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Update on :2021.11.11

相互理解から始まる「助け合い」の社内風土

大竹史雄さん
株式会社セールスフォース・ドットコム
カスタマーサクセスグループ サクセスオペレーション部長
「Salesforce Women’s Network」メンバー

セールスフォース・ドットコムに転職して7年になる大竹史雄さんに、実際に入社して感じてきた印象や社内風土、「V2MOM」という管理手法のこと、社内イクオリティグループの一つ「Salesforce Women’s Network」の一員としての活動などについて伺いました。

大竹史雄さん
株式会社セールスフォース・ドットコム
カスタマーサクセスグループ
サクセスオペレーション部長
「Salesforce Women’s Network」メンバー


Salesforceを活用してビジネスの成長を実現できるようお客様を支援するカスタマーサクセスグループ(CSG)に所属。その中で、サクセスマネジメント部門のオペレーションチームおよび技術エキスパートチームの、2つのチームのリーダーを兼任。また、社内のイクオリティグループの一つ「Salesforce Women’s Network」の一員として2年半前から活動している。
 

入社を決断させた2つの決め手

 
国内の大学を卒業後、米国カリフォルニアに本社を置くサン・マイクロシステムズの日本支社に入社し、製品販売後のお客さまを支援する業務からキャリアをスタート。その後、会社がオラクルに買収され、日本オラクルで働いた後、2014年8月にセールスフォース・ドットコムに転職した大竹さんに、まずは入社の経緯を聞いてみました。

「これまで、ハードウェア事業、ソフトウェア事業、現在はアプリケーション事業と、IT業界のスタックのようなものを順番にたどっていくようなキャリアになりました。セールスフォース・ドットコムへの転職の決め手となったのは2つで、今でこそ当たり前の“クラウド”と呼ばれる技術において、セールスフォース・ドットコムは先頭を走っている会社であったこと、そしてもう一つは、採用面接での採用マネージャーとの対話でした。その方は入社後、私の直属の上司になるのですが、最初の面接で開口一番、セールスフォース・ドットコムの魅力について、社会貢献に対する熱心さだと話してくれました。その方はそれまでボランティア活動に興味を持ったことがなかったのですが、セールスフォース・ドットコム社員がみな真剣にボランティア活動に取り組んでいる姿を見て、自分も仕事をするだけでなく社会に貢献しながらし生きていきたいと考えるようになったと熱心に話をしてくれました。人の生き方をそこまで変えられる会社って素敵だなと思って、最終的に入社を決めました」

 

マーク・ベニオフが考案した「V2MOM」が根づく社内文化

 
実際に入社してみたセールスフォース・ドットコムの印象は、いい意味で、さらにその上をいくようなものだったと言います。特に驚いたのは「V2MOM」という考え方でした。

「“V2MOM”とは、Vision=ビジョン、Values=価値、Methods=方法、Obstacles=障害、Measures=基準の頭文字を取ったもので、セールスフォース・ドットコムの創業者で、会長兼CEOのマーク・ベニオフが考案した、社員の意思統一を図るための管理手法のことです。
*ビジョン:達成したいことは何か? 
*価値:達成するうえで大切な信念は何か?
*方法:達成するためにどうするか?
*障害:達成の妨げになるものは何か?
*基準:成果をどう測定するか?
この5つの問いに応える形で、トップのマーク・ベニオフから現場の社員まで全員が、自分のV2MOMを毎年年度始めに作成します。その際、必ず最初にマーク・ベニオフがV2MOMを書き、続いて、マークの直属の部下が自分のV2MOMにそれを落とし込む。そしてまた、その部下が……と、どんどんどんどん滝のように会社全体に行き渡っていって、最終的に全社員のV2MOMが作られます。つまり、社員ひとりひとりのV2MOM=目標が、会社という一つの組織の中において、すべてリンクしている状態になるわけです。そうして、例えば何か判断に困ってしまったときには、このV2MOMに沿っているかどうかを基準にして解決を図っていくのです。このV2MOMは社内の文化としてしっかり根付いていて、社内のイクオリティグループなどでも、グループのV2MOMを作って判断基準にしていたりします。そして、このV2MOMは誰のものでもすべて公開されていて、社員なら誰でも見ることができます」

