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Update on :2020.10.02

I&D推進のキーワード、「イノベーション」は多様な人たちによる多様なチームで実現できる

篠原 淳さん
アクセンチュア株式会社
マネジング・ディレクター テクノロジー コンサルティング本部

リフィニティブ(旧トムソン・ロイター)の「ダイバーシティ&インクルージョン・インデックス」で、2018年、19年と2年連続で世界第1位を獲得するという快挙を成し遂げた、インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)のリーディング・カンパニー、アクセンチュア株式会社。『RAINBOW CROSSING』には2016年の初回以来、毎年参加されています。そのアクセンチュアでLGBTQダイバーシティ日本統括として活躍している篠原淳さんに、その取り組みや推進の方向性についてお話ししていただきました。

 

篠原 淳 さん
アクセンチュア株式会社
マネジング・ディレクター テクノロジー コンサルティング本部 
クラウドファーストアプリケーション アジア太平洋・アフリカ・中東地区統括 兼 インクルージョン&ダイバーシティ LGBTQダイバーシティ日本統括


1993年アクセンチュア株式会社(旧アンダーセンコンサルティング)入社以来、多くの業界、企業に対し、経営・ITコンサルティングを通じ経営課題の解消を支援。最近ではクラウドコンピューティングを大企業に導入する世界No.1のSalesforceグローバルアライアンスパートナーとして、日本とアジアパシフィック地区を統括し、各国で最大規模のチームを率いる。社内においてはI&Dリーダーとして、長年に渡りI&D活動を率先。日本オフィスにおけるLGBTQ Ally Committeeをリードし、国内LGBTQ Communityにはコンサルティング企業としての人的、スキル的貢献を推進中。

 

I&Dの取り組みは経営戦略そのもの


「インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)[*]の活動を、人事主導ではなく、私のようなクラウドファーストの部門の、ビジネス・プラクティスの前線にいるリーダーが、率先して推進しているところが弊社の特徴です。私たちは、誰もが平等な企業文化を構築することが、企業としての最優先課題だと考えています。つまり、I&Dの取り組みというのは、経営戦略そのものなんです。弊社は、様々な産業領域・ 業務領域において、ビジネスとテクノロジーを融合させると共に、デジタルの力を取り込むことで、お客様のイノベーション創出を支援する総合コンサルティング企業で、言ってみれば〈人が財産〉の会社です。ですので、職場において真のEquality(平等)を実現していることが何よりも重要で、そういう職場環境が、一人一人の社員が能力を十分に発揮し、結果を出すことにつながると考えています。多様性のある人材とコラボレーションしてシナジー(相乗効果)を出し、パフォーマンスをあげていかなければ、お客様にバリューを提供できないわけです」
[*]アクセンチュアではD&Iではなく、「インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)」が使用されている。

アクセンチュアでは、「スチュワードシップ」「ベスト・ピープル」「ワン・グローバル・ネットワーク」「クライアント価値の創造」「個人の尊重」「インテグリティ」。この6つのコアバリューをもとに、ジェンダー、LGBTQ、障がいのある方、クロスカルチャーの4つの領域において、I&Dの活動を展開しています。

まず、全領域に関わるものとして、2014年度から、管理職(部長レベル)を「インクルージョン&ダイバーシティスポンサー」に選出し、組織ごとの状況を考慮して、課題に応じたアクションをとれる体制を構築しています。そして、「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」への対策として、管理職向けに研修を実施し、全社員に向けてはオンラインでのトレーニングを展開しています。また、ボトムアップの仕組みとして、各領域に課題関心のある社員が組織横断で若手からシニアまで集まって、全社的に課題の解決にあたる「コミッティ活動」を行っています。これは、2006年に発足した「Japan Women’s Initiatives(JWI)」の取り組みがベースにあったといいます。では、LGBTQ領域では、どんな取り組みが実際に行われているのでしょうか。

2019年さっぽろレインボープライド参加時のもよう

「人事制度に関する問い合わせを、チャットボットという、AI(人工知能)を使用した自動問い合わせツールで行っています。当初は効率化のために始めたのですが、LGBTQ当事者の方から、敷居が低くて使いやすいという声が上がりまして。というのも、例えば、弊社には同性パートナーを認めるライフパートナー制度がありますが、それについて問い合わせをする場合、相手がAIであればカミングアウトを伴うことなく聞くことができます。心理的な負担が少なくて済むわけです。このシステムはとても評価を受け、2018年の『work with Pride』のベストプラクティス賞をいただきました。また、弊社ではアライ(支援者)登録制度というのがあって、多くの社員が登録し、アライを中心にLGBTQへの理解を促進する活動を行っています」

