diversity works > 人を知る > 人生を通じて、 環境サステナビリティや社会課題に向き合う
Update on :2021.11.18

人生を通じて、 環境サステナビリティや社会課題に向き合う

細谷優希さん
株式会社セールスフォース・ドットコム
サステナビリティ&コーポレートリレーション Sustainability Cloud プロダクトマネージャー

クラウド型の顧客管理システムなどを提供するセールスフォース・ドットコム(以下、Salesforce)は、ビジネスだけでなく、さまざまな社会貢献を果たしていることでも知られています。その根底には独自の企業文化があります。その企業文化、またそれが同社の成長力、平等(イクオリティ)やダイバーシティ・インクルージョン(以下D&I)にどう影響しているのでしょうか。地球環境保全などサステナビリティに取り組む細谷優希さんにお伺いしました。
 

細谷優希さん
株式会社セールスフォース・ドットコム
サステナビリティ&コーポレートリレーション
Sustainability Cloud プロダクトマネージャー

 

東日本大震災がきっかけで、価値観が大きく変化

 
「ビジネスは社会を変えるための最良のプラットフォーム」という企業理念のもと、「企業は利益だけを追及するのではなく、社会を良くしていく役割がある」という理想を掲げ企業活動を続けているSalesforce。細谷さんは、そんな企業理念に魅かれて入社を決意したそうです。
「学生時代、東日本大震災が起こり、宮城県に定期的に通いボランティア活動を行なったことが、生きる意味を問い直し、それまでの価値観を見直すきっかけになり、地球や人々の未来に貢献するにはどうしたら良いのかを真剣に考えるようになりました」
その後、早稲田大学教育学部に進学。大学では主専攻である教育について学ぶ一方、副専攻で平和学、EU・欧州統合研究のふたつを専攻しながら、模擬国連のサークルに所属して国際社会のあり方について学んだそうです。スペインに1年間交換留学をしたのちに、スペイン最大の生物保護地区であるCazorla山脈での自然・動物の保護活動にボランティアとして携わったそうです。帰国後もNPOを通じて若者の貧困に関わる活動や、地域の公立小中学生向けの環境教育のコンテンツ作りに関わってこられました。現在は国連UNESCOの次世代ユネスコ国内委員会の代表を務め、ESD(持続可能な開発のための教育)やユネスコ活動を通じて社会課題に取り組むため、次世代の若者と議論を重ねています。そんな細谷さんにとって、環境を重要なステークホルダーと捉え、イノベーションの文化を活用して、世界をより良くしていくための活動に取り組んでいる同社は、まさに目標を実現させるための舞台と思ったのも当然なのかもしれません。
「社会をより良く変革するために企業が成長し、自身が働けば働くほど社会が良くなる、それが実現できる土壌がある会社だと思いました」

 

自分の働きが地球環境の保護につながる

 
細谷さんが入社して、初めて配属されたのはテクニカルサポートチーム。主にシステム導入後、お客様の技術的な問い合わせに対応し、利用支援をする部門です。
「当社はテクノロジーの会社なので、まず会社の基盤でもある技術を身につけたいと思って志望しました」
次に配属されたのがスタートアップ経営戦略部。起業家のスタートアップを支援するのが役目で、経営者向けのセミナーやワークショップの企画を担当していたそうです。そして、現在、所属しているのがサステナビリティ&コーポレートリレーションです。そのネーミング通り、地球環境問題に取り組む部署で、細谷さんはカーボンニュートラルな社会の実現に向けて、温室効果ガスの排出量を可視化し削減につなげるための製品のプロダクトマネージャーとして活動し、チームとしては森や海を守る活動も行っているそうです。
「地球規模の課題である気候危機は一朝一夕に解決できる問題ではありませんが、未来の地球とそこで暮らす人たちのために、テクノロジーの力を使いながら、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すのは非常にやりがいがある仕事です。自分の仕事が環境保護につながり、本業としてそれに取り組めることを幸せに感じています」
最近、多くの企業で株主のみならず顧客や従業員、サプライヤー、地域コミュニティ、そして私たちの暮らす地球を含むマルチステークホルダーに対して長期にわたって利益を還元していこうという動きがますます高まっています。そのなかでもサステナビリティに寄与するビジネスが企業としての成長戦略そのものになっています。細谷さんが、現在携わっている仕事は、まさにそれを具現化したビジネスといえるでしょう。
「日々大好きな仲間と共に情熱を持ちながら、持続可能な社会の発展に向けて日々奔走でき、とてもやりがいがあります。チームのリーダーを務める上司は、美しい地球を将来に残すために戦略を立て、日々どうしたら物事が前に進むかを一緒に考えてくれます。一緒に働く仲間やお客様に対し、常に自然体かつ率直な態度で接し、感謝の気持ちを表すことを忘れない姿勢があり、そんな上司のもとで仕事ができることが本当に幸せです」