V2MOMの中でも特に「バリュー=価値」はとても重要で、セールスフォース・ドットコムでは「信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、平等(イクオリティ)」の4つのコアバリューを掲げており、このバリューが明確でブレないことが、日々の活動の中で有効に働いていると大竹さんは言います。

「何かを議論していると、誰かが必ず『これはカスタマーサクセスにつながることなのか』『これはイクオリティの観点ではどうなのか』というような発言をします。過去に私が所属していた組織を振り返ってみると、経営層レベルがそのような話をしているのならまだ分かるのですが、一般の社員が通常の会議のなかで、会社のバリューを持ち出して議論するという文化は、セールスフォース・ドットコムの特筆すべきところだと思っています」

 

入社して感じた「助け合い」という社内風土

 
実際に働き始めて感じた社内風土のキーワードは「助け合い」でした。

「会社が成長して、規模も大きくなって、社内風土も若干変わりつつあるのかなとも感じていますが、基本的には、社員同士は助け合うものだという考え方がかなり広く根付いており、それは変わらないと思っています。『フラットな会社です』とアピールされている企業も多いと思いますが、会社の組織図をいくらフラットにしたとしても、心理的安全性が確保されていない状態であれば、メンバー同士が気軽に話をするのはなかなか難しいことだと思います。会社が真にフラットかどうかは組織図や制度の話ではなくて、所属するメンバーが互いに正しいと思っていることを言うことができる状態や関係性があるかどうかだと思うんです。そして、どうすればそのような社内風土が醸成できるのかといえば、それは一人一人の互いを助け合おうという精神がすべてだと私は思っていて、それがセールスフォース・ドットコムには強く根付いていると感じています」

日本のオフィスはもちろん、海外ではそのような考え方が特に強いと大竹さんは言います。

「米国本社の技術チームのメンバーと頻繁にやりとりをしているのですが、例えば『日本のお客様がこのようなことで困っていて、でも日本ではそれを解決するアイデアがなくて』といった話をしたとすると、『OK、いつが空いてる? いつミーティングをセットすればいい?』といった感じで相手側から支援を提案してくれて。このような助け合いの精神こそがこの会社の特徴だと思っています。そして、このような精神にもとづく社内風土がなければ、組織は大きく成長できないだろうと思います」

 

社内イクオリティグループ「Salesforce Women’s Network」での活動

 
社内のイクオリティグループの一つ「Salesforce Women’s Network」の一員として2年半前から活動している大竹さん。参加のきっかけは何だったのでしょうか。

「正直に言えば、自分から手を挙げて参加したわけではありません。私が所属しているカスタマーサクセスグループの統括本部長が、Salesforce Women’s Networkの日本グループを支援するエグゼクティブスポンサーだったのですが、彼がスポンサーの立場を離れることになった時、当時は男性のメンバーがほとんどいなかったこともあって、私にメンバーにならないかと声をかけてくれたんです。そういう機会があると面白そうだと思ってトライしてしまうタイプなので、『ぜひやらせてください』と言って参加することになりました。というわけで、メンバーとしてこういう活動をしたいとか、何か明確なプランがあったわけではなくて、自分の知らないことを学べるという興味本位で参加することになりました」

