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Update on :2020.09.07

特定の方をサポートするのでなく、 新しいビジネスやサービスを「共創」することを目的に

清水衣梨奈さん
株式会社丸井グループ
サステナビリティ部

「すべてのお客さまのために」をキーワードに、ダイバーシティ&インクルージョンを推進している丸井グループ。社員や取引先を含めたすベてのステークホルダーに対してもダイバーシティ&インクルージョンを視点にした「共創価値」経営を進めていることで知られています。経済産業省による平成30年「新・ダイバーシティ経営企業100選プライム」に丸紅グループ、住友林業グールプなどとともに選出されたことも記憶に新しいところでしょう。では、丸井グループはどんなダイバーシティ&インクルージョンを推進しているのでしょうか。具体例を交えてその経緯や将来像をサステナビリティ部の清水衣梨奈さんにおうかがいしました。


清水衣梨奈さん
株式会社丸井グループ サステナビリティ部


大学では経営学を学び、「誰かの役に立つ仕事をしたい」と2016年に丸井グループに入社。入社して3年間は新宿マルイ本館で婦人服販売業務や後方支援担当を経て、2019年4月より現職サステナビリティ部に着任。店舗所属時から「マルイミライプロジェクト(現ダイバーシティ&インクルージョンプロジェクト)」に参加をするなど、以前からダイバーシティ&インクルージョン推進活動に参画していた。


「年齢・性別・身体的特徴などを超え、すべてのお客さまに楽しんでいただける商品・サービス・店舗のフロントランナーをめざす」ことが丸井グループの使命


丸井グループというと、駅前で見かける「〇I〇I」のマークを思い浮かべる人も多いでしょう。家具の割賦販売から始まり、日本で初めてクレジット・カードを発行したり、時代や顧客ニーズの変化に合わせ、小売・金融一体の独自のビジネスモデルを推進し続けています。柔軟にビジネスモデルを変革し続ける一方で、働き方改革にも着手し、男性・女性育休取得率100%実現や残業時間の削減など、群を抜いた改革を進めていることでも知られています。そんな丸井グループは、現在「年齢・性別・身体的特徴などを超え、すべてのお客さまに楽しんでいただける商品・サービス・店舗のフロントランナーをめざす」を合言葉にダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)に取り組んでいます。
「丸井グループには『お客さまのお役に立つために進化し続ける』という経営理念が脈々と受け継がれいます。かつてはお客さま=ファッションへの興味が高い若者層と考えていましたが時代が変わるにつれ、幅広い年代の方々に選んでもらえる商品やサービスを提供するという考え方に変化してまいりました」


「ユニバーサルマナー検定」「LGBTQ研修」を通じて社員の知識の向上と意識改革を図る


大きな話題を呼んだ「東京レインボープライド2019」のバレードです。

「当グループは、入社すると基本的には店舗へ配属されます。私も婦人服の販売スタッフとしてキャリアをスタートしました。もともと人と接することが好きな社員が多いようにも感じますが、売場で実際に接客することで『どうすればお客さまのお役に立てるのか、お客さまに喜んでいただけるのか』を常に考えることを学びます。お客さまやさまざまな団体からお褒めの言葉を頂いたり、実績を評価していただけるようになったのも、こうした企業風土があったからこそだと思っています」

ダイバーシティ&インクルージョンプロジェクト活動の様子。そのほか、社内では「ユニバーサルマナー検定」や「LGBTQ研修」などを開催し、社員自らが体験をすることで、D&Iについての理解度を深めています。

D&Iに取り組んでいるが、なかなか成果が表れないという企業の声も少なくありません。その大きな要因のひとつとも言われているのが、D&Iに対しての社員の理解不足、誤解や偏見などが上げられることが多いようです。では、同グループではどう対応しているのでしょうか。
「『ユニバーサルマナー検定』や『LGBTQ研修』を定期的かつ必要に応じて開催して、知識を深めるとともに社員の意識改革に積極的に取り組んでいます。最近ではグループという枠を超えてテナントさまやお取り引き先企業さまの間でも、こうした研修を受けたいという申し出が増え、D&Iに対しての意識が拡大していることを実感しています」
車いすを利用される方は足がむくみやすいので、そちらの点も考慮して商品のご提案をしたり、視覚障害のある方には、お札の種類をわかりやすくして渡すといった、マルイスタイルの接客もこうした取り組みの中から自然発生的に生まれたのでしょう。

一方、ハード面では、全国の丸井グループ店舗では、ユニバーサルデザインを推進。なかでも「博多マルイ」の店づくりでは、九州大学や一般社団法人生き方のデザイン研究所の協力のもと、障がい者の商業施設における課題をユーザーワークショップ形式で検証を繰り返しオープンに至ったそうです。

「トイレへの距離を表示することで、高齢者や車イスをご利用の方も安心してご利用いただけるようにしたり、電動車イスの方に安心してお買物いただけるよう充電スペースを用意しました。オープン後は他店舗と比べても、車いすを利用するお客さまの来店数が非常に多いという話を聞いております」


