世界中に顧客を抱えるクラウド企業「Salesforce」。その日本法人であるセールスフォース・ジャパンには、イクオリティオフィスという部署があります。イクオリティとは、平等のこと。そして平等(イクオリティ)は、Salesforceが掲げるコアバリューのひとつです。
LGBTQ+を含むあらゆるSOGIコミュニティを支援する「Outforce」。地球環境に配慮しサステナビリティを推進する「Earthforce」。女性社員の活躍を支援する「Salesforce Woman’s Network」。障害を知りコミュニティを支援する「Abilityforoce」。育児、介護などあらゆるステージの家族を支援する「Salesforce Parents and Families」。これらはすべて、従業員リソースグループで、セールスフォース・ジャパン社内で立ち上げられた、有志グループ(イクオリティグループ)の数々です。そしてセールスフォースグローバル全体で社員の約半数が、このうちのいずれかのグループに所属しています。
DEI(Diversity, Equality & Inclusion)をグローバルの全社員で推進しているSalesforce。今回は業務をこなしながら、イクオリティ・グループ活動も積極的に進めている磯田さん、清水さんにお話を伺いました。

磯田まりあ さん
ソリューション・エンジニアリング統括本部 コマーシャルソリューション本部
学生時代に様々な学生活動やボランティア活動を経験し、立教大学を卒業後2020年10月に新卒で入社。現在は中小企業担当のソリューションエンジニアを務める。業務の傍らOutforceに所属し、様々なSOGI(Sexual Orientation & Gender Identity)の方が自分らしく働ける環境作りのために活動中。

清水未悠 さん
アライアンス事業統括本部
東京外国語大学を卒業後、2019年4月に新卒入社。2019年にアライアンス事業統括本部に配属され、現在はパートナープログラム担当として従事。業務の傍らEarthforceにてアニマルライツや生物多様性をテーマに活動中。
人の信念を尊重し協力する
大学入学を機に、沖縄から上京したという磯田さん。東京だからこそできることを探していたところ、出会ったのが、社会課題解決を目的とした活動でした。
その団体では社会課題解決のリーダーを育成するための海外インターンを運営していました。そこで日本の学生を海外のNGOに送り出し、現地の課題解決に取り組んでもらったり、海外の学生の力を欲している日本の企業を探したりしました。その中で、様々な課題意識を持った学生たちが、受け入れ先のNGOや企業と協力して社会をよりよくするために活動する姿を何度も見てきました。その経験を通して、自分の周りだけを良くするのではなく、誰かと協力して社会をより良くする中で、自分の生きやすさも実現していきたいと思うようになりました。
社会課題の解決をミッションに掲げている企業、社会貢献をビジネスと同様に重視している企業…いざ就活の段になっても、やはり気になるのは共感できる信念を持った企業でした。そしてたどりついたのが、セールスフォース・ジャパン(以下Salesforce)でした。
「海外からきた学生の受け入れ先を探す過程で接点があったり、インターン先の企業でサービスが使われていたりと、Salesforceという会社のことは元々知っていました。創業者であるマーク・ベニオフの『ビジネスは社会を変えるための最良のプラットフォームである』という信念のもと、ビジネスと社会課題を両立させるためのビジネスモデルを確立しており、そこで働く社員の方の社会をより良くしていこうという意識の高さに惹かれ、ここで働きたいと思いました」
Salesforceと磯田さんは、学生時代から何かと縁があったといいます。そしてそんな中で磯田さんは、Salesforceにこんな一面もあることを知るように。
「とあるジョブイベントで、Outforceのリーダーを務めていた社員にLGBTQ+当事者の社員に対する制度について聞いたことがあったんです。その話を聞いて、ここなら自分のまま、オープンにしても大丈夫そうだなって」
磯田さんは、シスジェンダーのレズビアン。そして磯田さんの思った通り、Salesforceにはカミングアウトを自然に受け入れてくれる文化がありました。
「隠したり、話を合わせたりすることなく、自分らしく過ごせています。自分のセクシャリティは、アイデンティティに関わることでもあるため上司にも同僚にもオープンにしています。私には6年間連れ添った同性のパートナーがいるのですが、今年の春には、会社の福利厚生を利用してパートナーシップ契約の公正証書を提出し、事実婚状態となりました。そのことをチームや同僚に伝えたら、たくさんのお祝いの言葉や贈り物を頂いて。そういったことは結婚ができる異性同士のカップルだけで、私には無縁のことだと思っていたので、とても驚き、みなさんの優しさにとても感動し、感謝の気持ちでいっぱいになりました」
では磯田さんが利用した福利厚生制度とは、具体的にどのようなものだったのでしょう。