実際にSalesforce Women’s Networkに入って活動されてみた印象は、どうだったのでしょうか。

「これはあくまで私の個人的な見解ですが、セールスフォース・ドットコムのイクオリティグループは、何かの目的のために作られたものではなくて、お互いを理解しようとする“支持者の集まり”なんだと思うんです。だから、押し付けがましさが全然なくて、やっていて面白い。最近は女性活躍推進のチームを設置している企業も増えていますが、それは文字どおり、女性の活躍を推進するという目的があって、そのために、例えば女性の管理職比率を何%に上げるためのプロジェクトが作られ、さまざまな施策が進められていくと思います。けれども、それにはちょっと違和感を持っていて、そういった数値目標は、結果としてそうなるものであって、それを実現していくために何がまず重要かと言うと、それは“お互いを理解すること”だと思うんです」

Salesforce Women’s Networkの活動では、具体的にどのような企画が行われているのでしょうか。

「ともすればダイバーシティの活動は、ある特定の集団だけに便宜を図ってしまうような方向へ行く可能性もあると思っていて、そうなると結果的にダイバーシティを失ってしまうことになりかねません。ウィメンズネットワークなので女性が主体になって進めていってもらって、男性である私はそれを見守ります、サポートしますというのでは、私が参加する意味があまりないと思っています。現在、日本には十数名の運営メンバーがいて、そのうち男性は3人ですが、なるべく男性である私の視点を伝えるように心がけています。
ざっくりとした役割分担で言うと、私は支援の輪を広げていくための広報的な活動を中心に担当しています。具体的な企画としては、例えば、昨年リモートワークが始まる直前くらいの時期に全社員が一堂に会する会議があったのですが、それがちょうど国際女性デーの前後だったので、ひとり親家庭の貧困解決のためのチャリティを実施しました。会議の参加者に一人一冊古本を持ってきてもらって、それをひとり親家庭の支援の基金につなげるというものです。無理のない簡便な方法で、誰でも参加でき、押し付けがましさもなく、間接的にシングルマザーをはじめ女性の支援につながるという効果的な取り組みになったと思います」

2021年10月に開催した乳がん啓発イベントの様子


 

採用から考えるダイバーシティ&インクルージョンのこれから

 
セールスフォース・ドットコムのダイバーシティ&インクルージョンのこれからについて、大竹さんはどのように考えているのでしょうか。

「私は採用面接もひっきりなしにやっています。自分のチームのメンバーや関連部署、それから新卒も含めて採用に携わっています。その中での課題の一つでもあるのですが、女性の応募者がまだまだ少ないんです。全体的に見てもそうですが、私が関わっている技術的な業務だと特に顕著で、10人の応募者の中に女性が1人いるかどうかです。このような状況は、かなり根深い問題だと思っています。技術的な職種において必要となる教育を受けること自体を女性が敬遠してしまうような社会的風土があるのかもしれません。そのような問題まで突き詰めていくとかなり大変ではありますが、そういった根本的なところから解決していくアプローチもあるでしょう。しかし一方で、個々の現場において解決していくアプローチも併せて必要だと思うのです。例えば私の場合は、採用に際して、あえて選考基準を従来よりも少し広めに設定することも考えています。求める基準を少し変えることで、より多様な人材採用へとつながるわけです。入社後のトレーニングの負担が増えるかも知れませんが、既存のメンバーがそれを助けることで互いの成長にもつながりますし、結果的にチームにとってプラスに働くのではないか。これは最近採用活動をしているなかで、すごく意識しているところです」

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

「自分がやりたいことを仕事にするのが良い、という方もいらっしゃると思いますが、私は、やりたいことではなく『難しいこと』をやろうと考えています。それがやりたいことと一致したらなお良いかもしれませんが、難しいことにチャレンジすることを意識すると、選択肢がより広くなります、世の中、難しいことのほうが多いですから。もちろん、自分がいま持っているものを活かせるかどうか、楽しそう・面白そうといった観点も重要ですが、就職先を選ぶ時には、自分にとってこれはかなり難しいチャレンジになりそうだと思うものまで視野を広げていただくと、そのあとのキャリアにつながるすごく豊かな経験ができる可能性が高まるのではないかと思います」