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Update on :2020.09.17

多様な社員が集まりソニーは成長してきた。その継承が今のD&I

森 慎吾さん
ソニー株式会社
ダイバーシティ&エンゲージメント推進部

「企業もお城と同じもの。強い石垣はいろいろな形の石をうまくかみ合わせることによってできる。」「常識と非常識がぶつかったときにイノベーションが生まれる。」(井深大)

終戦からわずか半年後、「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」と創業されたソニー。創業期のソニーには、性別やバックグラウンドにとらわれない多様な人が集まった。創業者の一人である井深氏の言葉にも現されているように、ソニーが目指すものづくりには多様な価値観の集合体の中から新しい発想が生まれ、その結果次々と新しいアイディア製品が生み出された。

”ダイバーシティ”という言葉が一般的に使用され始めたのはつい最近のことだが、それは創業からのソニーの社風をそのまま表現した言葉といってもいい。「あえて今さら」という思いもある反面、あえて今D&Iへの取り組みを社外にも積極的に発信していく意図はどこにあるのか、ダイバーシティ&エンゲージメント推進部の森慎吾さんにお話をうかがった。

 

森 慎吾さん

ソニー株式会社 ダイバーシティ&エンゲージメント推進部

人事、ダイバーシティ、採用等を担当。一人ひとりが会社とともに成長し活躍できる環境づくりに取り組み、ソニーの価値観に共感し、新しい価値をソニー取り入れてくれる人を増やしていきたい。

 

流行りだからではなく、新しいものを生み出していくために

ソニーで初の女性管理職が生まれたのは1973年。1978年には、障がい者の社会参加を支援するソニー・太陽の前進であるサンインダストリーを設立。”女性活躍推進”という言葉や”特例子会社制度”という法律が制定されるずいぶん前のことだった。

「女性、障がい者、外国籍の方、いろんな社員が社内にはいらっしゃって、その人の属性というよりも、ソニーの価値観に共感し、ソニーでやりたいことがある人が集まっていると思います」

「ソニーに限らずどんな創業期の企業もそうだと思いますが」と話す森さんだが、世界を代表する企業となった今、あえてダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)に取り組む意味はどこにあるのだろうか。

「会社が小さく意思疎通が早いときはあまり意識しなくてもいいのかもしれませんが、大きくなっても多様性を維持し続けたいと思ったら、意図的になにかを仕掛ける必要はあると思います。なぜなら多様性がより豊富になるからです」

当然のように進んでいた女性の管理職登用や障がい者雇用に関しても目標数字を置く必要性がでてきた。LGBTに関しても、これまでは何か案件が発生したら個別で対応していたが、あえて制度を整理する必要を感じた。

「当たり前にやっていることだし、あえてD&Iをやらないという選択もあるかもしれないですが、それだと個人の感性や力量だけに頼ることになってしまいます。また間違った感覚になってしまうこともあります」

たとえば、特性や属性にかかわらずスキルや意志がソニーに合うと思う人であれば一緒に働いてもらうことを検討するが、合わないかもしれないと感じお断りした場合、多様性が損なわれてしまう恐れもあるという。

「人の意識だったり価値観は違うのが当たり前。その部分を無理に統合する必要はないと思います。そういう考えもあるのか、そういう人もいるのか、ということを理解して受け入れられるように、社員一人ひとりの意識を高めることはずっとやっていかないといけないと思っています」

企業のイメージアップや流行りだからやっているのではない。あくまでもソニーの機軸は、誰もが自由闊達に新しいものを生み出すこと。そのための土壌をつくるためにD&Iに取り組んでいる。

 

会社の中にいる人だけが変わっても解決しないのがダイバーシティ

自社ホームぺージでの発信や、社会活動に参加することで、D&Iへの取り組みを積極的に広めているソニー。LGBT当事者が参加してのパネルディスカッションや映画上映会には社外の人も招待した。

「ソニーという会社の建物、中にいる人だけが変わっても解決しないのがD&Iなのかなと感じます。たとえばD&Iの社外ホームページや社外の講演会や採用活動でも、外の人にも発信する大切な取り組みです」

会社の取り組みを知ってもらい、社内の人やソニーへの就職を希望する人に安心してもらう目的もあるが、社会全体に対しても、ソニーだからやれるのでは?ということではなく、やれることをみんなで行っていきましょう、というメッセージとして発信している。