「LGBTQ+当事者で、同性パートナーシップならびに任意後見制度を利用する従業員への福利厚生制度です。私は公正証書提出にかかった費用のうち、5万円を会社に補助してもらいました。非常に助かりましたね。社内の福利厚生は基本的に同性のパートナーも同等に位置づけられていて、慶弔金や慶弔休暇、不妊治療、育児休暇なども、同性パートナーやその家族に関するものであっても、結婚している男女カップルと同じように適用されます」
そして磯田さん自身も現在、「Outforce」の一員として活動を続けています。
「Outforceの『どの様なSOGI(Sexual Orientation & Gender Identity : 性的指向と性自認)であってもインクルーシブな環境を向上する』という、誰も見捨てない姿勢に共感しています。現在の日本社会は性役割や性規範が色濃く、不平等が多いため、LGBTQ+に限らず様々なSOGIの方が生まれもった属性によって選択肢を狭められていると感じます。ですが、誰かを犠牲にしてごくごく一部の人が活躍できる社会のあり方には限界が来ます。それよりも、仕組みや思考を変えて誰もが活躍できる社会にしたほうが誰にとっても生きやすく、持続可能な社会になると思います。だから、あらゆるSOGIの人に平等に選択肢が与えられ、自分らしく生きられる環境を作っていきたいのです」
そんな志のもと、磯田さんはOutforceの一員として、次のような活動をしているといいます。
「Outforceでは、LGBTQ+を含むあらゆるSOGIの地位向上のために様々な活動をしています。例えば東京レインボープライドのスポンサーになったり、最近では『ALLY(アライ)入門座談会』というイベントを開催したりしました。Outforce運営側には当事者だけでなく、当事者を支援するALLYのメンバーもいるのですが、どうしたらALLYになれるのか、ALLYになるのにハードルは感じなくていいんだよ、ということを伝えました。たくさんの方にご覧いただいて、ALLYについて考えるきっかけになった、自分もALLYを表明していこうと思うといった気持ちのこもったコメントをいただき胸が熱くなりました。ALLYの輪を広げられたと思います。また、福利厚生制度として、性別適合手術の費用を補助するジェンダーインクルーシブベネフィットが導入されていますが、トランスジェンダー当事者への社内サポートのさらなる拡充にむけた働きかけをいま進めているところです」
そして最後に磯田さんから読者の皆様にメッセージをいただきました。
「Salesforceでは私のようなLGBTQ+以外にも、海外から来た方、障害を抱えている方、介護をしている方、子育て中の方など様々なバックグラウンドや経験をもった方がおり、それぞれが自分らしく働いています。平等(イクオリティ)をコアバリューに掲げている通り、人の信念を尊重し協力する文化も、平等(イクオリティ)を推進するための制度も、常にアップデートしてきた実績もあるため、その人らしさを大事にしている会社だと思います」
「今だけ、ここだけ、自分だけ」ではなく「未来、世界、他者」に思いを馳せる
続いてお話を伺ったのは、磯田さんの1年半先輩にあたる清水さん。清水さんがSalesforceに入社したのは、小学生のころの出来事がきっかけだったといいます。
「小学1年生のときに、家族旅行で初めてハワイに行って、衝撃を受けたんです。それ以来ずっと海外に強い憧れがあって、大学にしても、外国の社会や文化を学べる東京外国語大学に進学しました」
就活開始当初に目指していたのは、海外で働く機会のある商社や航空会社、海運会社。しかし、利益だけを追求する環境に身をおいて、やりがいは感じられるのだろうか、と清水さんは自問自答をしていました。
「大学の同期からたまたま『良い会社だ』と教えてもらったのが、Salesforceでした。説明会やインターンシップに参加してみたら、そこで答えが見つかったんです。その答えとは『ビジネスは社会を変えるための最良のプラットフォームである』という言葉でした」
清水さんもまた、創業者マーク・ベニオフの言葉に惹き付けられた就活生の一人でした。
「デザインシンキングのワークショップを行い、お客様の気持ちに共感しながらプロダクト作成を体験したり、インターンシップ生のためにお客様が足を運んで下さったり、実際にボランティアに行ったり…。1日2日のインターンシップでしたが、自分の仕事が社会に良いインパクトをもたらしていけるという納得感があり、Salesforceのファンになりました。他の参加者からSalesforceが目指す姿についての質問があったときに、現在のセールスフォース・ジャパンの小出伸一代表取締役会長 兼 社長が『カスタマーサクセスを追究すること』と回答したのにも感銘を受けました。ステークホルダー資本主義に本気で挑むSalesforceの姿勢に惹かれ入社を決めました」
こうして清水さんは、2019年にSalesforceに入社をすることになりました。アライアンス事業統括本部の所属となりますが、現在のお住まいはなんと…。