▲スペイン生物保護地区でのボランティア活動した経験を持つ。

 

企業文化が企業の成長力とD&Iの推進力に

 
現在、細谷さんは、環境活動を推進するEarthforce(アースフォース)のメンバーとしても活躍しています。Earthforceは、従業員自らが主導して運営する従業員リソースグループのひとつで、イクオリティオフィス(社内外で平等を推進する部署)が後援する「イクオリティグループ」の一つでもあります。Salesforceでは従業員はもちろん、パートナーや顧客、地域など、同社とかかわる全ての人々をそのコミュニティの一員として捉える文化があり、さまざまなキャリアや背景を持った人材が入社してくる同社において、この企業文化は社員の結束力を高める基盤にもなっています。
「”再生可能エネルギーの促進”や”人間以外の生物にも優しい社会をつくる”など、自身の興味と関心に合わせてボランティアやキャンペーン活動を行っています。以前はオフィスに環境の専門家を呼んだ講演会を開催したり、ビーチクリーン、ウミガメの放流、ビーガン弁当の実食などを行っていましたが、コロナ禍になってからはオンラインで工夫しながら活動を行っています」
こうした活動以外にも、同社では社員をサポートするための制度があります。
「会社の学習補助制度を生かして、経営について学ぶオンラインの講座を受講しています。またウェルビーイング費用補助という健康維持のために使えるサポートも活用しています。数年前にミスユニバースというミスコンテストの全国大会に出場し、そのコンテストで身体を最も美しく鍛え上げた人に贈られる特別賞を受賞しました」

▲スタートアップ戦略部チーム時代のひとコマ。


そんな細谷さんは、同社のD&Iを、どう思っているのでしょうか。
「多様性を認め合うのは当たり前という意識が社員の間にあり、逆に多様性を感じない瞬間がないと思えるほどです。社会には様々な格差・不平等・貧困などが存在し、私たちはまずは社内から平等(イクオリティ)を実現し、そういった問題を社会に再生産しない責任があります。全ての人には目に見える特性と目に見えない特性、様々な個性や価値観がありますが、誰もが孤立したり排除されないよう、柔軟に受け入れる姿勢が大切です。多様な人たちと仕事をし、またそれぞれのイクオリティグループで相手への理解を深め、仲間としてサポートし合う活動をしています。自分と同じ20代のメンバーもそれを素直に受け入れていると思いますし、受け入れられているという安心感が会社のイノベーションにつながっていると思います」
多様性を受け入れる企業文化が当たり前になっていることが、同社のD&Iの推進力にもなっているのでしょう。

 

「学歴や偏差値、キャリアを積むこと」だけが決してゴールではない

 
周囲の仲間や顧客、社会を大切にして、ポジティブなインパクトを与えられる存在になることを目標としている細谷さんから、読者の皆様にメッセージをいただきました。
「私はこれからも社会の課題と向き合い、社会がどうあるべきなのかを考え続けていきたいです。会社や業務の枠にとらわれずに、自身が成し遂げたいものを見極め、自分の可能性を信じてほしいです。資格を取ったり、大学に行くのも大事だとは思いますが、まず自分が将来どんな人間になって社会をどう変えたいのかを考えることから始めてみてください」
「高学歴やエリートのレールにのって社会的地位を得ることをゴールとする考えが、根強く残っているのは否定できません。しかし、誰かに褒められたり、ステータスを得るというのは、自分にとってはあまり重要ではありません。私にとっては、沢山失敗して痛みを伴いながらも自分の弱さと向き合って学び続けることと、変化に抗うのではなく変化を作り出していくことがもっと大事だと考えています。客観的にみて難しそうなことや自分にこんなことができるのだろうか、という不安があっても、私なら絶対にできると信じて、次のステップへ挑むことも人生には大切です。これらが今私が目指したい方向に進む原動力になっています。
Salesforceは、それが実現できる環境だと思います。一緒に頑張りましょう」

▲ボランティア活動を参加する皆さん。その笑顔が楽しさを物語っている。