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Update on :2022.03.28

「企業で働きながら社会貢献ってできますか?」 〜多様なキャリアの描き方(前編)

長谷川貴司さん/河田瑶子さん
日本電気株式会社(NEC)/ユニリーバ・ジャパン

仕事を通じて社会に貢献したい。
そんな想いを体現し企業で働く先輩たちに、キャリアや仕事内容について伺いました。
(2021年10月17日配信。動画はこちら
 

本業と並行して社会貢献にアプローチすること

 
(藥師)企業の中で働く中で、どのように社会の中に携わっていくかとか、貢献していくか、それをどのようにキャリアにしていくかということについて、それを体現している先輩たちにお話を聞いてみたいと思っています。
 自分らしく働くことを考えるときに、人によって大事にしている要素は違うと思います。例えば、こういう職場で働きたいという軸から仕事を選ぶ人もいれば、どのように社会に携わりたいかとか、社会に対してどういった価値を提供したいかとかというのを重要視して仕事を選ぶ人もいるかと思います。
 学生時代とかに様々なNPOとかでボランティアしていたとか、学生団体を立ち上げたとか、留学していたとか、様々な領域で社会活動に携わっていた人たちから、企業に就職したらこれまでのような活動はできないのかと相談をいただくこともあります。
 だったらNPOに就職する方がいいのかとも聞かれるのですが、実はそれ以外の選択肢もあると思います。企業の立場から社会課題に携わることができるし、逆を返すと、企業の中にいるからこそできる社会へのアプローチというのがたくさんたくさんあると思っています。
 また、自分が携わっている仕事だけではなく、例えば兼業とか副業とか専門性を活かしたボランティアであるプロボノなど、社会への携わり方はすごくたくさんあるので、そういった様々なアプローチから社会貢献に携わっている先輩たちにお話を伺いたいと思います。

(中島)様々なキャリアの描き方を実際に実践している方の言葉から考え、様々な働き方ができる職場について知っていただくということで、皆様と一緒に考えていければと思っています。まず、ユニリーバ・ジャパンの河田瑶子さんです。よろしくお願いします。

河田瑶子さん
ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社
ホーム&パーソナルケア グローバルブランドマネジャー ラックスヘア


2011年ユニリーバ入社。ダヴ、ヴァセリン、ラックス、ドメスト等のマーケティングを経て、ラックス ヘアの製品や広告の開発、営業戦略を担当。2020年3月、ラックス ソーシャルダメージケアプロジェクトを始動。
※役職等はイベント当時
 
(中島)そしてもうお一方、NECの長谷川貴司さんです。

長谷川貴司さん
NEC(日本電気株式会社)
人材組織開発部インクルージョン&ダイバーシティチーム


NECで働きながら作曲家、ダンサーとしても活動。インクルーシブダンスチーム「NECダンサーズ」代表、NPO法人ダンスラボラトリーの役員も務め、NEC×音楽&ダンス×地域貢献(プロボノ)をバランスよく融合させる働き方を追求。
 
(中島)それでは河田さん、長谷川さん、それぞれから自己紹介をしていただこうと思います。河田さんからお願いできますでしょうか。
 

ユニリーバのパーパスを通して製品を展開する

 
(河田)河田瑶子と申します。2011年に新卒でユニリーバ・ジャパンに入社して11年目になります。学生の頃はマーケティングをやりたいと思い、消費者のニーズをくみ取ってそれを製品に反映するというような、ものを通して価値を提供したい想いがあって、ユニリーバに入社しました。
 入社以来マーケティング部門に所属していて、今はラックスヘアというヘアケアでナンバーワンのブランドを担当しております。
 私生活の方では、実は3児のママで、産休育休をこの11年間の中で3回繰り返しながら、今フルタイムで働いています。
 ユニリーバ・ジャパンには「WAA」(Work from Anywhere and Anytime)という、いつでもどこでも働ける制度があって、コロナ禍の前からリモートワークができその後コロナ禍で原則在宅勤務に移行し、1年半以上フルタイム在宅勤務をしています。

