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Update on :2021.09.07

「D&I」という言葉が必要ではなくなる職場を目指して

ステファニー・ドゥルーズさん/高橋真奈美さん
日興アセットマネジメント
常務執行役員 コーポレート・サステナビリティ統括/人事部代表

日興アセットマネジメントは、グローバルな視点をもつ資産運用会社として、2018年にコーポレート・サステナビリティ部を新設し、ダイバーシティ&インクルージョンを精力的に推進しています。コーポレート・サステナビリティを担当する常務執行役員のステファニー・ドゥルーズさんと、人事部代表の高橋真奈美さんに、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みについて伺いました。
 

ステファニー・ドゥルーズさん
日興アセットマネジメント
常務執行役員
コーポレート・サステナビリティ統括

2014年8月、日興アセットマネジメント株式会社に入社。現在は、国内外の商品開発、国際営業・戦略、マーケティング、広報、営業支援、およびコーポレート・サステナビリティを統括する。
2014年の入社時に、機関投資家マーケティング・プロポジショングローバルヘッドに就任。2016年8月、プロダクト&マーケティング共同グローバルヘッド兼プロダクト&マーケティング共同本部長に就任。2018年7月、コーポレート・サステナビリティ部長を兼務。2019年5月、常務執行役員に就任。2020年3月から現職。

日興アセット入社以前は、英ロンドンにてバークレイズ・ウェルス・アンド・インベストメント・マネジメントのキークライアントおよびファミリーオフィス事業のグローバルヘッドを務める。それ以前は、モルガン・スタンレーにて、マネージング・ディレクターとしてプライベート・ウェルス・マネジメント事業に約13年間従事。
オックスフォード大学卒。ハーバード大学大学院経営学研究科でMBA取得。
 

高橋真奈美さん
日興アセットマネジメント株式会社
人事部 
人事ビジネス・パートナー

2020年3月に日興アセットマネジメント株式会社に入社。
現在は人事部 ビジネス・パートナー(部門担当人事)として国内IT、オペレーション、商品開発・企画、営業支援等の部門を担当。
また、インターナショナル人事として国外の人事サポートも行う。人事に関わる様々な案件を国内外の人事スタッフと連携を取りながら
グローバルに活躍できる人材の支援と推進を行う。
日興アセット入社以前はソニー株式会社、アクサ生命保険株式会社、モルガン・スタンレーの人事部にて主に部門担当人事として従事。
人事としてのキャリアは15年以上に渡る。
上智大学卒
 

D&Iに取り組まないこと自体がリスク

 
国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」が地球規模での課題となっている現在にあって、日興アセットマネジメントは、2018年にコーポレート・サステナビリティ部を新設しました。その部長として、また、担当の常務執行役員として、サステナビリティ活動を牽引し、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進にリーダーシップを発揮しているステファニーさんは、「D&Iは特別なものではなく、それに取り組まないこと自体がリスク」だと言います。

ステファニー(敬称略・以下同)「当社にとってD&Iは特別なものではなく、すべての部署で、あるいは採用やビジネスなどの場面においても、ありとあらゆるところに浸透しています。まず、ビジネスの面から見ると、私たちのクライアントには、性別や性的指向、性自認、障がいの有無、人種・国籍などにおいて、さまざまな属性の人がいます。その多様なクライアントとより上手く接するために、D&Iの知識は必要だろうと考えています。
次に、商品開発の面から見ると、例えば、商品開発のチームがほぼ日本人で、40〜50代の男性ばかりだとしたらどうでしょう。いろいろなアイディアとか、D&Iに対応した商品とか、そういうものは出てこないだろうと思うんです。また、リスクの面を考えると、例えば、リスクを管理している人が40〜50代の男性ばかりであれば、一面的な見方に陥ってしまいがちで、リスクに気づかない場合があるかもしれません。それが多様なチームであれば、リスクを早めにキャッチし、リスクを低減できるのではないかと考えています。
そして、人材面から見ると、当然ながら、属性にかかわらず最高の能力、人材がほしいと考えていますから、どんな属性の人でも受け入れることのできる環境をつくることが重要であり、そのためにもD&Iを推進しています。さらに、メンタルヘルスの面を考えてみても、多様な人を受け入れることのできる環境であれば、ストレスはより軽くなり、メンタルヘルスへの影響も少なくなります。
このように見てくると、D&Iは、それに取り組まないこと自体がリスクだと考えています。まだまだできていないところも多いですが、D&Iには終わりはない、と思って、これからも日々、努力していきたいと考えています」
 
 

D&I活動の担い手はワーキング・グループ

 
日興アセットマネジメントにおけるD&I活動は、主に、各拠点で活動するワーキング・グループによって担われています。ワーキング・グループの活動は、ボランティアベースの有志によるもので、それをコーポレート・サステナビリティ部がサポートしています。日本においては、女性、LGBT、障がい者を対象とする3つのワーキング・グループが、D&Iを担って活動しています。

