diversity works > 職場を知る > DE&IはムーディーズのDNA
Update on :2022.11.03

DE&IはムーディーズのDNA

DK Bartleyさん/ムーディーズ/CDO(Chief Diversity Officer)
真鍋美穂子さん/ムーディーズ・ジャパン/アソシエイト・マネージングディレクター

40ヵ国以上、13000名を超えるスタッフを抱え、大手格付会社のひとつとして知られるムーディーズ。その歩みは100年を超え、DE&Iに関する取組みにしても、世界に先駆け積極的に行ってきた歴史があります。今回は様々な経歴を経てムーディーズに入社したDK Bartleyさん、30年以上にわたりムーディーズで活躍を続ける真鍋さんのお二人にお話を伺いました。

 

DK Bartley さん(写真右)
CDO(Chief Diversity Officer)

ニューズ・コーポレーション社、電通イージス社などを経て、ムーディーズに入社。現在はムーディーズのCDO(Chief Diversity Officer)を務める。ビジネス上の必須事項としてのD&Iの推進と、社内外のフレームワークにおけるDE&I国際戦略の責任者。

 

キーワードは「多様性・公平性・インクルージョン」

 

DE&Iは、ムーディーズという企業を語る上で欠かせない要素のひとつ。ムーディーズとDE&Iについて、DK Bartleyさんはこんな風に表現します。

「DE&Iは、ムーディーズのDNAの一部です。ビジネスに限らず、ムーディーズが取り組むあらゆることにDE&Iが関わっています。とくにインクルージョンは、ムーディーズが“Fortune500企業”に選定される前、さらには国際的企業になる前から企業理念として掲げてきました」

アメリカでDE&Iの考え方が広がり始めたのは、1980年代頃のこと。ムーディーズもまた、その中心にあった企業のひとつです。

「その長い歴史の上に、今のムーディーズがあります。そのため、新たなビジネス展開や顧客とのやり取り、雇用管理や採用、評価においても、私たちは多様性・公平性・インクルージョンをとても大切にしています。私たちが目指しているのは、誰もがありのままの自分でいられる、風通しの良い、相互理解のある企業文化を創出することです」


では、実際にどんな取組みをしているのでしょう。最近の具体的な施策についてお伺いしました。

「2020年に『TIDE』という9ヵ月間のプログラムを開始しました。女性、LGBTQ+、有色人種、退役軍人とニューロダイバーシティの従業員のキャリア支援を目的としたものです。このプログラムに参加した多様で優れた人材のうち、90%が自身のキャリア目標をムーディーズで達成できると回答し、96%が実際に今もムーディーズで働いています」

 

「ERGs」から「BRGs」ヘ

 

そして今年の4月には日本でこんな取組みもあったといいます。

「女性支援に取り組むBRGsの一環として、AWF(Association of Women in Finance – 金融業界で活躍する女性を中心としたネットワーキンググループ)のメンターイベントで、ムーディーズ・ジャパンに勤務する女性の中で最も役職が高く、AWFのボードメンバーでもある社員が登壇し、参加者と活発な意見交換をしました。ムーディーズには全世界で11のBRGsがあり、それぞれがキャリア形成につながるイベントや取組みを実施しています。」

BRGs。ムーディーズの社員は、世間で言われる「ERG(従業員リソースグループ : Employee Resource Group)」のことを「BRGs : Business Resource Groups」と表現します。会社全体で「ERGs」を「BRGs」と言うようになったのは最近のことで、言葉としての格上げの意味があるのだそう。こういった取組みを、ムーディーズがどれだけ重視しているかが伺えます。


そして最後に、今後のDE&I推進の予定と読者に向けたメッセージをいただきました。

「様々な能力や強みを持つ多様な人材にも取組みの枠を広げられるよう、DE&Iの5ヵ年計画にニューロダイバーシティを含める予定です。なかなか適任者が見つからないポジションに、このような人材を充てることが目的です。またBRGs活動がより有効なものになるように、リソースの追加や外部機関とのパートナーシップも検討しています。ムーディーズがグローバルと米国で公表しているDE&I関連の目標達成に向けた取組みにも、ぜひご注目ください」

 

視野の広がりも、BRGsの価値

 

続いてお話を伺ったのは、ムーディーズ勤務歴30年以上という真鍋さん。真鍋さんは東洋人そして女性として、ムーディーズのDE&I施策を何年もその眼で見てきました。

 

