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Update on :2022.10.24

障がいと向き合いながら化粧品を通して誰かに力を与えたい

大村毬菜さん
株式会社資生堂
プレミアムブランド事業本部 首都圏営業本部 営業サポート部

化粧品国内シェアナンバーワン。資生堂の化粧品は、国内だけでなく、世界中で幅広く愛用されています。そんな日本が世界に誇る化粧品メーカーに、2021年、一人の女性が入社しました。彼女の名は、大村毬菜さん。大村さんには、化粧品が大好きという他に、聴覚障がいという一面があります。障がいと仕事。「自分らしさ」を何よりも大切に活躍を続ける大村さんに、その日々についてお伺いしました。

大村毬菜 さん
プレミアムブランド事業本部 首都圏営業本部 営業サポート部

2021年、資生堂入社。店頭への商品発注の業務を中心に営業のサポート業務を担う。
 

きっかけは聴覚障がいを持った友人

 
元々化粧品が好きだったという大村さん。それが特別なものであると気づいたのは、大村さんと同じように聴覚障がいがある、幼なじみの友人がきっかけでした。

大村さん「障がいは、ずっと付き合うものです。それで自信をなくしてしまったり、主張できなくなってしまう人もいます。私の友人も自分にあまり自信のないタイプでしたが、私がメイクをしてあげたら、『え!かわいい!』って少し自信を持ってくれるようになりました」

化粧品を通して、人に力を与える。その出来事は、大村さんが化粧品メーカーを目指す充分な理由になりました。しかし、そんな彼女の前に、コロナという大きな壁が立ちふさがります。新型コロナウイルスの流行は、就活の様子も大きく変えました。中でも彼女が苦労したのは、「マスク」の存在であったといいます。

大村さん「聴覚障がい者にとって、人の口元の動きはとても重要な情報源です。ですがコロナが流行って皆がマスクをしたことで、それが見えなくなってしまいました」

今までのようにコミュニケーションがとれなくなってしまう。大村さんは大きな不安を抱えました。それでも、コロナは収まってくれないし、会社も待ってはくれません。そしていよいよ、面接の日。

大村さん「でも、面接をしてくださった皆さんが、とても良い方々だったんです。聴覚障がいのある方がどのような配慮を受けながら働いているのか。具体的に事例を教えてもらったことで、ここなら自分らしく働けそうだなと感じました」

やりたい仕事と、一緒に働きたい人々。大村さんは慣れない環境の中でも無事に面接を突破し、彼女にとってその両方を併せ持つ資生堂に入社をしました。

 

仕事を進めるうえで持つべき心構え「BE OPEN」

 

現在は、リモートワークと出社を組み合わせながら働いているという大村さん。彼女の主な業務は営業のサポートで、やはりコミュニケーションをとることが多いのも営業担当であると言います。では、聴覚障がいがありながら仕事をする上で、どんな工夫をしているのでしょうか。

大村さん「コミュニケーションをとりたいときに、大切なのはやっぱり口の動きを読むことです。オンラインのミーティングでは、参加者にカメラオンにしてもらっており、字幕機能の使用やチャットなど、文字で伝えてもらえるようにお願いしています。オンラインでは全員の口元が見やすいとも言えますね。一方、対面で人と直接会って話すときは、正面ではなく右側に座ってもらったり(大村さんは右耳に人工内耳を装用)、アクリル板を挟むことで、マスクを外してもらう場合もあります。複数人でのミーティングのときは、声が重ならないように、一人ずつ話してもらったりしますね」

大村さんは、一口に聴覚障がいと言っても、人それぞれだと説明します。補聴器の人もいれば、人工内耳の人もいる。人によって、苦手な音や聞こえにくい音も異なる。だからこそ、自分にとってどんな環境が好ましいのかを相手にきちんと伝えることが大切だと。


大村さん「今の会社は、自分の考えを伝えやすい環境だと思います」

資生堂が仕事をする上で大切にしている8つの行動指針「TRUST8」。そのうちのひとつ「BE OPEN」は、公式ホームページにて「本音を語ろう“バッドニュース”も安心して共有できるチームになろう」と説明されています。

大村さん「本音で話せるからこそ、障がいの困りごとも相談しやすいです」

聴覚障がいは、見た目では伝わりづらいもの。だからこそ自分から伝えないと、と大村さん。そしてそれができる環境だからこそ、新たな発見もあったと言います。

大村さん「最初は無理だと思い込んでいた、電話にも出られるようになりました。先輩たちが『何かあったらいつでも代わるから』と言ってくれたので、チャレンジすることができました。スピーカーフォンにしたり、静かな場所に移動したり、色々試してみましたね」

なお資生堂は、ホームページにて、障がい者雇用の3つのポリシーをこのように明示しています。

1.「本気で期待する」
2.「必要な配慮はするが特別扱いはしない」
3.「一生懸命働きたい情熱のある社員を積極的に応援する」

 

あの頃の私たちと、今の私たち

 
化粧を通して人に力を与えたい。聴覚障がいと向き合いながら、その目標に邁進し続ける大村さん。最後に、「こう生きたい」を軸に就活を頑張る皆様へ、大村さんからメッセージをいただきました。

大村さん「『自分らしくありたい』ということを実現するためには、やはり自分の考えや自分のことをちゃんと伝えていくことが大切だと思います。私がメイクをした聴覚障がいがある友人は、今、接客業をしています。聴覚障がいがあっても、こんな仕事ができるんだよということを、お互い伝えていこうって話していますね」






企業情報:株式会社資生堂