チャットボット Randy-san

篠原さんがリーダーを務めているLGBTQ 領域グループの自主活動についても具体的に聞いてみました。

「私がLGBTQダイバーシティ日本統括になったのは数年前ですが、それ以前から『東京レインボープライド』(略称TRP:東京で毎年春に開催される、LGBTQの存在や課題を可視化し、すべての人の“性”と“生”を祝福するパレードイベント)には個人的に参加していました。現在、LGBTQ アライコミッティには、いくつかの分科会があります。社内向けの活動をする人、NIJIT(IT業界のLGBT交流会)や『プライドハウス東京』に関わる人、あるいは、TRPのブースやフロートの準備をする人などに分かれ、定期的にミーティングをしながら取り組んでいます、合わせると40〜50人のメンバーがいて、春のTRPから6月の『PRIDE月間(Pride Month)』、そして秋の『RAINBOW CROSSING TOKYO』くらいまで、ずっと盛り上がって活動しています」

大阪で開催された『レインボーフェスタ!2019』に参加したときのもよう

 

アクセンチュアらしいイノベーションを社会に向けて


「テクノロジー」は、アクセンチュアが提供するサービスの中の大きな柱の一つで、それをうまくI&Dの課題に取り込んだ好例が、先のチャットボットです。「テクノロジーをうまく利用して、I&Dの課題解決に還元していくことは、とてもアクセンチュアらしい方法です」と篠原さんは言います。障がいのある方の領域でも、テクノロジーを生かしたツールを開発して活用しています。

「聴覚に障がいのある方も、弊社ではたくさん働いています。その方たちとのコミュニケーションをスムーズにするために、〈Trans Communicator〉という音声認識ツールを開発しました。発話内容を、AIとトランスレータを使って、リアルタイムでテキストにして画面に文字として表示するんです。辞書登録機能もありますし、非常に高い精度で文字化してくれます」

この他にも、例えば、ジェンダーの領域では、産休・育休を取得したあとに、復職がスムーズにいくようにサポートする「ワーキング・ペアレンツ支援」が充実していたり、また、クロスカルチャーでは、2013年7月に「Japan Cross Culture Committee」が発足し、イベントやパネルディスカッションなどを通して、部門を超えて社員同士がリアルに交流できる場を提供しています。

 

各種アワードや指標で外部からも高い評価


このようなアクセンチュアのI&Dの取り組みは、外部からも高い評価を得ています。例えば、リフィニティブ(旧トムソン・ロイター)の「ダイバーシティ&インクルージョン・インデックス」では、2018年、19年と2年連続で世界第1位を獲得。また、LGBTQに関しては『work with Pride』の「PRIDE指標」で2016年から4年連続最高評価の「ゴールド」を、そしてジェンダーでは、『日経WOMAN』誌の「女性が活躍する会社BEST100」で2020年に総合2位を受賞するなど、まさに他の追随を許さないI&Dの世界的先進企業だと言えるでしょう。そんなアクセンチュアが、今後、どのような方向性で、どこを目指してI&Dを推進していくのか。とても気になるところです。

「誰もが平等で、自分らしく働くことができる職場環境の醸成は、これはもう、終わりのない道のり、ずっと掲げ続けていくべきことです。それを前提として、これからのキーワードは〈イノベーション〉だと思います。イノベーションというのは、個人の能力だけで起きるものではありません。多様な人たちによる多様なチームで、お互いを認め合いながら、いろいろなアイディアを出し合い、シナジーを得たりする中で、イノベーションは実現できるのです。すでにI&Dが当たり前で空気のような存在になってきているのはいいのですが、その先が重要です。会社として、クライアント企業やマーケットに対して、イノベーションをどのようにしたら還元できるのか。トライしていきたいです。そのためにも、ジェンダー、LGBTQ、障がいのある方、クロスカルチャーの4つの領域において、それぞれ一つ一つの活動がもっともっと大きくなっていくよう推し進めていければと思っています」

『work with Pride 2019』の「PRIDE指標」でゴールドを獲得し、喜びの記念撮影

 
最後に、「自分らしくはたらく」を軸に仕事を選びたい、学生、第二新卒を中心とする求職者へのメッセージをお願いします。

「アクセンチュアは誰もが自分らしく働くことができ、そういう職場環境を常に目指している会社です。特に〈平等〉を大切にしています。もともと男女の差もないし、年功序列もない。LGBTQの差もない。入社した時から何の差もなく、仕事に打ち込める会社です。一方で、〈自分らしく働く〉ということは、〈自分らしさ〉をアピールするのと同時に、〈相手の自分らしさ〉を認めていく必要もあるわけです。弊社には、外国籍の人もいれば、障がいのある人もいる。LGBTQを公表している人もいる。相手の自分らしさを認めながら、自分らしく活躍してくれる人にご入社いただきたいです。そういう人には、弊社の企業文化は居心地がいいし、働きやすいと思います」