真鍋 美穂子 さん
アソシエイト・マネージングディレクター

東京を拠点とし、コーポレート・ファイナンス、インフラストラクチャー・ファイナンスおよびサブソブリンのアナリスト・チームを統括する。2017年に同職につく前は、ニューヨーク本社に勤務し、北米の公益・エネルギー会社の格付け責任者を務めた。
 

「DE&Iはムーディーズがずっと前から進めている方針で、我々の企業文化に定着しています。私自身も何十年も前から共感しています」


ニューヨーク本社で勤務を始めたころは、東洋人も女性も「まだ私だけでした」と真鍋さん。しかし、その頃から育ち始めていたDE&Iの芽は、やがて女性躍進、多国籍化と様々な色の花を咲かせるようになります。そして記事の冒頭でも述べたように、現在ムーディーズの従業員は40ヵ国以上、13000人超えに。上級職に就く女性の数もかなりの数にのぼるといいます。

「色んな経験や考え方から、一番いいものを決める。色んな経験や考え方を持った人がともに働く。それがより良いサービスの提供やサービスの質の向上に繋がるというのが、ムーディーズの考え方です」

ムーディーズの多様性、公平性、インクルージョンへの取組みは、外部からも高く評価され、これまでに多くの賞も受賞しています。最近では、社内でこんなセミナーも行われたのだとか。

「アライシップのセミナーを行いました。マイノリティの方の味方をする、アライ(味方=マイノリティの方を理解・支援する人)になることは大事なことだと、トップから社員に伝えました。自分自身でも認識していない偏見を認識し、それを克服できるよう務めています」


そして最近、真鍋さんが積極的に取り組んでいるのは「EnAble BRGs(障がい)」の活動。先日、外部の講師を招いて、社員向けに手話講習会を実施しました。

「『EnAble BRGs(障がい)』の活動を通じて、これまで気づいていなかったことがたくさん見つかりました。例えば、ビデオ通話ができるWeb会議で手話を使う方にどういう風に対応すべきなのか、とか。BRGsの活動をきっかけに世界を、人を広く見るようになりました」

視野の広がり、真鍋さんはそれもBRGsの価値だといいます。色んな多様性をハイライトすることが、会社の活動を豊かにした、と。その言葉を裏付けるように、現在ムーディーズ・ジャパンでは「Women’s BRG(女性の活躍)」「Multicultural BRG (多文化)」「Pride BRG (LGBTQ)」「EnAble BRG(障がい)」「Minds BRGs(メンタルヘルス)」と5つものBRGsが立ち上げられています。

「発達障害も今の課題です。発達障害を持つ方が仕事を見つけ、それをキープするのは本当に難しいこと。社会的な交流が難しい部分もあるかもしれませんが、他に優れている能力がいっぱいあります。そんな貴重な人材を、どうやって活用していくか。ムーディーズがそれを進めていくことが、個人的にもすごく嬉しいです」

 
 

DE&I推進による社内の変化

 

「役職者からすべての従業員にいたるまでDE&Iが浸透しているので、私たち従業員自身もより多様になり、自分らしく働ける会社だと感じるようになりました」

ムーディーズは転職で入ってくる方が多く、それもいわゆる「ジョブ型」雇用が主流であるため、他のグループの方との接点があまり多くなかったそう。そんな中、DE&I施策によって他のグループとの交流が生まれ、新たな気づきにつながっているという利点もあるようです。

「私たちは長年DE&Iの取組みを進めてきました。そのためDE&Iの基盤はできていますが、今よりもっと広めていけたらと思っています。多様な仲間をもっと、多様なつながりをもっと作っていきたいです。例えば、誘いあって障がいのある方が働いているキッチンカーにランチを買いに行くことがありますが、障がい者の雇用をサポートできるだけでなくて、社員同士のつながりも増え、美味しいランチでお腹も満足。これもすてきなDE&Iの取組みです」

 
 

これからムーディーズに入社する多様な人材のうちの一人は、もしかしたら読者の皆様かもしれません。最後に、真鍋さんからの皆様へのメッセージをいただきました。

「ムーディーズは全社的に多様性に富んでおり、自分らしく働ける会社です。同時に個々の違いを尊重する会社でもあり、その違いが当社を成長させると考えています。型にとらわれないグローバルなマインドセットをもった方や、チャレンジに前向きな方、色んな経歴、経験のある方をお待ちしています」