Google といえば、誰もが知る世界的IT企業。今回ご参加いただいたジェディンさん、ファイクスさん、高沢さん、戸子台さん、谷村さんの5名は、それぞれ転職で Google に入社。Google 社内にてLGBTQ+のERG(従業員リソースグループ)であるPRIDE at Google Japan、社内のダイバーシティ・インクルージョンを推進しているチームのメンバーです。
どんな経緯で Google に転職したのか。実際に入ってみてどう感じたのか。お話を伺いました。
Emmanuelle Gedin(ジェディン)さん(1番左)
2021年に機械学習専門のソフトウェアエンジニアとして Google に入社。入社してすぐPRIDE at Google Japanに参加。
Loren Fykes(ファイクス)さん(左から2番目)
2021年に組織の中で共通の特性や人生経験に基づいて職場で一緒に働く「従業員リソースグループ」の人事担当として Google に入社。女性社員やLGBTQ+、障がい者などの当事者のニーズに応じたプログラムを企画・担当し、社員をサポートしている。
Kazuki Takasawa(高沢)さん(左から3番目)
Google 検索広告スペシャリストとして広告製品の利用推進や広告営業企画などを行う傍ら、PRIDE at Google Japan共同代表およびTrans at Google の日本代表を務める。
Ryota Tokodai(戸子台)さん(右から2番目)
2017年より Google Cloud Japan にてプリセールスエンジニアとしてソリューションの提案に従事。他方で、PRIDE at Google Japanにて社内外のイベントの企画・運営に取り組む。
Hiroki Tanimura(谷村)さん(1番右)
2018年に Google Cloud Japan に入社。スタートアップ、中堅中小企業に対するクラウド活用支援に従事。PRIDE at Google Japan共同代表を2021年より務めている。
助け合って仕事をする文化
最初にお話を伺ったのは、ジェディンさんとファイクスさん。お二人はどういった経緯で日本で暮らすようになり、Google に入社したのでしょうか。
ジェディンさん「私はスウェーデンの出身で、学生時代に日本に留学をしました。東京はどこに行っても面白いイベントがあって、面白い人がいる。刺激がいっぱいあって、この場所で働きたいと思うようになりました。初めて就職したのは、10人ぐらいの小規模な会社でした。IT企業で、今と同じく機械学習のソフトエンジニアをしていました」
そんなジェディンさんが Google に転職をしたのは、2021年のことでした。
ジェディンさん「社会人になると、生活の3分の1ぐらいを職場で過ごすことになります。そんな中で私は、周りの人が自分を応援してくれる環境で働きたいと思っていました。大学時代の友だちで、Google にインターンシップに行ったり、実際に就職した人たちが何人かいたんです。その人たちの話を聞いて、Google は働きやすそうな企業だなというイメージを持ちました。実は、私も大学時代から Google に就職したいという気持ちはあったんです。そのときはタイミングが合わなくて別の会社に就職したんですが、やっぱりGoogle で働いてみたいという気持ちが強くなって転職を決めました」
一方ファイクスさんが日本にやって来たのは、1990年代前半。ジェディンさんと同じく、学生時代のことでした。
ファイクスさん「日本に来たのは、日本文学に興味を持っていたから。実は、日本文学の教授になりたかったんです。卒業後も日本に残りたいと思い、日本で就職活動をしました。ですが当時、日本の会社のほとんどは外国人を採用していませんでした。そこで私は外資系の投資銀行に就職をしたんです」
アジアの様々な企業で働いた経験のあるファイクスさん。2021年に Google に入社するまでには、紆余曲折があったと言います。
ファイクスさん「日本を離れ、ニューヨークで仕事をしていた時期もありました。銀行マンからテレビマンに転身したこともありました。日本に戻って来てから自分で会社を立ち上げ、うまくいかなかったことも。Google に入社したのは、これも自分で立ち上げたLGBTQ+活動をするNPO法人がきっかけです。その活動をしている中で、『そこで培った能力やノウハウを Google で発揮して欲しい』と声をかけていただいたんです」
こうして Google に入社したファイクスさんですが、Google に入って驚いたことがあったとか。
ファイクスさん「入社したときに、『なにか必要ですか?』『何かヘルプできることはありませんか?』と皆に言われてビックリしました。Google には、助け合って、サポートしあって仕事をしようという文化があります。また、ルールというルールが少ないことにも驚きましたね。もちろん規定もあるにはありますが、とても柔軟性があります。社員一人ひとりの違いに合わせて自分らしく働くことができる。こういった文化があるのも、Google の良いところだと思います」
はじめてカムアウトできると思えた会社
続いてお話を聞かせてくれたのは、高沢さんと戸子台さんのお二人です。お二人もまた、転職を経て現在 Google に籍を置かれています。
高沢さん「私はこれまで5回ほど転職をしてきました。大きい会社も小さい会社も、日本企業も外資企業も経験しました。それぞれに社風がありましたが、『この会社だったらカムアウトできるな』と思えたのは、Google が初めてでしたね」
「しても大丈夫という自信がないと、カムアウトしてもいいとは思えない」と高沢さん。Google ならそれができると高沢さんが感じたのは、とある出来事がきっかけだったと言います。
高沢さん「私が入社したとき、PRIDE at Google Japanの前身となるグループを立ち上げた方が、たまたま自分と同じ営業部にいました。営業部では週に1度朝会があるのですが、入社したての初めての朝会で、その方が営業部の全員に向けてグループの活動報告をしていたんです。それを見て、ここならカムアウトしても大丈夫そうだなって。私もそのグループに参加するようになり、半年ほどしてから徐々に自分のことを話はじめました」
