diversity works > 職場を知る > ダイバーシティな会社・組織へ向けて発展し続けるコカ・コーラ ボトラーズジャパンの取り組み
Update on :2021.09.15

ダイバーシティな会社・組織へ向けて発展し続けるコカ・コーラ ボトラーズジャパンの取り組み

鈴木 綾子さん/林 真伸さん
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
人事統括部 戦略推進部 ダイバーシティ&インクルージョン課

ダイバーシティ&インクルージョン課(以下D&I課)に異動して1年目の鈴木綾子さん、2021年1月にダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)担当として入社した林真伸さんのお二人に、お話を伺った。

鈴木 綾子さん
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
人事統括部 戦略推進部ダイバーシティ&インクルージョン課


2005年、コカ・コーラウエストジャパン株式会社に新卒で入社。営業職、労働組合の専従役員などを経て、2020年11月にD&I課へ。
 

林 真伸さん
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
人事統括部 戦略推進部 ダイバーシティ&インクルージョン課


2013年に一般社団法人日本能率協会に入職し、D&Iや組織開発の教育研修開発業務を担当。2021年1月にコカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社へ中途入社。
 

これまでのキャリア

 
コカ·コーラ ボトラーズジャパン株式会社は、日本の各地域にあった12 のボトラー社が統合を経て誕生。鈴木さんは2005年に、前身のひとつであるコカ・コーラウエストジャパンに、新卒で入社しました。

(鈴木さん)「私は中学生の頃からホッケーを始めて、大学でも選手として競技を継続していました。進路を考えていたところ、トップリーグ〈ホッケー日本リーグ〉に参戦しようとチームを強化していたコカ・コーラウエストジャパンのホッケーチーム(現コカ・コーラレッドスパークスホッケー部:下線にリンクhttps://club.ccbji.co.jp/ja/hockey/)に勧誘され、選手兼社員として入社しました。当時の勤務地はチームの拠点がある広島でした」

選手として活躍しながら、会社の業務にも取り組んできた鈴木さん。競技引退後は出身地である大阪に異動し、9年ほど営業を担当した後、約3年間、労働組合に専従しました。労働組合で、これまでと異なる視点や立ち位置で会社と向き合ったことから、この経験を活かした仕事がしたいと考え、2020年11月に希望してD&I課へ異動しました。

ホッケー選手時代の鈴木さん(右)

 
林さんが一般社団法人日本能率協会に入職したのは2013年。D&Iや組織開発関連の研修プログラムの企画開発業務を担当していました。

(林さん)「企業からの研修ニーズは、法制度や社会の風潮によっても左右されます。例えば、2015年に女性活躍推進法が施行され、一般事業主行動計画の公表などが課せられたことで、企業は今まで以上に、女性活躍への取り組みを具体的に進めていく必要に迫られました。私は、社会の変化に企業が対応できるよう、研修やカンファレンスなどを実施し、社会と企業の橋渡しのような役割を担っていました。前職での経験をさらに活かすために、2021年1月にコカ・コーラ ボトラーズジャパンに入社し、グループ全体のD&I推進に取り組んでいます。」
 

D&I推進は重要な経営課題

 
コカ・コーラ ボトラーズジャパンでは、社長のカリン・ドラガン自ら「D&I推進は特別なものではなく、会社を継続的に発展させていく上で必要不可欠であり、重要な経営課題として位置付けています」とコメントしています。トップからの発信は、D&Iを推進するためにはとても重要です。

(林さん)「私たちD&I課は、当社グループ全体においてD&Iを促進し、約16,000人いる社員に理解を広めるために、日々、施策を考えています。当社は業務の特性上、男性社員の比率が高く、特に統合前は女性や外国籍の社員が意思決定の場に参加することや、業務の中核を担うことが多くはありませんでした。
ただ、当社が多くの方に親しまれる企業であり続けるためには、さまざまなお客さまの想いを想像し、理解することが大切です。そのためにも、社員一人ひとりがお互いの多様性を尊重し、すべての社員が能力を最大限に発揮できる機会を提供することが不可欠で、D&Iの推進が必要だと考えています。
多様性であることで、当社の製品を飲んでいただいている方々も、私たち社員もハッピーになれるのです」

