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Update on :2022.09.05

点から線へ。そして面へ。 DEIは社会変革に向けた重要な鍵

髙畑有未さん/天野広樹さん
デロイト トーマツ グループ
Diversity, Equity & Inclusion(DEI)マネジャー/Clients & Industries・Brand Marketing Division

ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)も耳慣れた言葉になりつつあります。
そして、最近ではD&Iに「公平性」の意味を持つ「エクイティ」を加えた「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(以下DEI)」に取り組む企業も増えています。国内で最大規模を誇るビジネスプロフェッショナルグループである「デロイト トーマツ グループ(以下デロイト トーマツ)」も、DEIを「社会変革につなぐための必須手段」と位置づけています。今回は同グループのDEIチームでマネジャーとして活躍する髙畑有未さんと、マーケティング部門で働きながら、障がい者活躍推進PR活動にも参画している天野広樹さんにお話をお伺いしました。
 

髙畑有未さん
デロイト トーマツ グループ Diversity, Equity & Inclusion(DEI)マネジャー

各種DEI戦略・施策の立案から実行、登壇や発信のリードに加え、Deloitte Global/Asia Pacific(AP)とも日々連携し、Global/AP全体施策の日本でのローカライズ・日本発のベストプラクティス展開を牽引。グローバルモビリティコンサルタント、海外・日本でのコーポレート企画系業務を経て現職。

天野広樹さん
デロイト トーマツ グループ Clients & Industries・Brand Marketing Division

2010年12月にデロイト トーマツ グループに入社、2017年6月より現職。学生時代より独学でWebプログラミングを学び、入社後はマーケティング部門にて社内イントラサイトや公式Webサイトの管理・運用を務めている他、障がい者活躍推進活動にも積極的に取り組んでいる。
 

多様性の本質に触れたことで、点が線でつながり「自分の道」を切り拓く

 
デロイト トーマツは、監査・保証業務、リスクアドバイザリー、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、税務、法務などを提供する国内最大級のビジネスプロフェッショナルグループとして知られています。
「デロイト トーマツには多様な特性を持った人が大勢いるのに、その『違い』が『強み』としてフルに活かされていない印象がありました」と入社当時を振り返るのは、髙畑有未さん。
「えるぼし」や「くるみん」のほか、PRIDE指標のゴールド認定や、「D&I Award 2021」のベストワークプレイス認定、大企業部門セミグランプリを受賞するなど、社会評価的にもD&Iが進んでいるとされる組織のDEIマネジャーから、そんな意外なお言葉をいただき、少々驚きました。髙畑さんがそんな印象を受けたのは、かつて海外で勤務していた際に多様性の本質に触れた経験があったからだそうです。
「200名ほどの比較的小規模なオフィスでしたが、約50カ国の人が勤務していました。出身国も違えば、育ったバックグラウンドも違う。最初は言葉が通じるのに話がどうもかみ合わず、戸惑ったこともたくさんありました。しかし、それらの『違い』がそのまま同化されずに活用されることで、私には想定すらできなかったようなアイディアが生まれ、それがそのまま新たなコンテンツやバリューになることが何度もありました」
まさに多様性を生かし、新しいイノベーションを生むというD&Iの重要性を実体験していた髙畑さんだからこそ、多様性という強みを活かしきれていない当時の同グループの現状に課題を感じたのかもしれません。入社後に社内のプロジェクトでダイバーシティチームと一緒に仕事をしたことをきっかけに点が線でつながり、入社して3カ月で異動願いを出して同チームに異動。D&Iに携わることが高畑さんの運命だったのかもしれません。
 

「違い」を「強み」にするためのエクイティ

 
デロイト トーマツのDEIチームは、ジェンダー、LGBT+、多文化共生、障がい者インクルージョンなどさまざまな切り口で施策を展開していますが、高畑さんは「多様な人材が個性を発揮し、周囲との共感を持ちながら生き生きと働ける環境づくり」を意識して施策を行っているそうです。また、同社ではD&Iに加えて、「公平性」の意味を持つ「エクイティ」を加えた「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」を念頭に置いて推進しているのが、大きな特長です。
「個々の『違い』を『強み』にするためには、単に一律で平等な機会を提供するのではなく、個人の違いを考慮したうえで、それぞれに公平な機会を提供することが重要だと考えています」

これまで多くの施策を展開している同グループですが、社内外から高い評価を得ているのが「パネルプロミス」です。これは社内外のイベント、フォーラム登壇時のパネリストを男性40%、女性40%、多様性の調整枠20%の比率にしようとする取り組みです。
「ジェンダー平等の観点はもちろんのこと、これまで登壇機会の獲得が少なかった属性・特性の人を20%含めることで、議論や視点の多様性をさらに推進するのが狙いです。例えばあるテーマで登壇候補者が男性しかいない場合は、どうして男性しかいないのか、それを突き詰めると本質的な課題や次にとるべきアクションが見えてきます。まだ試行錯誤の段階ですが、多様性から生まれる議論が新しい価値に結び付つくことを期待しています」
 

