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Update on :2020.10.28

「全社一丸となって平等のシェアードメモリを作る」

酒寄久美子さん
株式会社セールスフォース・ドットコム
人事プログラムシニアマネージャー

顧客関係管理(CRM)クラウドサービス世界最大手のセールスフォース・ドットコムは、本社のあるアメリカではFortune誌の「働きたい企業」に10年連続ランクイン。日本では2年連続「働きがい1位」を取得。その裏にはコアバリューとデータに基づいたイクオリティに懸ける情熱と「オハナ文化」が支えていた。

酒寄久美子さん
株式会社セールスフォース・ドットコム
人事プログラムシニアマネージャー


セールスフォースのカルチャーに惹かれて入社。同社のエンプロイサクセスという「社員の成功」をサポートする部門で会社の上位概念のイクオリティ(平等)を施策に落とし込む人事担当。
 

「会社の中にD&Iという部門ははない」

 
4つのコアバリュー(大切にしている価値観)を柱とする、セールスフォース・ドットコム。信頼、カスタマーサクセス、イノベーション、と平等。特に入社してイクオリティに魅せられた酒寄さん。

「セールスフォースではイクオリティに特別に力を入れている」という。「ダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)は、多様性を尊重しながらすべての方が平等な世界を目指すイクオリティ概念に基づき、取り組みが進められています。」
オフィス・オブ・イクオリティの部門(全社の平等を推進する部門にあたる)がグローバルに社内外のイクオリティの促進や発信をメインに活動している。

日本では女性や障がい者活躍の促進、またウェルビーイング(心身の健康)の向上を施策に組み込む中で、イクオリティの価値観を浸透することに注力していると酒寄さんは言う。だからこそ、ダイバーシティ専門の部門は特に設けてはいない。

また、あるゆる人が平等な社会を目指す一環として、セールスフォース・ドットコムは社会貢献に大きく力を入れていて、全社員が参加できる形をとっている。

その一環に1-1-1モデルの導入がある。会社全体の就業時間の1%、製品の1%と株式の1%をいろいろなボランティア活動や団体に寄付や貢献する。他社の多くではボランティアは就業時間外とされている中、セールスフォース・ドットコムの社員は就業時間内でのボランティア活動が可能で、オープンに活動してもらう。例えば、学校にITについて教えに行ったり、乳児院の掃除をしたりクリスマスプレゼントを贈ったり、就職相談をしたり、NPO団体と連携したイベントをしたり。計算すると社員1人につき、1年の就業時間のうち56時間を好きなボランティア活動に費やすことができることになる。
 

データは嘘をつかない

 
顧客データを扱う会社らしく、セールスフォース・ドットコムはデータを平等の促進に活用している。マーク・ベニオフ会長兼創設者の提案のもとで2016年から年に2回全世界の社員にアンケートをとって、社員の生の声を拾い、全社に公開している。

集計された社員アンケートのデータを分析したり、チームや国ごとの傾向を明らかにしていたりしている。その情報を基に、女性、障がい者、LGBTなどのマイノリティグループを50%に引き上げる目標を公表したりしている。社員アンケートのデータは、会社の施策を考える上に不可欠な情報である。「なぜならデータは嘘をつかない」と酒寄さんはいう。

ただ、データの記入時点でまだ工夫の必要を感じているというのは、データ管理会社ならでは。アメリカでは、セルフ・アイデンティフィケーション(自己認識)が主流になりつつあるので、既存の定義の多肢選択式の答えしかないアンケート調査を避け、自分が納得する表現でアイデンティティを認識し、表明してもらっているという。例えば、男性や女性にあてはまらないと自認する社員は、自分の言葉で自分のアイデンティティを表現することができる。

これからチャレンジすることとして、調査のなかで自身のアイデンティティを名乗らなければならないことに違和感や抵抗感を感じるLGBTQの人たちや障がい者もいるので、今後もっと自発的にセルフ・アイデンティフィケーションの意識を高めていけるようにしていきたいという。
 

「働きがいがある会社」2年連続1位

 
日本の働きやすい企業ランキングのトップと評価されているある会社の中でも、共働き夫婦でさえ子供の送り迎えで時短したり早退してたりする時に帰りにくい雰囲気があると話に聞いたという。

セールスフォースでは、働きやすい環境や社風を大事にしている。女性に限らず男性も保育園の送り迎えなどは気軽に社員同士で共有するオンラインカレンダーに記入して、他の社員はそれを尊重し、その時間帯に大事なミーティングを入れない慣習であるという。

「働きがいのあるグローバル企業 世界ランキング」に4年連続で選出されているセールスフォース・ドットコムの社風は日本でも徐々に認められている。国内では、Great Place to Work Institute Japanが実施する「日本における働きがいのある会社ランキング」で2年連続1位を獲得している。
 

家族を意味する、「オハナ・カルチャー」

 
セールスフォース・ドットコムの社風のもう一つの大きな特徴に「オハナ・カルチャー」があるという。これはハワイ語で「家族」という意味だが、セールスフォース・ドットコムではその中に「お客様」、「社員」、「パートナー」、「コミュニティ」も含まれている。
「社員は互いに尊重して、成長し合う家族です。お客様、パートナー、コミュニティなどすべての人たちと一緒に世の中を良くしていきたい」と酒寄さんがオハナ・カルチャーを説明してくれた。
 その「オハナ」が、例えば「家族のアルバムが増えるように」同じイベントを一緒に経験して思い出を共有することを、ひとつのイクオリティプログラムとして考えているという。

「ビジネスは世界を変えるためのプラットフォームであるという意識を社内で進める中で、賃金、教育、権利、機会の平等を大事にしています。」
 どの部署に配属されていても、会社に対する意識は変わらない、と酒寄さんは語る。だから、営業以外の社員でもコーポレート・プレゼンテーション(Salesforceのストーリーについて社外の方に語る)のサーティフィケーションは毎年実施し、セールスフォースの平等やコアバリューについて発信できる社員が多いと自負している。酒寄さんも、コアバリューについて詳細をさらに詳しく説明するために営業の打ち合わせに出席することもあるという。
 

人生の旅を大切に

 
最後に、酒寄さんよりメッセージをいただいた。

「私たちが大切にしているのは社員のジャーニー(旅)。当社は社員の人生と一緒に進んでいこうとしています。みんなが誇りを持って働き、セールスフォース・ドットコムで働くことで人生の中でどう成長して満足できたかということに注力しています。転職しても当社のファンでいてくれて、また戻ってくる人もいます。ワークライフバランスのうち、ライフもセールスフォース・ドットコムはサポートしています。自分の時間を充実させること考えて仕事を選び、キャリアを考えてみてほしいです。
人生の中で働く時間は長いです。だから、自分の人生をかけられると確証の持てる職場を探してください。あなたらしさを受け入れてくれる会社は必ずありますので、自分らしくいられる場所を選んでほしいですね」