(鈴木さん)「例えば、販売戦略を男性社員だけで考えると、どうしても男性の視点に偏り、発想が広がらなくなってしまうことがあります。多くの方に当社の製品を選んでもらうためには、多様な視点から考えた戦略を打ち出した方が効果をより高められるわけです。この多様な視点が重要であることを、経営方針のひとつとしてトップから発信しています。」
 

統合の繰り返しで変化した社内風土

 
鈴木さんが入社した2005年当時は男女の社員で差があり、例えば、結婚したら女性は退職するもの、といった風潮が根強く残る地域もあったといいます。各ボトラー社が統合を繰り返していく過程で、ばらつきのある考え方や古い社内風土などが、良い方向に変化し、統一化されていきました。また、その変化が起こるのを意図して、異なるエリアの管理職を入れ替える人事も行われました。

(鈴木さん)「当時は、女性社員が少なかったため、男性社員中心の働き方が主流で、”女性の働きやすさ”はあまり考慮されていませんでした。統合もあり、ここ数年で、会社全体の女性社員の人数が増え、”どうすれば女性が働きやすくなるか”と考えてくれる管理職が多くなり、私たちD&I課に積極的に相談してくれるようになりました。また、D&I=女性活躍だけではなく、性別、年齢、障がいの有無、人種、国籍、性的指向、性自認または表現などの属性、また就労におけるさまざまな制約要因にかかわらず、個々人みんなが能力を発揮し、チームとして最大限の成果を上げるにはどうしたらいいかと考える人が増えてきたと感じています」

(林さん)「入社前のグローバルなブランド・イメージと異なり、想像していたよりもドメスティックな企業だなというのが最初の感想でした。しかし、数カ月働き、他部署の方々とコミュニケーションを取っていくうちに、管理職を中心とした社員がこの日本的な企業風土が残っていることに危機感を持ち、今後企業として成長するためには、経営陣が発するD&Iのメッセージを理解し、変化していく必要がある、と感じているように思えました。『D&Iについて、もっと情報を発信してください』という要望をもらうことも増えています。
D&Iについて情報発信すると、社内から様々な反応が起こることもありますが、それは次のステップへの原動力になると思っています。課題は、約16,000人いる全社員に思いを伝えつづけることです。現状は、オンライン研修や会議に、全営業エリア各地から参加してもらえています」

 

D&Iの取り組みと課題

 
コカ・コーラ ボトラーズジャパンでは「D&I中長期ビジョン」で、社員一人ひとりの多様性を尊重することで、性別、年齢、障がいの有無、人種、国籍、性的指向、性自認または表現などの属性や、また就労におけるさまざまな制約要因にかかわらず、すべての社員が能力を最大限に発揮できる機会を提供していきます、と掲げています。
現在、D&I課で進めている取り組みやこれからの課題などについて教えていただきました。

(林さん)「女性活躍推進でいえば、現在6.2%の女性管理職比率を、2025年に10%、2030年には20%に引き上げる、という目標を掲げています。そのために、会社全体の女性社員の比率を上げるべく、新卒採用での女性の比率を意識的に増やしています。大卒新入社員は4年連続で女性比率が約50%に達しました。そして、女性を対象とした次世代リーダー育成の研修も実施しています。また、男性の育児休暇取得のための積極的な支援も行っています。障がい者雇用については、グループ内の特例子会社が法定雇用を守りながら、障がい者の人たちがより働きやすい環境を作っていこうと考えています」