DEIの活動も点から線へ、そして面へ

 
D&I先進企業ともいわれるデロイト トーマツですが、一朝一夕に進んだわけではありません。
「私たち全員が無意識のうちに抱えているバイアス。具体的にいうと、これまでの成功体験から形成された『あるべき論』などの固定概念や、長時間労働が評価されやすいといった慣習に起因する考え方なども、DEI推進を阻む障壁のひとつです」
人は自分に似ていたり、共通点が多かったりする人に対して、親近感・共感・安心感を感じがちです。例えば、初めて会った人と出身校が同じだったということから、その人がまるで十年来の友人のように感じた経験がある人も多いでしょう。とはいえ同じ価値観や認識を持っている人ばかりでは、生まれてくるアイディアにどうしても限界が生じ、新しいバリューやイノベーションを創出することは難しいといわれています。多くの企業がD&I、DEIに取り組んでいるのも、そのためです。
「かつてはDEIの取り組みは経営層や担当チームが行なうのが一般的でしたが、最近では社員一人ひとりが進んで取り組むという意識が芽生えています。たとえば、男性社員がジェンダー平等に取り組むことで、これまで女性視点になりがちだった施策に変化が起き始めるなどの進化がみられ、DEIの推進も、点が線になって面になっていく段階に差し掛かっていると思っています。また、働き方をはじめ、組織と個人の関係性も変化してきている中で、これまではいち企業が支援を行なうことではないとされていたような領域、例えばDVやメンタルヘルス、家族の介護なども、デロイト トーマツではエクイティの観点から既に施策を導入しており、今後も積極的に社会課題と向き合ったうえでDEI推進に向けて取り組んでいく方針です」
 

障がい者の採用は、福祉ではなく、プロを育成する視点で

 
現在、マーケティング部門に勤務している天野広樹さんは、2010年12月に障がい者中途採用で入社。30歳を目前にしていた天野さんにとって、大学卒業以来久しぶりの就活だったそうです。
「当時は、今よりも障がいのある人に対する就職の門戸が社会全体で狭かったこともあり、デロイト トーマツから内定の連絡を受けたときは二つ返事で受諾しました。就活についての知識もあまりなく、デロイト トーマツが、障がいのある人を積極的に受け入れている企業であることも後から知りました」
デロイト トーマツでは福祉の観点ではなく、「業務のプロフェッショナル」として育成する視点で障がい者を採用。スキルや自信の向上につながるよう、本人の意向や希望を周囲と丁寧に共有しながら、サポートをしているそうです。天野さんはマーケティング部門に所属し、社内イントラサイトや公式Webサイトの管理・運用を担当。
「学生時代から独学でプログラミングを学んでいましたが、実際に仕事として受け持つのは初めてだったので、正直不安はありました。社会人経験もなかったので、上司や先輩社員とのコミュニケーションの仕方など基礎から教わりました」
デロイト トーマツには、有限責任監査法人トーマツの特例子会社であるトーマツチャレンジド株式会社の他、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社・デロイト ートーマツ税理士法人共同運営の企業内マッサージルーム(視覚障がい者のあん摩マッサージ指圧師の雇用)や、グループ内各法人で運営している農園などもありますが、一般社員として障がいのない社員と同じ部署で働くことも一般的だそうです。天野さんは、障がい者活躍を推進する人事メンバーと連携をとりながら、障がいに関するブログ記事を執筆して会社のWebサイトに掲載したり、社内のウェビナーイベントを企画したりと、自身にある障がいを起点に、その活躍の場を広げています。
 

勤務以来、自信が付くとともに症状も改善

 
「入社3年ぐらい経った頃に、直属の上長とその上の役員から呼ばれて会議室に行くと、『天野さんがいてくれて、本当に助かっている。天野さんがいないとホームページの制作も間に合わない。障がいの有無にかかわらず戦力として高く評価しているから、これからもよろしく』と声をかけてもらったことが、大きな自信になりました」
先輩や上司に自分の仕事ぶりを認められることは、誰もがうれしいことであり、それが自信につながることは多々あります。障がいがあり、少なからず不安な気持ちで仕事をしていた天野さんにとってはなおさらでしょう。勤務以降、症状も安定し、以前より身体にかかる負担の少ない薬を処方されるようになったそうです。
「以前は睡眠導入剤を服用していましたが、今では睡眠導入剤がなくても不安なく眠れるようになり、朝もしっかり起きられます。主治医からは『天野さんは仕事を通して自分のことを冷静に分析できるようになったし、周りのナチュラルサポートもよい方向に作用していると思う』と言われ、デロイト トーマツに勤務していることをとてもうれしく思いました。これからも長くデロイト トーマツの一員として、バリューを出していければと思います」
 

自分らしく働ける環境を一人ひとりが築く

 
最後になりましたが、髙畑さんと天野さんから読者の皆さんにメッセージをいただきました。
「就活している学生さん、第二新卒の皆さんの中には、やりたい仕事や興味がある仕事が絞れず、自分の『道』がわからないという気持ちを持っている人もいるかもしれません。でも、道はひとつでなく、たとえ希望と異なる道を歩んでいても、それがきっかけで新しい目標や夢が見つかり、思ってもみなかった道につながることもあります。経験したことは決して無駄にはなりません。最初からひとつの仕事、ひとつの道に絞らなくてもいいと思います。『自分らしく働く』ことを軸に仕事を選ぶのも選択のひとつですし、デロイト トーマツはその思いに応える会社です」(髙畑さん)
「デロイト トーマツは、私のように障がいがある人はもちろん、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが活躍している会社です。私も、仕事という枠にとどまることなく、障がいのことをオープンにして、いろいろな活動にも参加していますが、ここまで成長できたのはデロイト トーマツのおかげだと感謝しています。障がいがあることに悩み、自分で自分の限界を決めてしまっている方もいらっしゃることと思いますが、デロイト トーマツは、それを多様性のひとつとして当たり前に受け止めてくれる会社です。そして、私がそうだったように、仕事を通じて様々な成長を後押ししてくれるはずです。一緒に頑張りましょう」(天野さん)
 
オフィス内でのイベントの際に、記念撮影した写真