 ユニリーバは、日用品や食品のカテゴリーの中で様々なブランドを展開している会社です。日本を含め、世界中に拠点があります。
 ユニリーバの大切にしているビジョンとして、「サステナビリティを暮らしの『あたりまえ』に」と掲げているところがあります。
 非営利団体ではなく、あくまで営利企業なので当然利益は出さなければならないのですが、ビジネスを成長させること、社会に貢献すること、環境負荷を削減していくことの三つを同時に実現することをユニリーバは大切に考えています。
 もう一つ、パーパスを非常に大事にしています。パーパスとは、存在意義、なぜそれが存在しているのか、大義ということです。
 ユニリーバには三つの大切な考え方があります。パーパスを持つ企業は存続する、パーパスを持つ人々は成功する、パーパスを持つブランドは成長をするです。パーパスという言葉は、社内で繰り返し日常的に使われています。
 
 
 パーパスを持つブランドは成長するという信念に基づいて、ブランドの戦略の中にも、先ほどの社会貢献や環境負荷の削減を織り込んでいます。
 2010年に発表した成長戦略「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」には三つの柱があり、そのうちの一つ「すこやかな暮らし」の分野では、若い世代の自信を向上するための取り組みを行ってきました。ダヴやアックスなどのブランドを通して、さまざまなメッセージを発信し、いろいろなアクティビティをしています。私が関わっているところだと、ラックスを通して、女性のエンパワーメントに取り組んでいこうとしています。
 ラックスは、シャンプー、コンディショナー、ボディーソープなどのブランドです。そういった製品を通じて、髪に輝きを与える、肌を清潔に保つ、良い香りでリラックスしていただくといったところはもちろん大切ですが、それだけではなく、現代社会を生きる女性がより自分らしく輝ける未来を一緒につくっていきたいという想いを持って、ブランドを展開しています。

(中島)企業としてビジネス面で成長や利益を考えていくことと同時に、社会に貢献することが会社のビジョンとしても示されている部分と、各ブランドが実際の商品やサービスを届けていくことが、社会の中でどんな意義を担うのか、どんな役割を担ってどんなメッセージ届けていくのかというところまで、こうやってデザインされているというのを聞いて、なるほどと思わされる部分がありました。
続きまして、長谷川さんからもぜひ自己紹介をお願いいたします。
 

キルギスでの経験

 
(長谷川)NEC人材組織開発部インクルージョン&ダイバーシティチームの長谷川貴司と申します。
 NECはそれこそ、海底ケーブルから人工衛星まで作っている非常に幅広いICTテクノロジーの会社なんですけども、今日は私のライフストーリーや経験をお伝えしようと思っています。こんな奴がいるよねっていうところから、NECがどんな会社なのかというのを知っていただけたら嬉しいです。

 私は2003年にNECに新卒で入社しました。仕事は新規事業の開発を担当しています。大学ではAIについて専攻していたので、主にAIビジネスの開発を今年の4月までしていました。
 ですが、今から10年前の2009年から2011年の2年間、ちょっと寄り道をした経験があります。これが私の人生にとって非常に大きな貴重な体験になりました。
 会社を休職して、JICAの青年海外協力隊に応募して、キルギスという旧ソビエト連邦から独立した中央アジアの国に行きました。そこで11年制の学校、日本でいうと小学校と中学校と高校が一緒になったようなところで、ICTの導入や、PCの指導をロシア語で頑張っていました。
 当時の生徒は今25歳ぐらいになるのですが、非常に多方面で活躍をしていて、例えばヤーナという女子生徒はその後、日本語のスペシャリストになり、日本に留学してきて東京で会うことができました。今はキルギスに帰国して現地の日本大使館のナショナルスタッフとして働いています。そういったところで私が行った意味はあったと感じていたりします。

 なぜこういう寄り道をしたかというと、NECに私が入った理由は、将来グローバルに活躍したい、世界を股にかけて頑張りたいみたいな夢があったので、日本に本社があるメーカーのNECを選びました。
 ただ、入社当初、あんまり海外とは関係ない仕事をしていて少し悶々としてたんです。それで海外へ行かせてもらえないならもう自分で道を作るしかないと思い立って、JICAの青年海外協力隊で海外へ行けるということがわかって、会社と交渉をして2年間行かせていただきました。非常に良い経験になったと思います。
 2年終わって帰国した時は、現地で身につけたロシア語だとか、現地の人脈だとかをNECの海外ビジネスに生かそうと思っていましたが、自分がやりたい仕事をデザインするという考えがまだ当時なく、あまりそういう希望は叶わず、チャンスも得られず、元の部門に戻って、また新規事業開発を粛々とやっておりました。
 ただ、2年間、日本を離れて海外で生活したという経験は、自分にとって、非常に大きな価値観の変化や、行動力が身に付いたっていうこともあって、日本に帰ってからのいろんな取り組みが実を結び始めてきました。そういうこともあって、帰国から10年経った今年の5月に、自らの意思で異動してインクルージョン&ダイバーシティのチームで、今は障害者の雇用とLGBTQの理解促進、あと働きやすい環境作りということを仕事にしています。
 

