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Update on :2022.10.20

旺盛なチャレンジ精神と意気を言い合う風土が、 D&Iの推進力に。

小山大作さん/高橋志乃さん
ラッシュジャパン合同会社
コーポレートコミュニケーションマネージャー/ピープル(人事)リクルーティングマネージャー

1995年に英国で誕生したナチュラルコスメブランドLUSH(ラッシュ)。1999年に日本で事業をスタートし、現在までに全国に76店舗を展開しています。新鮮な野菜や果物など、エシカル(倫理的)に配慮した原材料の調達や販売にこだわりを持ち、ハンドメイドの商品が特徴。化粧品の動物実験反対キャンペーンなどに取り組んでいるラッシュですが、ダイバーシティ&クルージョン(以下D&I)が進んでいる企業としても知られています。そこで今回はコーポレートコミュニケーションマネージャーを務める小山大作さんと、ピープル(人事)リクルーティングマネージャーを務める高橋志乃さんにお話を伺いました。
 

小山大作さん
ラッシュジャパン コーポレートコミュニケーションマネージャー

2014年、米国系化粧品会社から転職。入社当初は前職同様にPR担当を務める。PR業務の中でも会社としての取り組み、現在はチャリティー事業、同性婚のキャンペーンなどの実施責任者としても活躍。

高橋志乃さん
ラッシュジャパン ピープル(人事)リクルーティングマネージャー

2009年、新卒で入社した会社を退職後、アルバイトとして入社。3店舗の店長を務めた後、トレーナー職などを経て人事部に異動。その間、産休、育休を挟み14年目を迎える。
 

BLMをきっかけにD&Iを見直す

 
「All are welcome, always.」の信念のもと、誰もが平等に自分らしく暮らせる社会を目指し、日本に暮らす難民やLGBTQ+といった社会的マイノリティの方々を含め、企業として何ができるかを試行錯誤し続けているラッシュ。2020年12月には、D&Iの観点から、全600種類以上ある商品名を見直し、一部商品名を変更したことを発表し、大きな話題を呼びました。
「会社としてD&Iを見直すことになったのは、Black Lives Matter(以下BLM)がきっかけでした」と語るのは小山大作さん。
2020年5月に米国でジョージ・フロイド氏が警察官に殺害された事件をきっかけに、世界中に抗議運動が広がりました。イギリスやアメリカを含め各地で大規模なデモが起こった他、著名人がSNSなどで抗議の声を上げたことを記憶している方も多いでしょう。
「ラッシュも、当初はグローバルで同時キャンペーンという形で社会に呼びかけようとしたのですが、英国のラッシュで『自分たちの足元である社内から見直すべき』だと意見が出されました。弊社の発祥の地イギリスのプールは白人が多いエリアです。それゆえに、役員含め本社の社員構成は白人中心でした。もちろんそれは意図的に起こったことではないものの、特にそれを問題視してこなかったのは、アンコンシャス・バイアス(無意識な差別)が社内に潜んでいる可能性があるのではという意見が出て、会社としてそこから見直すことになりました」と高橋志乃さんは当時を振り返ります。
たったひとりのスタッフの意見を耳に傾けて、世界中でそれに取り組むというのも同社の大きな特長です。実際、ラッシュ全体でLGBTQ+支援のためのキャンペーンを開始したのも、2013年にひとりのスタッフがロシアの反同性愛法に抗議したのがきっかけでした。またラッシュジャパンにおける同性パートナーシップ制度を設け、介護休暇や弔事休暇などの異性間と同様の人事制度の導入おこなってきました。。
「ラッシュは、もともと自分の考えを言葉にし、他者の意見にも耳を傾けて、理解を深めていくプロセスを大切にしています。トップダウン的に会社が先導するというよりも、対話を通じていろいろな声を聴き、みんなが理解できるようにする。その繰り返しが大切だと思っています」(高橋さん)
 

企業文化はそこで働く人が築くもの

 
ラッシュの組織は、一般的なピラミッド型ではなく、「バスタブストラクチャー」と呼ばれる逆ピラミッド型組織を取っています。
「一番上がお客様。その下に、お客様に一番近いところで働く人たち、ショップスタッフやそれを支えるショップマネジメントチーム、商品の製造などに直接携わる製造のフロアメンバーがいます。そして、バスタブの下のほうで支えているのが、サポートチームや管理職、シニアマネージャーです。一人ひとりのスタッフに対し意見を言えるカルチャーを醸成しています」(小山さん)
立場や肩書きにかかわらず、意見を言いたいときにすぐに伝えられる。そういう関係性が社風としてあるところが、強みであり、D&Iの推進力になっているのでしょう。
大きな話題を呼んだ商品名の見直しもそのひとつの表れで、今でも継続され、世界の各地域に適用されています。ラッシュジャパンでは社内ワーキングチームが発足。同チームは全社から集まった所属・性別・出身・年齢不問の有志メンバーで構成されています。改名基準はD&Iの観点で、性別や宗教を特定しないなどの幅広い視点でメンバーが時間をかけ、議論を重ねているそうです。社員の間からは「こういう会話が日本でもっとされるべきだ」といったポジティブな意見が目立ったそうです。
「社員間だけでなく、お客様からも多くの意見が寄せられました。その一つひとつに学びや気づきがあり、それが私たちの経験になり、これからも少しずつ改善する方針です」(小山さん)
「会社の規律やルールを変えることはできます。しかし、企業文化というものは、そこで働く人間が自然と生み出すものだと思っています。今回の商品名の改名にしても、どんなに認知度が高く、売上が高い商品でも、必要とあれば商品名を変えてしまう。そういう姿勢は、共感していますし、社員としても誇らしいです」(高橋さん)
 

キャリアも自分らしく働く環境も自分の手で築ける

 
ラッシュには、もともと人を大切にしてきた土壌があり、人種や学歴、セクシュアリティなどを問わず、共に成長したいという基本的な考え方を持っている会社です。実際、高橋さんは、アルバイトとして入社し、社内公募制度を利用して店長にチャレンジし、自らキャリアを築いています。お二人のお話をお伺いしていると、チャレンジすることを応援する会社であり、そして誰もが自由に意見を出し合える社風が、「誰にとってもより働きやすい、より生きやすい環境を創る」という同社のD&Iの大きな推進力になっていると思えてなりません。
最後にそんなお二人から読者の皆さんにメッセージをいただきましたので、ここでご紹介します。
「私は新卒の年齢で入社して、店長の務め、ブランドトレーニングやビジネストレーニングを経て今は人事で働いています。その間、『失敗してもいいよ』という空気が会社にあることをずっと感じていました。たとえ失敗しても再チャレンジの機会があります。私自身、いろいろな失敗を繰り返し、それを糧にして成長してきました。だから、失敗を恐れずにいろんなことにチャレンジしたいと気持ちを持っている方は大歓迎です。一緒に成長していきましょう」(高橋さん)
「自分はゲイの男性ですが、ラッシュに入ってはじめてセクシュアリティを考えずに働ける環境を手に入れることができました。『自分らしく働きたい』という言葉は、よく耳にしますが、その真の意味を改めて自分自身に問い掛けてみてください。働く環境は、自分の人生に影響を及ぼす可能性もありますから、働く時間が自分をポジティブにしてくれるなら、とても素晴らしいと思います。ラッシュにはその土壌があり、そうした誰もが働きやすく、そしてポジティブな人生を過ごせる環境を自ら作るのだという強い意志を持って行動してくれる人に期待しています」(小山さん)