PRIDE at Google Japanは、Google 内の多様性・公平性・包括性を推進しており、現在のコアメンバーは約20名、アライは200名以上にもなります。そして高沢さんは、そんなPRIDE at Google Japanの共同代表を務めています。
高沢さん「PRIDE at Google は、学校でいうところの委員会に近いと思います。当事者が集まって活動している場ですが、会社から予算をいただいていますし、社内制度や製品を作る上での相談先として機能することもあります。なので部活というよりも、もう少しオフィシャルな委員会のイメージですね」
Google の社内制度にはどのようなものがあるのでしょうか。
高沢さん「例えば、トランスジェンダーの人への医療サポートがあります。ホルモン治療や手術にかかる費用の一部を、会社が補助してくれるという制度です。他にも同性のパートナーがいる場合、そのパートナーの方の健康保険料を補助するサポートが、去年から始まりました」
戸子台さんも、PRIDE at Google Japanのメンバーの一人。2017年に Google に入社し、クラウド関連のプリセールスエンジニアとして活躍しています。
戸子台さん「営業と一緒に、お客様に提案を行うのが私の仕事です。営業がお客様を見つけ、関係を構築する。技術的な話になったら、プリセールスエンジニアの出番です。IT業界では一般的な職種で、前職も今と近しい仕事をしていました。IT業界には、『NIJIT』という各企業の社内LGBTQ+グループの交流ネットワークがあります。前職の頃からそのコミュニティに関わっていたので、各社がどんなことをしているのか、どんな雰囲気なのかは何となくわかっていました」
『NIJIT』に関わることで、Google の雰囲気も入社前から伝わっていたと戸子台さん。ですが、いざ入社してからわかったこともあったようです。
戸子台さん「Google は、1on1での話し合いがすごく多い。1on1によって、相手のことを知り、自分のことを知ってもらおうという文化があるんです。毎週やる相手もいれば、隔週の人も月に1度の人もいます。先ほどファイクスが社内の助け合いについて話していましたが、Google 全体で定期的に1on1を行っているので、困ったことがあったときにも伝えやすいんです。また Google には、通常の職務の範囲を超えてサポート・協力してくれた時に感謝の意を込めて、少額ではありますが従業員同士でボーナスを贈りあえる『ピアボーナス』という制度があります。これもお互い助け合う文化を支えていると思いますね」
DEIは Google のビジネスの一部
最後にお話を伺ったのは2018年に Google に入社したという谷村さん。谷村さんは、高沢さんと共にPRIDE at Google Japanの共同代表を務めています。谷村さんにとって、Google のD&I推進はどう映っているのでしょうか。
谷村さん「Google では、D&Iのことを『DEI』- Diversity, Equity, Inclusion (多様性・公平性・包括性)と呼んでいます。DEIは、Google にとってビジネスの一部です。Google のミッションは、世界中の情報を整理して、世界中の人々がアクセスできるようにすること。すべての世界の情報が対象だし、すべてのユーザーが対象です。そうなったときに、その製品をつくる私たちも多様なカルチャーを持っていないと、いいものを提供できません。私たちは仕事をする上でそれぞれ目標設定をしているのですが、例えば営業の数字と同じように、DEI活動についてもその目標に含まれています。チーム単位、会社単位でDEIを意識しているのは、弊社の良いところだと思います」
そして谷村さんは、Google とPRIDE at Google Japanの関係性について、こう説明してくれました。
谷村さん「社内制度の健康保険の仕組みについてもそうですが、会社主導ではなく、私たちが作ったという自負があります。私たちが作ったということがとても重要で、それができる会社は素晴らしいと思うんです。誰かが制度を作ってくれるのを待つのではなく、自分たちで作っていける。ステキな会社だなと思いますね」
では今後、PRIDE at Google Japanは、どのような目標を持って活動を続けていく予定なのでしょうか。
谷村さん「今、色んな企業が素晴らしい取り組みをしています。NPOなどの力も借りながら、それをもっと多くの人に知ってもらいたいと思っています。Google だからできること、ではなく、色んな企業と一緒にできること。Google ができていないことを、他の企業から教えてもらうこと。そういったことをより活発にしていければいいなと思っています」
最後に今回ご協力いただいた皆さんから、読者の皆さんに向けたメッセージをいただきました。
谷村さん「大学のとき、就職するのがすごく怖かったことを覚えています。でも私は実際に働いてみたら、楽しいと思うことができました。仕事も人生も無理をせず、気楽に臨んで欲しいと思います」
ファイクスさん「自分にあった環境を見つけることは簡単ではありません。自分を愛し自分に優しく、でも諦めずに継続して、その環境を見つけてください」
高沢さん「私はこれまで5回転職をしましたが、『ここを見れば、この会社のダイバーシティが一目でわかる』というリトマス試験紙のようなものはありませんでした。大企業でも合わないことはあるし、中小企業でもすごく良くしてくれることもある。自分の感覚を大事にして欲しいと思います。合わないと思ったら転職してもいいし、面接時には自分が会社を選ぶという意識を持っていい。違和感を持ったなら、自分の本能に従っていい。無理しない範囲で頑張っていくのが一番かなと思います」
ジェディンさん「自分らしく生きることが一番大切。周りに自分を応援してくれる人がいる環境を探した方が良いと思います。面接以外にも、その会社で働く人と話せるイベントや機会があれば、積極的に参加してみるのもオススメです」
戸子台さん「とくに若い方の場合、仕事選びは『一生のこと』とお考えかも知れません。ですが仕事選びは1回とは限りませんし、いざ会社に入ってからも仕事選びは続きます。それを念頭に、走りながら進む方向を考え、軌道修正していけるといいと思います」