社業以外でもできる活動

 
 ここから本題になってくるんですけども、仕事以外にも私はいろんなことを会社以外でしています。そのうちの一つが副業。NECでは兼職と言うんですけども。あとプロボノ活動ですね。
 まず兼職につきましては、私はDJ Vodkaという名前でクラブDJや、あと作曲家として、DJや、ご当地アイドルや、ダンスチームに曲を作って提供するという活動をやらせてもらっています。
 この特殊スキルは、実は2年間キルギスにいたときに学校の生徒が私に教えてくれて、じゃあ日本で本格的にやろうと思って始めたことです。キルギスでの経験がここにも繋がっているわけです。
 そういう副業をやりながら、今度はもっと音楽を使って地域貢献みたいなことができないだろうかと考えました。勤務先である川崎市は音楽の街でもありストリートダンスの街でもあるので、相談したら何かヒントが見つかるかもしれないと思って、川崎市役所に行って、自分はこういうスキルがあるんだけど、地域貢献とか、何かできないですかねって言ったときに、NPO法人のダンスラボラトリーさんをご紹介いただきました。このNPOは障害者のためのダンス教室や、障害福祉施設にダンスインストラクターを派遣する事業をしているNPOで、私はここの方々と話をして意気投合しまして、役員に就任して作曲と団体の運営支援みたいなことをやらせていただいてます。これは私個人のプロボノ活動ですね。
 このプロボノ活動にもっとNECや社員を巻き込んだら面白いんじゃないかと思いまして、NECダンサーズという社内ダンスチーム、インクルーシブダンスチームって言ってるんですけど、そういうダンスチームを作りました。

 
 
 このチームは本当に様々なメンバーがいて、多様なメンバーが混じり合って、障害あるなしに関係なくみんなで一緒にステージに立って、ダンスパフォーマンスで輝いて、NECのインクルージョン&ダイバーシティを皆さんに知ってもらうみたいな活動をしています。
 この一環で、NECの川崎の武蔵小杉の事業場に公開空地という、地域の方々がいろんなことができる場所があるんですけども、もっとここを地域に開くことによって、地域貢献みたいなことが、地域共生ができるんじゃないかということを考えまして、今は仕事とまた別に、地域共生活動として、社内のボランティアを集めて音楽やダンスのイベントだったり、朝活に使ったりとか、ランチタイムヨガだったり、あと夜は星空ディスコみたいなことをやっています。
 あと、月1回はこども食堂というのをしていまして、例えば4月はこども食堂の実施団体とラーメンの一風堂さんと協力しまして、一風堂のラーメンキッチンカーを敷地の中に入れて子供たちにラーメンを食べてもらいつつ、ダンスとかも一緒にやっちゃうみたいなこともしています。
 最後になりますが、ダンスを使ってNEC社員の健康増進ということも実はやろうと思ってまして、NEC健康保険組合とNECダンサーズの共同企画で『踊ろうぜ、インクルーシブダンス!』という動画のダンスプログラムを作っています。これは社員だけではなくてYouTubeで公開していますので、あらゆる方がインクルーシブダンスに取り組めるようになっています。ぜひアクセスしていただいて、一緒にダンスを覚えて健康になって、いつか私達と一緒に踊っていただければなと思っています。
 以上、本業と副業とプロボノとボランティアが融合したような働き方というのをずっと追求しています。こんな奴がいるよっていうのを知っていただけたらありがたいです。

(中島)個人でのご経験やプロボノ活動のご経験が今の部署選択やお仕事選択に繋がっているところと、社外でのご活動だったり、実際にご自身が個人で始められたことが、社内でのお取り組み、巻き込みや、会社の地域貢献にも繋がっていっているというところ、とても興味深く聞かせていただきました。
 実際にここでのご経験が今、ダイバーシティ&インクルージョン、NEC様の場合はインクルージョン&ダイバーシティというふうにおっしゃっていますが、そちらのお仕事にどんなふうに生かされているのか、というようなところも今後お話聞ければなと思っています。

(後編へ続く)