「現在は山好きなパートナーと一緒に、長野県の八ヶ岳エリアに住んでいます。休みの日には、近くにハイキングに出かけることもよくあります。コロナ禍でリモートワークが主流となったタイミングで上司に相談し、地方移住を決めました。周りのメンバーも色々な場所からオンラインで仕事をしています。自分たちの価値観に合わせてライフスタイルを選択できる今の環境に、とても感謝しています。東京に行くのは3ヶ月に1回程度で、そのときにメンバーと直接顔を合わせるのが楽しみになっています」
物理的な距離があっても、良好な人間関係は築ける。清水さんの言葉には、そう思わせる力があります。そしてそれは、上司との関係も例外ではないようです。
「上司はいつも私を信頼してくれていると感じます。地方移住の件もそうですが、チームメンバーが最も生産性高く働ける環境を整えるためにサポートをしてもらっています。隔週である上司との1 on 1ミーティングでは、今の仕事から将来のキャリア、そして自己研鑽のプランについて親身に相談にのってもらっています。上司やチームメンバーをはじめ、周りの方々のおかげで、日々働きがいと働きやすさを両立することができています」
そして話題は、Salesforceの平等(イクオリティ)に。清水さんは、Salesforceの環境活動を推進する有志グループ「Earthforce」の一員として活動しています。
「学生時代は部活一筋。社会課題を意識し、実際に行動するようになったのは社会人一年目のことです。実家を出て、当時一緒に暮らし始めたパートナーの影響で、肉食が及ぼす環境へのネガティブな影響や種差別という概念に出会い、プラントベースの食生活とエシカル消費を実践するようになりました。当時からEarthforceの活動は積極的に行われていて、一参加者としてイベントに参加し、情報収集を行っていました。『環境サステナビリティ』と平等(イクオリティ)というと、異なる文脈に見えるかもしれませんが、実は密接につながっていて、種差別という概念は、あらゆる差別の周縁にあるものです。また畜産業が人権の問題に繋がっていたり、さらには地球環境が破壊されるときには、社会的に立場の弱いひとからその影響を受けることになります。人種、ジェンダー、障害の有無などにより引き起こされる差別に対して問題意識があるからこそ、Earthforceを選び、発信する側として活動していくことにしました」
そして清水さんは、その活動の礎となっているSalesforceという企業について、こう説明してくれました。
「私のモットーは『No exploitation and sacrifice for my own happiness』です。自分が利益を得るために、他者が不利益を被ることは理にかなっていないですし、もし社会がそういった状況に陥ったときには、私が所属する会社は従業員の声を聞き、躊躇無く声を上げてくれるという安心感と誇りを持っています。そうした気持ちが従業員エンゲージメントの高さへと繋がり、一人一人がやりがいと働きやすさを両立できている理由だと感じます」
Earthforceに参加するメンバーはここ2年で7倍に跳ね上がったそう。過去には、このような活動をしたといいます。
「オフィス内で使われていたペットボトルを廃止しました。月に何本のペットボトルがオフィスで使われているかを数字として見える化し、Earthforceのエグゼクティブアドバイザーである役員に、インフルエンサーとしてマイボトル利用を呼びかけてもらいました。現在オフィスでは、ペットボトルの提供は禁止となっています」
では、Earthforceの一員として、清水さんが目指すのはどんな未来なのでしょう。
「『今だけ、ここだけ、自分だけ』ではなく『未来、世界、他者』に意識を向けて、地球を未来の世代に繋いでいくために、Earthforceは活動しています。現在アライアンス事業統括本部にて、パートナー企業様との協業を推進する部署にいるので、Salesforceの平等(イクオリティ)や環境サステナビリティの取り組みを、社内だけでなくパートナー企業にも広げていくことを目標としています。パートナー企業の中にも素敵な取り組みをされているところもありますので、平等(イクオリティ)の実現のために力を合わせていきたいです。将来的には、現在の職種であるプログラムマネジメントのスキルを活かしながら、社会課題の解決や平等(イクオリティ)の実現に携われる仕事をしたいと考えています」
そして清水さんにも最後に、読者の皆様へのメッセージをいただきました。
「私が社会人になってから3年半が経ちましたが、この間にもコロナウイルスの蔓延をはじめ、誰にも想像できなかったたくさんのことが起こっています。VUCAの時代といわれているように、変化が多い時代なので、10年後20年後の自分の姿を想像するよりも、自分の直感を信じて、今一番ワクワクする場所を見つけられると良いと思います。Salesforceには、社会を良くしていくことに情熱を持つ仲間がいて、やってみたいことに挑戦できる環境が整っています。一緒にがんばりましょう!」