高橋「女性活躍推進を目指して2015年から活動していたグループが、2018年1月にジャパン・ウィメンズ・グループとして正式なワーキング・グループになりました。ロールモデルになるような女性の外部スピーカーを招いて話を聞いたり、セルフプロデュースの教室を開いたり、リーダーシップ能力向上のためのワークショップを実施したりしています。当社は、2021年3月、グループ全体として、女性管理職比率を2030年までに30%達成へと目標を引き上げることを発表しました。2021年1月1日現在、日本での当社の女性管理職比率は17.4%で、どうすればこの目標を期限までに達成できるのか、人事部においても、コーポーレート・サステナビリティ部と協働して、会社全体のマーケティングや社内に向けての発信などを進めていきたいと考えています。例えば、プロモーションのガイドラインを作成したり、あるいは、男性の育児休暇取得率を上げていくとかですね」

LGBTのワーキング・グループは、アイデア・ジェネレーション・フォーラム(創造性を刺激することを目的とした社内フォーラム)で、ある社員がLGBTの顧客との関わりを向上させるためのアイデアを提案したことがきっかけだったといいます。日本のLGBTワーキング・グループは2017年に発足し、社内ルールの見直しや、LGBT当事者社員をサポートする制度づくりに、コーポレート・サステナビリティ部や人事本部などと協力して取り組んでいます。

高橋「人事本部では、2019年に社内規程を改定し、同性パートナーを持つ社員が、異性と婚姻関係にある社員と同様の福利厚生を受けられるようにしました。また、2020年11月には、国内の婚姻の平等に対する支持を表明し、その最初の一歩として、在日米国商工会議所(ACCJ)がLGBTカップルの婚姻の権利を日本で認めるよう提言した意見書『日本で婚姻の平等を確立することにより人材の採用・維持の支援を』への支持を表明しました。あるいは、LGBTアライを増やすために数多くの社内セミナーを実施してきました」
 
 
高橋「障がい者ワーキング・グループは2019年に発足しましたが、それ以前から障がい者への支援には積極的に取り組んでおり、2013年から〈アスリート社員〉プログラムを展開し、車いすラグビーの選手を採用しています。また、2015年からは〈日本車いすラグビー連盟〉のオフィシャル・パートナーとなってその活動をサポートしています。あるいは、手話講師を招いての手話セミナーなど、社内向けのイベントも企画しています。それから身体だけでなく心の健康にも目を向けており、メンタルヘルスにフォーカスしたイベントやセミナーも実施しています」
 
 

バリアフリーな会社を目指して

 
今後のD&I推進の方向性として、「D&Iという言葉を使わなくてもいい状態が最終的な目標」であり、そのために、あらゆる方面において「バリアフリーな会社を目指していく」とステファニーさんが力強く語ると、高橋さんは、ステファニーさんの考える目標に向けて、例えば、定期的にアンコンシャス・バイアス・トレーニングを実施するなど、バイアスをなくしていくことを常々考えていると話してくれました。そんなお二人に、D&Iに取り組んできて印象に残っていることを聞いてみました。

高橋「ここ2年、若干名ですが久しぶりに新卒採用を実施していて、その応募者の中にLGBT当事者がいらっしゃったんです。その方は応募の際に、当社のウェブサイトでのメッセージに共感し、この会社ならカミングアウトしても受け入れられてハッピーに働けると思ったと表明してくれました。私たちが常日頃から地道に発信してきたメッセージが学生さんに伝わっていたことが嬉しくて、これまでの活動が無駄ではなかったと報われた気持ちでした。半面、そんな方たちの期待を裏切ることのないように、引き続き努力していかなければと身の引き締まる思いにもなりました」

ステファニー「以前、当社で働いていた障がいのある方のことがとても印象に残っています。その方は、データを入力する単純作業を担当していたんですが、話をしてみるととても能力の高い方だと分かり、その特性を活かせる部署に異動して働いてもらいました。すると、期待どおりに能力を発揮し、自らキャリアを切り開いていきました。その方はもう当社には在籍していないのですが、当社での経験を活かしてキャリアアップしたと聞きます。障がいのある方が当社でこうしてチャレンジでき、キャリアを積めたことを嬉しく思っています」
 
 

安心に働け、自分の価値を認めてくれる会社を

 
最後に、お二人から読者に向けて、メッセージをいただきました。

高橋「まずはご自身が安心して働ける職場を探してください。風通しがよくて、自分の意見をきちんと言える職場。そういう会社を、この機会に考えてみてください。もう一つは、ご自身がやりたいことは、自ら手を挙げることが大切です。その上で、変化を起こしていくことです。そういうことができる会社を選ぶためにも、ご自身でベンチマークやチェックリストを作るといいでしょう。その一方で、面接や就職活動では、面接をされる側ではなく、むしろ面接をする側にたって、つまり、会社を評価するくらいの強い意思をもって、あなたが活躍できる場所を探してください」

ステファニー「何よりも自分の価値を認めてくれる会社を選んでください。知名度のある大手の会社であるとか、歴史があるとか、そういう部分だけではなく、本当に自分自身を受け入れてくれると思った会社を選んでください」