LGBTへの施策も進んでおり、プライド指標は毎年ゴールドを取得、米国ソニーグループはヒューマン・ライツ・キャンペーン財団の調査によるLGBTQ企業平等指数で最高スコアを獲得、各国でプライドパレードに参加し、ロゴとともにレインボーフラッグを掲げている。そんな活動の影響か、今では採用面接でカミングアウトをする応募者もいる。

「面接のときにカミングアウトされることは以前はなかったですね。ソニーの面接だったら言ってもいい、言っておいたほうがいいと思われているのかもしれません」

森さんが入社したときより社内の意識は変わってきたと感じる。

「社内のアンテナが高くなったような感覚があります。障がい者雇用で言えば、いまさらなんでやらなきゃいけないの?とか法律のためやる、など言われたこともありましたが、「どんな属性でもソニーにコミットする人なら来てほしいよね」という風に少しづつ意識は変わってきたという感覚はあります」

 

嫌われたとしてもきれいごとを言い続けなければならない

創業者の思いをぶれずに発展させていく下支えが、ソニーでD&Iを担当する森さんのミッションでもあるといえる。

「障がいがあるゆえにできないことは会社ができる範囲で配慮し、会社に貢献してくれる人は積極的に受け入れましょう、ということはD&I担当が言わなければいけません。「そうは言っても現実は・・・」と思われても、取り組みの姿勢を表明し協力を仰がなければならないこともあります。嫌われたりもすることもありますが、言い続ける人がいないと現実に流れてしまうこともあると思うので、それはD&I担当者として施策を考えるうえで忘れてはいけないところだと思っています」

森さんにとって嬉しいのは、社員が明るく働いて成果を出して成長してくれること。どんな属性でも、「ソニーで良かった」と言われることが嬉しい。逆に「ソニーはもっとD&Iが進んでいると思っていたのに」というような声を聞くと辛い。

「ソニーのDNAが意識の中にはあっても、D&Iについての理解度に関しては、すべての社員に同じように期待するのは難しいと感じることもあります。これも多様性だと思います。学校やメディアで得られるD&Iについての情報も変化していきているので、自然と理解は促進されるかもしれません。しかし、だから放っておけばいいというのではなくて、D&Iを推進するという先鞭をつけていかなくてはいけないと考えています」

 

やりたいことに自分の属性で蓋を閉じないでほしい

最後に「こう生きたい」を軸に仕事を選びたいZ世代へのメッセージをお願いした。

「日本語が第一言語でないからとか障がいがあるからなど、それによりつらい経験をしていると後ろ向きになることもあるかもしれません。でも、やりたいことに自分の属性でふたを閉じることをしないほうがいい。自分の属性ではなく、やりたいことに情熱を傾けることのほうが楽しいと思います」

人と違うやり方や道筋で進めていかなければならないこともあるかもしれないが、ソニーの創業者である井深氏も盛田氏も「隣の人と同じ発言しても面白くない」と社員に伝えてきた。人と違う自分の経験を活かすこともできる。

「自分の体験を軸に商品開発をすることもできるし、これまでの人事制度を変えてやるとか、そういう気持ちを前面に出したほうがいいと思います。気にするなというつもりはありませんが、自分と違ってうらやましいという気持ちではなく、自分のやりたいこと、実現したいことをメインに持っていき、進む道、方向を自分の中で格上げしていったほうがいいと思いますね」

マジョリティといわれる人にも心の中に抱えているものはあり、その部分を表には出さず自己実現しようと挑戦している人もいる。大切なのはどこに自分に軸を置くかではないか、と森さんは話す。

「採用面接で、LGBTであることや障がいをもっていることを伝えてくださる方もいますが、そうでない人と同様に、あなたのやりたいことは何?という話をお伺いしています。決して配慮しないというわけではなく、働きがいがなければどんなに配慮されたって、仕事は面白くないですよね」

たとえば、ソニーのHPで「ダイバーシティなヒト」として紹介されている社員の話では、最後まで読んで初めて障がいのある方だとわかる記事もある。障がい者として働く人、ではなく「こんな面白い取り組みをしている人」として紹介されている。

「これをやるためにソニーに来た、という人がちゃんと働ける風土にすることが大切だと思っています。価値を提供してくれる人ならどんな属性の人でもソニーに入って挑戦してほしいし、それをバックアップするために組織を変えるのが我々の仕事だと思っています」

常識と非常識のぶつかりあいにより新しいものを生み出していく。創業から続くソニーのDNAに共感し、自分の価値を提供していきたい、そんな情熱を持つ人は自らの属性に囚われることなく、ぜひ挑戦をしてほしい。

企業情報:ソニー株式会社