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Update on :2020.06.09

他の人の立場に立って考える、インクルージョンの文化を育てたい

クイン ユーニス 雅子さん
ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ
人事部ヘッド

 2018年の日経WOMAN「女性が活躍する会社」で第1位に輝くなど、日本のダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)推進をリードするヘルスケア企業「ジョンソン・エンド・ジョンソン」。D&I推進をビジネス上の重要な戦略課題としつつも、実は「ダイバーシティ推進室」などの専門部署は設置していません。

では、一体どのようにしてここまでD&Iを推し進めることができたのしょうか。その秘密を人事部のクイン ユーニス 雅子(くいん ゆーにす まさこ)さんに伺いました。

クイン ユーニス 雅子 さん
ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ
人事部 ヘッド、サプライチェーン

サプライチェーン部門の人事責任者として、部門全体を統括。また、D&Iを企業戦略の側面から推進する役割も担う。

 

ダイバーシティのルーツは75年を超えて続く企業理念「我が信条」

 

J&Jのダイバーシティ&インクルージョン(D&I)は、本社設立以来130年以上にわたって文化の中核を担っていますが、特に外すことができないものに「我が信条(Our Credo)」が挙げられます。「我が信条」は1943年に起草されて以来75年を超える長きにわたり、全世界のジョンソン・エンド・ジョンソンで大切にされている企業理念です。

「『我が信条』の中に、『社員一人ひとりが個人として尊重され、受け入れられる職場環境を提供しなければならない』という記載があり、ジョンソン・エンド・ジョンソンのD&Iはこの信条に基づいています」とクインさん。

「すべての社員が『我が信条』について理解を深めるための取り組みを行っています。例えば、ビジネスの危機的局面でどう対応すべきか、『我が信条』に立ち返って考えてみよう、といったワークショップなども定期的に開催しています。その結果、社員一人ひとりが尊重される、という文化が自然と根付いています」


 

専門部署は置かず、社員一人ひとりが進めるダイバーシティ&インクルージョン

 

企業のD&I推進といえば「ダイバーシティ推進室」といった専門の部署や専任担当者を設けて、その部署を中心に進めていくことが一般的。しかし、実はジョンソン・エンド・ジョンソンにはそういった専門部署はありません。

「D&Iは役職に関わらず社員一人ひとりが進めていくものだと考えています。企業戦略としてD&Iを推進する経営層、現場からボトムアップで働きかける社員、そしてそれに対して戦略の企画・実行や制度面などでサポートを行う人事。この三者の連携が非常にうまく機能して、ジョンソン・エンド・ジョンソンのD&Iがここまで進化してきました」

 

D&I推進を支える3つの社員グループ

 

前出のクインさんの言葉にもあったとおり、現場の社員からのボトムアップの動きは、ジョンソン・エンド・ジョンソンのD&I推進において、とても大きな影響力を持っています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンには、特定のテーマに関心のある有志社員で構成されるERG(Employee Resource Group)という社員グループがあり、それぞれのテーマに関して啓発活動やイベント運営などを行っています。

<ジョンソン・エンド・ジョンソンのERG>

・WLI (Women’s Leadership & Inclusion):女性活躍推進やジェンダー平等がテーマ。2005年発足
・O&O(Open&Out):LGBTに関しての意識醸成・啓発活動がテーマ。2015年発足
・ADA(Alliance for Diverse Abilities):障がいやメンタルヘルスがテーマ。2019年発足


 

「世界のジョンソン・エンド・ジョンソンでは12のERGがありますが、日本では上記の3つのERGが活動しています。3つともすべて社員からの働きかけで誕生しました。最も新しいADAは2019年9月に発足したのですが、発足から3か月ですでに約80人ものメンバーが登録しています。発足のタイミングで啓発イベントを実施したり、また2020年6月にはアンガーマネージメント(怒りの感情をコントロールすること)に関するオンラインセミナーを開催したりするなど、とても活発に活動しています」

 

女性活躍をテーマにした社員グループの3~4割が男性社員!