女性社員対象のオンライン研修のもよう


LGBTQについては、この2年ほどで一気に取り組みが進んでいます。まず、「D&I中長期ビジョン」に記載している「性的指向、性自認または表現」。性的指向、性自認については多くの企業が盛り込んでいますが、当社では、表現(gender expression)についても盛り込んでいます。見た目や自身の言動でストレスを感じない職場づくりを意識しています。また、社内規定を改定し、2020年1月から配偶者の定義を同性にも広げ、各種社内制度が同性パートナーにも利用できるようになりました。教育研修面では、全従業員に向けて、eラーニングの形式で理解促進のための研修を実施し、新卒や中途入社した人には、入社当日のオリエンテーションで必ずLGBTQについて触れ、具体的な制度のことや、差別的な言動、ハラスメントについて伝えています。加えて、15分ほどの短い動画を制作し、新卒採用担当の面接官のトレーニングに使用しています。その結果、学生たちからのLGBTQに関する質問に対して、これまでは人事担当者が一手に引き受けていたところ、各事業部の面接官の方たちも回答ができるようになったといいます。

(林さん)「LGBTQに関する最近の取り組みで代表的なところでは、昨年12月に、日本国内での同性婚の法制化(婚姻の平等)に賛同する企業を可視化するためのキャンペーン〈Business for Marriage Equality(BME)〉に賛同しました。また、一般社団法人LGBT法連合会や国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチなどが共同で取り組んでいる〈#EqualityActJapan 日本にもLGBT平等法を〉の一環で進めている〈ビジネスによるLGBT平等サポート宣言〉にも賛同しました。今後も、NPOの人たちとの関わりを強めていきたいと考えています。新卒の採用イベントなどで講演をさせていただくと、LGBTQ関連の質問が一番多くて、当社に寄せる期待の大きさを感じています。一方で、当社にはまだAllyネットワークがないので、そこが今後の課題だと思っています」


グローバルのボトラー会社が制作したレインボーボトルのロゴ

 

コカ・コーラ ボトラーズジャパンの社員として考えるD&I推進

 
まずは鈴木さんに、D&I担当でよかったこと、うれしかったことなどをお話しいただき、最後に読者のみなさんへのメッセージをお願いしました。

(鈴木さん)「私は、色々な人とつながれることにとても価値を感じています。今までの職種だと、同じ分野の人としかコミュニケーションを取る機会がありませんでした。D&I課では、まさに多様な職種の人たちと触れ合い、交流ができます。それによって、私自身も視野が広がるので、とてもありがたいと感じています。当社はD&Iの考え方が浸透し、多様な働き方が広がっています。評価基準も性別や年齢、人種などが影響しない形に変化しています。働く時間もスーパーフレックスを導入しているので、性差はもちろんのこと、それぞれの制約に関係なく働けることは魅力だと思います。」

続いて林さんには、コカ・コーラ ボトラーズジャパンのD&Iに関する考え方で共感しているところを、そして、最後に読者へのメッセージもお願いしました。

(林さん)「私には、会社を選ぶ基準が二つあります。一つは、やりたい仕事かどうかということ。もう一つは、一緒に働く人たちが、同じ視座や志をもっているかということ。後者に関してコカ・コーラ ボトラーズジャパンは、D&Iをとてもポジティブに捉えてくれているので、働きやすい職場だと感じています。
そしてなにより、社長をはじめ経営陣が、D&Iに関して非常にポジティブに考えてくれているというのが一番大きいです。前職で色々な企業のD&Iの担当者とお会いしてきましたが、草の根的にボトムアップ型で取り組んでいる会社も多くみられました。もちろん、それは、社員が連帯感をもって進められる点ですごくプラスですが、クリアすべきハードルがたくさんあるので、思うように進まないことも多かったと思います。一方で、当社は経営陣がD&Iをプラスに捉えているので、新しい施策を提案するとポジティブな反応が得られます。だからこそ、この2年ほどの間で、さまざまな制度や仕組みをつくり、学生や外部機関から評価を獲得し、社内の意識変容も実現できたと思っています。このスピード感を失わず、これからも積極的に取り組んでいきたいです。」