丸井グループの目的は、マイノリティをサポートするではなく、共に考え『共創』すること


丸井グループは、「東京レインボープライド2016」に初協賛し、翌2017年、レインボープライド会場にてブースを初出展。2019年には代々木公園に向かう公園通りや神南通りに連続して掲出される街路灯フラッグや、渋谷マルイの巨大壁面にバナーを掲げるなど、LGBTQに関連する取り組みが大きな話題を呼びました。インターネット上でも「丸井の決断に拍手」というコメントが数多く寄せられたそうです。
「丸井グループのD&Iは、特定の方に向けてのものではありません。女性や障がい者、LGBTQなど特定の方々をサポートするということではなく、一人ひとりの個性、多様性を受け入れ、お互いを尊重し、共に考え共に創る『共創』により新しいイノベーションが生まれることをめざしています」

2017年、NPO法人ReBitとタッグを組み、有楽町マルイで「LGBT就活生応援!自分らしいスーツを探そう!」と題したイベントを開催したのもそのひとつです。
「特にトランスジェンダーの方が就活時にスーツ選びに困るという声を受け、男性型、女性型ともサイズの種類も増やし、また安心して試着や相談をいただけるよう完全予約制で行いました。こうした対応もあり、ご参加された方から『服を買うことがこんなに楽しいのは初めて』という声も多数寄せられました」

丸井グループでは、かつてスーツは男女のパターン(型)で異なる生地を使っていたましたが、上下で男女のパターン(型)をミックスして着用したいといったご要望を受け、性別にとらわれず、生地とパターン(型)を組み合わせられるように変更したそうです。これは丸井グループが目標とする「共創」が、実を結んだひとつの結果といえるでしょう。
「当グループも共に運営したReBitさんも手探り状態でのスタートでしたが、『すべての方々に喜んでいただけるように』という理念は同じだったことが、イベントが成功した要因のひとつだと思っています」

2020年6月にオープンした日本初のブラインドサッカー専用コート「MARUIブラサカ!パーク」

 

一方、パラスポーツ分野では、日本ブラインドサッカー協会(JBFA)とパートナーシップ契約を締結し、さまざまな共創の取り組みを行っています。2020年6月には国内初のブラインドサッカー専用コート「MARUIブラサカ!パーク」(東京都小平市花小金井)をオープン。
「芝の長さが異なる専用コートが2面あり、出場する大会に合わせてコートを選択できます。併設のクラブハウスは、同協会と協議し、ユニバーサルデザインを採用しています」

2020年7月、丸井錦糸町店にオープンした「ミライロハウスTOKYO」

さらに2020年7月には丸井錦糸町店に「ミライロハウスTOKYO」をオープン。同施設は国籍、性別、年齢、身体特性や能力などの多様性を力に変え、ユニバーサルデザインの考え方のもと、社会に新たな価値を創造するミライロ(大阪府大阪市)が運営する初のリアル店舗です。
「D&Iに関する情報発信と交流の拠点となり、多くの方々のライフスタイルをアップデートする“きっかけ”を提供する拠点としての役目を担っています。音のバリアフリーを実現するミライスピーカーや車いすの電動アシストなどを実体験できるほか、著名人によるトークセッション、コミュニティ単位の交流会やユニバーサルマナー検定、手話講座などの開催を予定しています」


「自分らしく働く」ことを軸にした就活。その姿勢を認めてくれる企業はきっとある


丸井グループはこうした顧客向けサービスを実施するとともに、社内制度の改革にも着手。2017年にはグループ労働規範を改定し、「性自認、性的指向」による差別待遇の禁止を明記したそうです。
「これはD&Iの考えのもと、社員一人ひとりが活躍できる環境を整えるべく『ワーキング・インクルージョン』の推進の一環として、LGBTQ等事者への配慮、対応を明確にするためのものです。さらに、2018年には配偶者向けの手当や福利厚生などを、事実婚や同性パートナー婚にも拡大。従来の「配偶者」の呼称を「パートナー」に変更し、休暇や手当、福利厚生などの制度を適用しました」

新しいことにチャレンジするとき、えてして安全策をとりがちですが、まずやってみて、出てきた意見をもとに、さらに調整しながら新しいビジネスの確立を図るというのが、D&Iのフロントランナーとしての丸井グループのスタイルなのかもしれません。

「D&Iを推進するようになってから、無理とあきらめないで、挑戦してみよう意識がグループ全体に広がり、通常業務をしていても活気があふれるようになりました。他社さまから『丸井さん、頑張ってますね』とお誉めの言葉をいただけるようになったのもうれしいですね」
こうした丸井グループの企業理念に共感して、就職を希望する就活生が増えているそうです。昨年の「RAINBOW CROSSING TOKYO」に参加したことをきっかけに丸井グループに入社したという新入社員からメッセージをいただいたので、最後にご紹介します。
「『自分らしく働く』ことを軸にとした就職活動は大変かもしれません。ですが、その軸を大切にすることは、これからの社会人生活においての大きな基盤になり、自信にもつながると思います。理解してくれる企業は必ずあり、企業にとっても自分らしさを大切にしている人は魅力的に感じるはずです。ぜひこの就活で自分らしく働ける場所を見つけられることを願っています」