 

ジョンソン・エンド・ジョンソンのERGの特徴の一つに、アライ(Ally)と呼ばれるそのテーマの当事者以外の社員が多く活動していることが挙げられます。

「例えば、女性活躍推進をテーマにしたWLIには120~130人ほどのメンバーがいますが、その3~4割が男性社員で、マネージメント層の社員もいます。ジェンダーダイバーシティに対する課題意識を持ち、女性の活躍をサポートしたいと考えて、WLIの活動に参加するようになった人が多いようです。LGBTをテーマとしたO&O、障がいやメンタルヘルスをテーマとしたADAでも、当事者以外の社員が多く活動しています」とクインさん。

また、ERGの活動は自身の業務とのバランスを調整しつつ、一定の時間内で活動することなどが可能となっており、D&I推進をビジネスの重要課題と捉えているジョンソン・エンド・ジョンソンならではの仕組みです。

 

女性はこう振る舞うべき、という「無自覚の偏見」

 

ジョンソン・エンド・ジョンソンに入社する以前から、複数の会社で人事のキャリアを重ねてきたクインさん。前職でもD&I推進のリーダーとして活躍していました。

「当時の日本では、『ダイバーシティ』という言葉もあまり普及していない時代で、お台場のショッピングモール『ダイバーシティ東京プラザ』の担当だと思われた方もいたようです(笑)私自身は、日本生まれですが、カナダで教育を受け、ドイツでも就業経験を持ちました。北米、欧州、アジアという異なる場所で多様なバックグラウンドと価値観を持つ人に囲まれて生きてきたので、D&Iには強い関心を持っていました」


帰国後の日本で働くうえで大変だったことは、日本の価値観、習慣、行動様式に順応するまでのリバースカルチャーショックでした。

「海外生活が長かったため、外資系であっても日本にある企業で働くことは、想像以上のリバースカルチャーショックを受けました。見た目が日本人である私に対して、いわゆるステレオタイプ的な『日本人』としての振る舞いを期待される場面も多々ありました。会議では目上の人を優先するなどの発言の順番に対する暗黙の了解があったり、色々な関係部署や関係者に根回しをして、地固めをしてから総意として決めていく伝統的なやり方が行われていたりして、そのルールから逸脱すると、周囲からの風当たりが強くなった経験もありました。海外経験の長い、特に女性は、多少なりともこのような経験があるのではないでしょうか。そこには、『日本人女性はこう振舞うであろう』という『無自覚な偏見』も存在していたかと思います。

『無自覚な偏見』は誰もが持っているもので、それ自体が非難されることはありません。その偏見に気づき、意識的に多様な人に向き合うことで、尊重され受容されていると感じることができる心理的安全性が担保できる職場を創るため、ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、この『無自覚な偏見』をテーマにしたトレーニングを全社的に展開しています。

 

目指すのはもっとインクルーシブな文化

 

ジョンソン・エンド・ジョンソンがこれから目指す方向性について、クインさんは「今はインクルージョンに注力をおいています」と話します。

「ダイバーシティ自体を重んじることは、言うまでもなく大切です。でも、ただ単純に色々な考え方や多様性が存在しているだけではなく、他の人の立場に立って考える、自分とは異なる相手を受け入れる、といったインクルージョンの文化を育てていくことに注力していきたいと考えています」

2020年の国際女性デーのテーマ「#EachforEqual」にちなみ、「平等」を表す「イコール(=)」のポーズでチームメンバーと

 

クインさんからのメッセージ

 

クインさんはジョンソン・エンド・ジョンソンのことを「個人の考えが尊重される会社」と表現します。

「ジョンソン・エンド・ジョンソンでは『You Belong』をダイバーシティ&インクルージョンの定義としています。これは日本語には少し訳しづらいのですが、『あなたの居場所、自分らしくいられる居場所』といった意味を持っています。個人の考えが尊重され、心理的安全性を感じながら働ける会社です」

最後に、クインさんから読者に向けたメッセージを頂きました。

「優れた会社は世の中にたくさんありますし、ジョンソン・エンド・ジョンソンもその一つだと思っています。働く会社を探すうえで、会社の理念と自分の価値観がマッチしていることはとても重要です。実際に働いている人の声を聞いたり、会社ホームページなどから、会社の理念や企業文化、多様な働き方に対する考え方など、ぜひ色々とリサーチしてみてください」