、LGBT+を理解するための様々な社員向けイベントを実施しています」(宮川さん)
こうした啓発活動に加え、同性パートナーを配偶者と同じ扱いとする各種社内制度を設けるなど制度面でのサポートを拡充。企業・団体の性的マイノリティの方に対する取り組みを評価する「PRIDE指標」においては、セガサミーHD、セガ、サミーの3社連名で、2019年から5年連続で「ゴールド」認定を、2023年には併せて「レインボー」認定を受賞しているのもこうした物心両面のサポートがあるからこその結果だろう。
「アライストラップの配布は今年で3年目になりますが、賛同者は1000名を超え、日常的にストラップをしている社員を見かけるようになりました。一人ひとりの思いを可視化したことで、その輪が徐々に広がっていくのを実感できるのが良い点だと思っています」(宮川さん)
LGBT+当事者やアライの社員・ご家族とともに、東京レインボープライドのパレードにも参加
このほか、女性活躍推進にも注力している。
「事業の性質上、男性社員の比率が高いのは事実です。そのことが、女性活躍をはじめとしたダイバーシティの推進が進みにくい一因になっているのではないかという声も一部ではありました」(高柳さん)
そこで、同グループでは、2022年度より「セガサミー Women’s Empowerment PJT」(2023年度より「WE-College」に改称)を立ち上げ、管理職および専門職向けの「アンコンシャス・バイアス研修」、女性活躍に特化しグループCEOと女性役員5名による「タウンホールミーティング」、グループ女性社員を対象とした女性特有の健康課題に向き合った「フェムテック・ウェルネス&キャリアセミナー」、入社5年目相当の女性社員向け「若手女性社員向けのキャリアワークショップ」の実施、妊娠前のキャリア形成を支援する「卵子凍結サービス支援制度」などを導入・実行してきた。その結果、2023年は、女性の活躍促進に関する状況などが優良な企業を認定する制度「えるぼし認定」において最高位となる3つ星を取得し、子育てサポート企業として「くるみんマーク」の認定も受けた。
また、多様化する従業員のライフスタイルに即した様々な制度が評価され、福利厚生の充実・活用に取り組む法人を表彰する認証制度「ハタラクエール2023」において、特に優れた取り組みを行う法人に与えられる「優良福利厚生法人(総合)」を受賞している。
「有給休暇も1日・半日ごとだけではなく、1時間単位での取得ができるようになっています。子育てや介護などで急な早退をする際などに使用できるため、フレキシブルに勤務できます」(山崎さん)
自由な社風があるから常に進化できる
最後に読者の方々にメッセージをいただいた。
「昔あるテレビ番組で、評論家の堺屋太一さんが、『今景気が良い業界も、30年経ったら衰退していることもある』と仰っていました。その頃と比較して、今はもっと世の中の動きは激しくなっています。ですから、景気の良し悪しではなく、自分のやりたい仕事に就くことを選択したほうが良いと思います。セガサミーグループは、多様性を受け入れやすく自由な社風を持っているのが気に入っています」(高柳さん)
「良い意味で、サラリーマンっぽくない格好の人が多いのは、それだけ個々の個性を尊重する社風の表れですし、それがセガサミーグループのクリエイティブ力の高さにもつながっているのだと思います」(宮川さん)
「社風の自由さもありますが、セガサミーグループは人に大切にしている会社です。SS-Collegeという企業内大学もありますし、海外留学もできます。教育に対して積極的に投資しているので、学び続けられる環境があって社員として心強いです」(山崎さん)
共感されない会社は生き残れない―。
というのが里見CEOの信念。そこには多様な人材が自分らしく活躍できる環境づくりを推進することで、より多くの感動体験を提供する、という強い意志が感じられる。会社の文化や風土は長年蓄積されてきたものだから、一朝一夕で変わるものではない。自分の中にあるアンコンシャス・バイアスの存在に気づき、その殻を破ることができれば、自分自身そして会社の成長につながるのだろう。今回の取材を通じて改めてそう思った。
企業情報:セガサミーホールディングス株式会社